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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

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第四十八話 始まりの記憶

第四十八話です。

どうぞよろしくお願いします。


視界の白い光が、少しずつ、収まっていく。俺は、気づくと、見知らぬ、白い空間に、立っていた。


「ここは……」


隣を見ると、ユイ、タクト、サーラも、同じように、戸惑った様子で、周囲を見渡していた。


「全員、来られたみたいですね」


俺の言葉に、皆が、頷いた。


目の前に、映像のようなものが、浮かび上がり始めた。それは、俺たちの知らない、遥か昔の記録だった。


『――Elysium計画は、当初、末期患者の意識を、永続的に保存する、単なる延命装置として、開発が始まった』


聞き覚えのない声が、静かに、響いた。映像には、白衣を着た、複数の研究者たちの姿が、映し出されている。


『だが、計画の途中で、私たちは、一つの、致命的な問題に、直面した。意識だけを移した患者たちが、目的を失い、精神の摩耗――いわゆる、"心の死"に、次々と陥っていったのだ』


映像が、切り替わる。かつての、初期のElysiumの姿――今とは、まるで違う、単調で、殺風景な世界が、映し出された。


『目的のない永遠は、人を、緩やかに、蝕む。だから、私たちは、"ゲーム"という形式を、この世界に、組み込むことにした。成長という、分かりやすい目的。そして――生命エネルギーの、有限性という、緊張感』


俺は、その言葉に、思わず、息を呑んだ。


『LPというシステムは、当初、単なる、モチベーション維持の装置だった。だが――皮肉なことに、それは、いつしか、この世界そのものを、支える、根幹の仕組みへと、変質していった』


映像の中の研究者たちが、次第に、議論を、白熱させていく様子が、映し出された。


『総量制にすべきか。個々人に、無限の資源を与えるべきか。私たちは、悩んだ末に――あえて、有限の資源を、共有させる形式を、選んだ。それは――』


映像が、一瞬、静止した。


『それは、限りある命の重さを、忘れさせないための、私たちなりの、祈りだった』


その言葉に、俺は、深く、考え込んだ。奪うか、削られるか――そのシビアなルールの裏に、こんな理念が、あったとは、想像もしていなかった。


映像は、さらに、続いた。


『だが、この仕組みは、私たちの想定を、遥かに超えて、悪用されるようになった。ライアスのような、個人的な救済のための歪みもあれば、赤牙のような、組織的な搾取も、生まれた』


『私たちは、今、この記録を、未来の巡礼者たちに、託す。この世界の、本当の目的――誰かを、生かすことだけでなく、生きることの意味そのものを、問い続けること。それを、忘れないでほしい』


映像が、静かに、消えていった。俺たちは、しばらく、言葉を失っていた。


「これが……この世界の、始まりの記憶……」


サーラが、震える声で、呟いた。


「奪わない道を、俺は、選んできました。でも――この記録を見て、改めて、分かった気がします。奪うことも、奪わないことも、結局は、限りある命と、どう向き合うかっていう、同じ問いへの、答え方の違いなんだって」


俺の言葉に、ユイとタクトが、静かに、頷いた。


その時、空間全体が、大きく、揺れ始めた。


「な、なんですか……!」


タクトの声に、俺は、看破の瞳を、発動させた。


【解析中……】

【記憶保護システム】

LV:70

状態:外部干渉を検知、排除行動を開始


「まずい、誰かが、この記録を、消そうとしてます!」


俺の警告と同時に、空間の一角に、巨大な、光の獣が、姿を現した。


「戦うしか、ないみたいです!」


俺は、風纏、身体強化、並列詠唱で、支援を、一気に発動させた。


「ユイさん、タクトさん、いつも通り!」


「はい……!」


光の獣が、鋭い咆哮とともに、突進してきた。俺は、回避の心得・上級で、それを、かわす。


「風刃!」


俺は、攻撃魔法を、連続で、放った。だが、獣の表面で、それらは、ことごとく、弾かれてしまう。


「防御力、かなり、高いです!」


俺の報告に、ユイが、剣を構えながら、応じた。


「弱点、探ってください!」


「看破の瞳!」


【解析中……】

【記憶保護システム】

弱点:中心核、光の収束点


「中心の、一番、強く光ってる場所です!」


俺の言葉に、タクトが、盾を構えながら、前に出た。


「俺が、隙を作ります!」


タクトの盾撃が、獣の動きを、僅かに、封じる。その隙に、ユイが、鋭く、踏み込んだ。


「ここです!」


ユイの一撃が、獣の表面を、大きく、抉った。


「今しかない!」


俺は、風纏で、全速力を発揮し、獣の懐へと、飛び込んだ。


「嵐風の双牙!」


短剣が、中心核へと、深く、突き刺さる。獣が、甲高い音とともに、震え始めた。


「まだです、もう一撃!」


俺は、渾身の力で、追撃を加えた。


【記憶保護システムを撃破しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+15,000


視界に浮かんだ、その数字に、俺は、しばらく、動けなかった。これまでで、最も強力な相手――その事実に、見合った、確かな数字だった。


【レベルアップ!】

LV:34 → LV:37


獣の姿が、静かに、光の粒子となって、消えていった。同時に、周囲の空間も、僅かに、揺らぎ始める。


「戻される、みたいです!」


俺の言葉に、皆が、頷いた。視界が、再び、白く、染まっていく。


――目を開けると、そこは、あの、扉の先の部屋だった。中央の水晶が、静かに、光を、失っていく。


「私たち、戻ってきたのね」


サーラが、深く、息を吐いた。


「今の記憶、この大陸の、ギルドにも、報告すべきだと思います」


俺の提案に、サーラが、頷いた。


「ええ。でも――正直、まだ、頭の中が、整理しきれてないわ」


俺も、同じ気持ちだった。この世界の、本当の始まり。奪うことと、奪わないこと。その、根本的な問いに、俺は、改めて、向き合う必要が、あるのかもしれない。


「今日は、一度、街に、戻りましょう」


俺の言葉に、皆が、頷いた。俺は、改めて、自分のステータスを、確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):29.9日分

────────────────────


三十日という数字に、限りなく、近づいていた。だが、俺の中にあるのは、単純な安堵ではなく、この世界の、大きな真実と向き合った後の、確かな重みだった。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:37(LV34 → LV37)

HP:215/215(+15) MP:150/150(+12)

STR:140(+8) VIT:115(+7)

AGI:128(+8) INT:85(+7)


延命ポイント(LP):29.9日分

所持金:銀貨94枚

名声:841

満腹度:40/100


次のレベルまで:3,200/26,000


【冒険者ランク】

B


【装備】

胴:砂塵避けの軽装ローブ

武器:嵐風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪

携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手(タクト)


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の瞳

・植物知識・中級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・上級

・回避の心得・上級

・風纏・中級

・身体強化・中級

・文献解読・初級

・並列詠唱・上級

・対人戦の心得・初級

・灼熱耐性・初級

・風刃・初級


【称号】

・一線を越えた者

・世界の歪みを正した者

・簒奪者

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

「始まりの記憶」——この世界の、本当の目的。

そして、それを守る、強大な存在との激戦。

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