第五十三話 変わった村
第4章、第一話です。
どうぞよろしくお願いします。
始まりの村の門をくぐった瞬間、俺は、微かな違和感を、覚えた。
「なんだか……前と、雰囲気が、違いますね」
ユイの呟きに、俺も、頷いた。以前は、のどかで、素朴な空気に満ちていた村が、今は、どこか、落ち着かない、ざわめきを、纏っていた。
広場に近づくと、村人たちが、数人、集まって、何かを、話し合っているのが、目に入った。
「聞いたか、あの発表。俺たちが、巡礼者様って呼んでた人たちの、本当の事情」
「まさか、あの人たちが、現実で、そんな重い病を、抱えてただなんてな……」
その会話に、俺は、思わず、足を止めた。
「まさか……」
俺の呟きに、セリアが、険しい表情で、頷いた。
「創設理念の公開に伴って、恐らく――LPの仕組みそのものについても、この世界の、住人たちに、開示されたのかもしれません」
その可能性に、俺は、背筋が、冷たくなるのを、感じた。これまで、巡礼者だけが知っていた、この世界の裏側。それが今、住人たちにも、知られてしまった。
「井戸のところに、行ってみましょう」
俺の提案に、皆が、頷いた。俺たちは、かつて、俺が初めてこの村を訪れた時に、腰掛けた、あの井戸へと、向かった。
そこには、以前、俺たちの冒険者登録を、担当してくれた、あの受付の女性が、立っていた。
「あ、あなたたち……!」
彼女は、俺たちの顔を見るなり、驚いたように、目を見開いた。
「お久しぶりです」
俺の挨拶に、彼女は、少し、複雑な表情を見せた。
「本当に、久しぶりですね。皆さんの噂は、この村にも、届いていました。カレナで、帝都で、そして、海の向こうでの、活躍」
「ありがとうございます。それより――」
俺は、少し、言葉を、選びながら、切り出した。
「村の様子、少し、変わった気がして」
その言葉に、彼女は、静かに、頷いた。
「はい。先日、大きな発表が、ありましたよね。あれ以来、私たち、住人にも――巡礼者様たちの、本当の事情が、知らされるように、なったんです」
「それで、村の人たちは、どう、受け止めてるんですか」
俺の問いに、彼女は、少し、考え込むような、表情を見せた。
「正直、様々です。同情する人もいれば……戸惑う人も、います。私たちは、これまで、巡礼者様のことを、"いずれこの世界を去る、特別な旅の途中の者"としか、認識していませんでした。でも、今は――皆さんが、それぞれ、限られた、現実の時間の中で、生きているという事実を、はっきりと、知ってしまったんです」
その言葉に、俺は、複雑な感情を、抱いた。以前、この村を訪れた時、ミラから聞いた「巡礼者と住人は、根本的に異なる存在」という言葉。その線引きが今、大きく、揺らぎ始めていた。
「ギルドの様子は、どうですか」
俺の問いに、彼女は、少し、表情を、曇らせた。
「実は……最近、少し、困った動きが、出てきています。良ければ、ガラム様に、お話を、伺ってみてください」
俺たちは、その足で、ギルドへと、向かった。中に入ると、以前と変わらぬ、がっしりとした体格の、ガラムが、俺たちの姿を見て、目を、丸くした。
「おお、これは……! まさか、本当に、戻ってくるとはな!」
ガラムの豪快な声に、俺は、懐かしさを、覚えた。
「お久しぶりです、ガラムさん」
「随分、貫禄が、ついたじゃないか。噂は、聞いてるぞ。帝都での一件、それに、海の向こうでの、大立ち回りも」
俺たちは、応接スペースに、案内された。
「実は、少し、厄介な話があってな」
ガラムは、腕を組みながら、続けた。
「あの、創設理念の公開以来、この村でも、LPの仕組みを、悪用しようとする輩が、出てきておる」
「悪用、というと」
俺の問いに、ガラムは、険しい表情で、答えた。
「一部の、質の悪い住人が、巡礼者――特に、余命の少ない者を、狙って、脅しをかけるような、事案が、報告されておる。"どうせ、長くないんだから"などと、心無いことを、言う者もいるらしい」
その説明に、俺は、強い、怒りを、感じた。
「そんな……」
ユイが、思わず、声を上げた。
「今まで、隠されていたことが、明らかになれば、いいことばかりじゃない、ってことなんですね」
タクトの言葉に、俺は、頷いた。
「はい。真実を、知ることは、大切だと、俺は、思ってます。でも、それが、こんな形で、悪用されるのは……」
「何か、俺たちに、できることは、ありますか」
俺の問いに、ガラムは、少し、考えたあと、答えた。
「まずは、実態を、確認したい。最近、村の外れで、そういった、被害の噂が、集中しているエリアがある。見てきてもらえるか」
「分かりました。行きます」
俺たちは、ガラムに礼を言い、村の外れへと、向かった。
「観察眼……看破の瞳」
俺は、周囲に、意識を、巡らせた。
【解析中……】
【???】LV:25(複数)
「あそこ、何か、揉めてるみたいですね」
俺の指差した先、小さな集落の一角で、数人の男たちが、若い巡礼者らしき人物を、取り囲んでいた。
「なあ、どうせ、あんた、あと、そんなに、長くないんだろ。だったら、その装備、俺たちに、譲ってくれてもいいじゃねえか」
男の一人が、下卑た笑いを、浮かべながら、そう言った。
「そ、それは……」
囲まれている、若い青年が、震える声で、答えた。
「やめてください」
俺は、思わず、声を上げていた。男たちが、一斉に、こちらを、振り返る。
「なんだ、お前ら」
「その言い方、あんまりです。あなたたちの中にも、いつか、この世界の外で、大切な時間を、過ごしてる人が、いるはずです」
俺の言葉に、男の一人が、鼻で笑った。
「関係ねえだろ。俺たちは、住人だ。あんたらとは、違う」
「違わないです」
俺は、はっきりと、言い切った。
「あなたたちも、この世界で、確かに、生きてる。それは、俺たち巡礼者と、何も、変わらないと、思います」
俺の言葉に、男たちは、一瞬、たじろいだ様子を見せた。
「うるせえ! お前らには、関係ねえことだ!」
男の一人が、剣を抜いた。
「戦うしか、ないみたいですね」
俺は、風纏と身体強化を、並列詠唱で、発動させた。だが、相手は、これまでのモンスターや、悪意ある巡礼者たちとは、違う――この世界の、住人だった。
「ユイさん、タクトさん、殺傷は、避けましょう。無力化だけに、留めます」
「はい……!」
俺たちは、あくまで、相手を、傷つけない形で、対処することを、心がけた。剣の柄で、あるいは、拳で、確実に、相手の動きを、封じていく。
「くそ……!」
男たちが、次々と、地面に、崩れ落ちていった。
【住人との衝突を鎮圧しました】
※本イベントは、討伐経験値の対象外です
「終わった、みたいですね」
俺の言葉に、囲まれていた青年が、震えながら、駆け寄ってきた。
「あ、ありがとう、ございます……!」
「大丈夫ですか」
「はい、なんとか……」
俺は、地面に、うずくまる男たちを、見下ろした。
「あなたたちの気持ち、少しは、分かります。今まで、知らなかった真実を、突きつけられて、戸惑ってるんだと、思います。でも――」
俺は、静かに、続けた。
「それを、誰かを、傷つける理由には、しないでください」
男たちは、何も、言い返せなかった。
俺たちは、その足で、ガラムのもとへと、戻り、事の顛末を、報告した。
「そうか……。想像していた以上に、事態は、根深いようだな」
ガラムは、重い表情で、頷いた。
「これから、この村でも、住人と巡礼者の関係を、改めて、見つめ直す必要が、あるのかもしれません」
俺の言葉に、ガラムは、静かに、頷いた。
「その通りだ。だが――お前さんたちのような存在が、この村にいてくれることが、何よりの、希望になる」
宿への帰り道、俺は、改めて、この村の変化を、噛み締めていた。かつて、俺が、初めてこの世界に足を踏み入れた場所。その原点にすら、確かに、大きな変化が、訪れていた。
「境界線が、なくなっていく……」
俺の呟きに、ユイが、少し、首を傾げた。
「境界線、ですか」
「はい。住人と、巡礼者。ゲームと、現実。これまで、はっきりと、分けられていたものが、少しずつ、曖昧になっていってる気がします」
俺の言葉に、皆が、静かに、頷いた。
「これから、この村で、どんなことが、起きていくのか。しっかり、見届けたいと思います」
俺の決意に、皆が、それぞれ、力強く、頷いた。始まりの場所は、確かに、変わりつつあった。だが、俺たちの旅は、この変化とともに、また、新しい一歩を、踏み出そうとしていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:42
HP:248/248 MP:172/172
STR:160 VIT:132
AGI:145 INT:98
延命ポイント(LP):30.2日分
所持金:銀貨94枚
名声:950
満腹度:50/100
次のレベルまで:600/33,000
【冒険者ランク】
B
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
第4章、開幕です。
創設理念の公開が、村にもたらした、光と影。
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