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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

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第四十九話 運営者

第四十九話です。

どうぞよろしくお願いします。


街に戻った俺たちは、その足で、ナディアのもとを訪れ、「始まりの記憶」で見た内容を、報告した。


「Elysium創設の、本当の理念……」


ナディアは、資料を読みながら、険しい表情を、崩さなかった。


「これは、私の一存では、扱いきれない情報だ。帝都の、セリア殿にも、すぐに、共有すべきだろう」


俺たちは、その日のうちに、通信の魔道具を使い、帝都のセリアに、連絡を取った。


「その情報……」


セリアの声には、はっきりとした、緊張が滲んでいた。


「実は、こちらでも、動きがありました。現実世界の、Elysium運営元から、極めて異例の、接触があったんです」


「接触、というのは」


俺の問いに、セリアは、慎重に、言葉を選びながら、続けた。


「運営元の、上級管理者を名乗る人物から、ギルド本部に、直接、通信がありました。あなた方が、"始まりの記憶"に、アクセスしたことを、既に、把握しているようです」


その言葉に、俺は、背筋が、冷たくなるのを、感じた。


「なぜ、それを……」


「詳しいことは、分かりません。ですが――その人物は、創設理念の記録が、外部に、広まることを、強く、懸念しているようでした」


セリアは、一度、言葉を区切った。


「現実世界では今、Elysiumプロジェクトの存続そのものが、審議されている最中です。もし、初期段階で、意識障害のリスクや、精神摩耗の問題を、把握していながら、それを、公にせず、ゲーム性の追加で、誤魔化してきたという事実が、明るみに出れば――」


「訴訟問題、あるいは、事業停止に、繋がりかねない、ということですか」


俺の言葉に、セリアは、静かに、頷いた。


「その通りです。だからこそ、あの記憶保護システムは、単なる、ゲーム内のギミックではなく――現実の、利害関係を背景にした、極めて、意図的な、防衛機構だったのかもしれません」


その説明に、俺は、深く、考え込んだ。ファンタジーの世界の中で起きていたことの裏に、現実の、生々しい思惑が、確かに、存在していた。


「これから、どうなるんですか」


俺の問いに、セリアは、少し、間を置いてから、答えた。


「正直、私にも、読み切れません。ただ――一つ、警告しておきます。運営側が、本気で、この情報の拡散を、阻止しようとするなら、次に、何らかの、実力行使に、出てくる可能性があります」


その言葉通り、翌日、俺たちは、その予兆を、目の当たりにすることになった。


ラシャールのギルドを訪れると、掲示板に、これまで見たことのない、緊急指名依頼が、貼り出されていた。


【緊急依頼:異端者の確保】

 対象:巡礼者・リョウ、及びその関係者

 依頼者:運営直属機関


「これって……」


俺は、思わず、その依頼書を、まじまじと見つめた。俺自身が、指名手配のような形で、討伐対象に、されていた。


「そんな……」


ユイが、青ざめた表情で、俺を見た。


「これ、受けるプレイヤー、いるんでしょうか」


タクトの問いに、俺は、看破の瞳を、街の様子に、向けた。


【解析中……】

【???】LV:60(複数)

反応:複数、この街周辺に、集中


「かなりの数、集まってきてます」


俺の言葉に、サーラが、震える声で、呟いた。


「運営が、直接、賞金首みたいな扱いにしたなら……冒険者として、断りきれない人も、出てくるはずよ」


その予感は、すぐに、現実のものとなった。街の外れ、俺たちが移動していた通りに、複数のプレイヤーが、行く手を、塞いだ。


「悪いな、あんたら。依頼料、破格だったもんでな」


先頭に立つ、屈強な男が、そう言いながら、武器を構えた。


「話し合いの、余地は……」


俺の問いに、男は、首を振った。


「金は、金だ。恨みはないが、これも、仕事だからな」


戦いは、避けられなかった。俺は、風纏、身体強化、並列詠唱を、一気に発動させる。


「ユイさん、タクトさん、いつも通り!」


「はい……!」


「サーラさんは、下がっていてください!」


俺たちは、周囲を囲む、複数のプレイヤーと、対峙した。


【解析中……】

【賞金稼ぎ・A】LV:58

【賞金稼ぎ・B】LV:62

【賞金稼ぎ・C】LV:55


これまでのモンスターとは、また違う、読み合いの緊張感があった。


「対人戦の心得、使います」


俺は、育ったスキルで、相手の動きの癖を、注意深く、探った。


一人が、俺に向かって、剣を、振り下ろしてきた。俺は、回避の心得・上級で、それを、かわす。


「風刃!」


俺は、隙を突き、攻撃魔法を、放った。相手は、それを、なんとか、防いだが、僅かに、体勢を崩す。


「今です!」


俺は、その隙に、嵐風の双牙で、確実に、相手の武器を、弾き飛ばした。だが――今回は、LPを奪う一撃は、放たなかった。あくまで、無力化に、留める。


「なんで、とどめを、刺さねえ……」


倒れた男が、掠れた声で、そう尋ねた。


「あなたたちは、恨みで、動いてるわけじゃない。依頼として、仕方なく、やってるだけです。だったら、俺も、必要以上のことは、しません」


俺の言葉に、男は、驚いたように、目を見開いた。


ユイとタクトも、それぞれ、他の賞金稼ぎたちを、着実に、無力化していった。


【賞金稼ぎ集団を撃退しました】

【討伐に準ずる貢献経験値を獲得しました】経験値:+2,900


戦いが終わると、俺たちは、詰めていた息を、大きく吐いた。


「これから、こういうことが、続くんでしょうか」


ユイの不安げな問いに、俺は、静かに、答えた。


「多分。でも――」


俺は、拳を、静かに、握りしめた。


「俺たちがやったことは、間違ってないと思ってます。この世界の、本当の姿を、知ること。それを、諦めるつもりは、ないです」


その言葉に、サーラが、力強く、頷いた。


「私も、あなたたちと、一緒に、戦うわ」


俺は、改めて、自分のステータスを、確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):29.9日分

────────────────────


数字は、ほとんど、変わっていなかった。だが、この戦いの意味は、単純なLPの増減を、遥かに超えたものになっていた。現実という名の戦場――その言葉の意味を、俺は今、確かに、実感し始めていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:37

HP:215/215 MP:150/150

STR:140 VIT:115

AGI:128 INT:85


延命ポイント(LP):29.9日分

所持金:銀貨94枚

名声:871(+30)

満腹度:30/100(要注意)


次のレベルまで:6,100/26,000


【冒険者ランク】

B


【装備】

胴:砂塵避けの軽装ローブ

武器:嵐風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪

携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手(タクト)


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の瞳

・植物知識・中級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・上級

・回避の心得・上級

・風纏・中級

・身体強化・中級

・文献解読・初級

・並列詠唱・上級

・対人戦の心得・初級

・灼熱耐性・初級

・風刃・初級


【称号】

・一線を越えた者

・世界の歪みを正した者

・簒奪者

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

現実世界の思惑が、ついに、ゲーム内にまで及び始めました。

「現実という名の戦場」——その意味が、明らかに。

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