第五十四話 扇動者
第五十四話です。
どうぞよろしくお願いします。
翌朝、俺たちが宿を出ると、村の広場に、ちょっとした人だかりが、できていた。
「聞いてくれ、皆!」
台の上に立った、見知らぬ男が、声を張り上げていた。
【解析中……】
【???】LV:30
「巡礼者たちは、俺たち住人の生活を、踏み台にして、勝手にレベルを上げてきた! 今こそ、本当の意味で、この世界の主導権を、取り戻すべきだ!」
その扇動的な言葉に、俺は、思わず、眉をひそめた。周囲の住人たちの中には、不安げな表情で、頷く者も、少なくなかった。
「あれは……」
ユイの呟きに、俺は、頷いた。
「創設理念の公開で、混乱してる住人たちの、不安を、煽ってる感じですね」
俺たちが近づくと、男は、こちらに気づき、口の端を、僅かに、歪めた。
「おや、噂の、巡礼者様たちのお出ましか」
「あなたは、誰ですか」
俺の問いに、男は、芝居がかった仕草で、一礼した。
「俺は、名乗るほどの者じゃない。ただ、この世界の、本当の在り方を、憂う者の一人だ」
「憂う、というより……煽ってるように、見えます」
俺の指摘に、男の表情が、僅かに、強張った。
「言葉を、選べ、小僧。俺は、住人たちの、正当な権利を、主張してるだけだ」
その時、集まった住人の一人が、思い切ったように、声を上げた。
「そうだ! 巡礼者たちは、いずれ、この世界を、去っていく者たちだ! 俺たちが、この世界に、ずっと、住み続けるんだ! 発言権が、あって、当然だろう!」
その声に、周囲から、賛同の声が、上がり始めた。俺は、この状況の、危うさを、強く、感じた。
「あなたの言い分、分からなくはないです。でも――」
俺は、集まった人々に、向けて、はっきりと、言った。
「巡礼者は、皆さんの生活を、踏み台にしてるわけじゃないです。俺たちも、この世界で、必死に、生きようとしてるだけです」
俺の言葉に、扇動していた男が、鼻で笑った。
「綺麗事を、並べるな。現に、お前らは、俺たち住人の作った経済圏、資源、全部、都合よく、利用してるじゃないか」
「利用、というより、お互いに、この世界を、支え合ってると、俺は、思ってます」
俺の反論に、男は、苛立ったように、舌打ちした。
「口で、言っても、分からんようだな。なら――力で、示すしかない」
男が、視線で、合図を送ると、周囲の路地から、複数の武装した人影が、姿を、現した。
【解析中……】
【???】LV:35(複数)
「あなたたちも、巡礼者、ですね」
俺の問いに、男は、静かに、頷いた。
「ああ。俺は、巡礼者だが、この村の、住人たちの不安に、寄り添うことを、選んだ。奴らを、扇動して、俺の勢力に、取り込むことにな」
その言葉の裏にある、打算に、俺は、強い、嫌悪感を、覚えた。
「住人の不安を、利用して、自分の力を、増やそうとしてるだけですよね」
「そう言われても、構わない。結果が、全てだからな」
男が、剣を、抜いた。
「ここで、俺たちを、退けられるかどうか。それが、この村の、今後を、左右することになるぞ」
俺は、ユイ、タクトと、視線を、交わした。
「戦うしか、なさそうですね」
俺の言葉に、二人が、頷いた。
「住人の皆さんは、下がっていてください!」
俺の呼びかけに、集まっていた住人たちが、慌てて、距離を、取った。
男たちが、一斉に、襲いかかってきた。
「風纏、身体強化、並列で!」
俺は、支援魔法を、瞬時に、展開した。
「対人戦の心得、使います」
俺は、相手の動きを、注意深く、観察した。統率の取れた、それなりに、訓練された動きだった。
「ユイさん、タクトさん、いつも通り!」
「はい!」
ユイが、一人の攻撃を、鋭く、受け流した。俺は、看破の瞳で、扇動者の男の動きを、追った。
【解析中……】
【扇動者】
LV:30
弱点:踏み込みの浅さ、実戦経験の不足
「意外と、実戦慣れ、してないみたいですね」
俺の呟きに、男が、忌々しげに、表情を、歪めた。
「口先だけの、雑魚が!」
俺は、風刃を、連続で、放った。男は、それを、なんとか、防いだが、明らかに、動きに、精彩を欠いていた。
「今です!」
俺は、隙を突き、嵐風の双牙で、相手の武器を、弾き飛ばした。だが――今回も、LPを奪う一撃は、放たなかった。
「これで、終わりです」
俺の言葉に、男は、悔しそうに、膝をついた。
周囲では、ユイとタクトが、それぞれ、部下たちを、着実に、無力化していった。
【扇動者集団を撃退しました】
【PvP戦闘における貢献経験値を獲得しました】経験値:+1,200
騒ぎが収まると、俺は、改めて、集まった住人たちに、向き直った。
「今、この人が、言ったことは、部分的には、正しいのかもしれません。俺たち巡礼者は、いずれ、この世界を、去る存在です。でも――」
俺は、はっきりと、続けた。
「だからこそ、俺たちは、この世界に、感謝してます。皆さんの、この村での暮らしがあるから、俺たちも、生きる力を、得られてるんです。それを、忘れずにいたいです」
俺の言葉に、住人たちの間に、静かな、しかし、確かな、頷きが、広がっていった。
倒れた扇動者の男が、震える声で、呟いた。
「俺は、ただ……この世界での、自分の立場を、少しでも、強くしたかっただけだ」
「その気持ち、分からなくは、ないです。でも、他人の不安を、煽って、自分の力にするのは、違うと、思います」
俺の言葉に、男は、何も、言い返せなかった。
騒動を聞きつけた、ガラムが、駆けつけてきた。
「一体、何が、あった」
俺は、事の経緯を、簡潔に、説明した。ガラムは、険しい表情で、頷いた。
「そういうことか……。この扇動者、正式に、拘束させてもらう」
男たちが、ギルドの警備に、連れて行かれるのを、俺たちは、静かに、見送った。
「こういうこと、これから、増えていくのかもしれませんね」
ユイの呟きに、俺は、頷いた。
「はい。真実を、知ることが、必ずしも、全員を、幸せにするとは、限らないみたいです」
俺は、改めて、集まっていた住人たちを、見渡した。彼らの表情には、まだ、確かな、戸惑いが、残っていた。
「でも――」
俺は、静かに、続けた。
「それでも、俺は、真実から、目を逸らすより、向き合っていく方を、選びたいと、思ってます」
俺の言葉に、住人たちの中から、一人、また一人と、小さな頷きが、返ってきた。
視界の端に、通知が浮かんだ。
【新スキルを習得しました】
「調停の心得・初級」
【調停の心得・初級】
対立する者同士の間で、
言葉による説得の効果が、僅かに上昇する
「これは……」
俺の呟きに、ミラが、静かに、補足した。
「あなたの、これまでの行動が、新しい形の力として、結実したようですね」
俺は、その、新しいスキルの名前を、静かに、噛み締めた。奪わない道を、貫き続けてきた俺に、また一つ、新しい選択肢が、加わっていた。
「今日は、色々、ありましたね」
タクトの言葉に、俺は、頷いた。
「はい。でも、まだ、この村の、本当の落ち着きどころは、見えてない気がします」
俺たちは、それぞれの想いを、抱えながら、宿への道を、歩き始めた。始まりの村は、これから、どんな形で、変わっていくのか――俺は、その行方を、確かに、見届けたいと、思っていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:42
HP:248/248 MP:172/172
STR:160 VIT:132
AGI:145 INT:98
延命ポイント(LP):30.2日分
所持金:銀貨94枚
名声:990(+40)
満腹度:42/100
次のレベルまで:1,800/33,000
【冒険者ランク】
B
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
・調停の心得・初級(NEW)
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
村を揺るがす扇動者との対決、そして新しい力。
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