第四十六話 扉への道
第四十六話です。
どうぞよろしくお願いします。
遺跡を出ると、俺の腹が、盛大な音を立てた。
「あ……」
「随分、我慢してましたね」
ユイが、苦笑した。満腹度の数値を確認すると、既に、かなりの危険域に、差し掛かっていた。
俺たちは、街へと戻り、市場近くの食堂で、遅い夕食を取ることにした。この土地特有の、香辛料の効いた煮込み料理が、疲れた身体に、染み渡っていく。
【満腹度が回復しました】
現在:82/100
「生き返ります」
タクトが、深く息を吐いた。サーラも、屈託なく、料理を頬張っている。
「この街の料理、美味しいでしょう。故郷の味なの」
サーラの言葉に、俺は、頷いた。
「ラシャール、生まれなんですか」
「ええ。両親も、この街の、古参の考古学者だったわ。私が、この道を選んだのも、自然な流れだったの」
食事を終える頃には、日は、すっかり暮れていた。
「明日、早速、地図の場所に、向かいましょうか」
俺の提案に、サーラが、頷いた。
「そうね。準備、しっかりしていきましょう」
翌朝、俺たちは、番人から得た地図を頼りに、街の外れ、これまで訪れたことのない、深い峡谷地帯へと向かった。
「ここ、地図で示されてる、場所の近くのはずだけど……」
サーラが、地図と、周囲の地形を、見比べながら、呟いた。
峡谷の奥、切り立った岩壁の一角に、俺は、看破の瞳を、向けた。
【解析中……】
【隠された入口】
反応:微弱に検出
「あそこ、何か、あります」
俺の指差した先、一見、ただの岩壁にしか見えない場所に、微かな、違和感があった。近づいて、手を触れると、岩肌の一部が、音もなく、内側へと、開いていった。
「隠し通路……!」
サーラが、興奮した様子で、覗き込んだ。
「気をつけて、進みましょう」
俺たちは、慎重に、暗い通路へと、足を踏み入れた。
通路の先、開けた空間に、俺たちは、辿り着いた。そこには、これまで見た、どの遺構よりも、洗練された造りの、巨大な扉が、佇んでいた。
「これが、扉……」
サーラが、声を震わせながら、扉の表面を、そっと、撫でた。
俺は、文献解読のスキルを、発動させた。
【解析中……】
【扉に刻まれた文字】
解読可能
「なんて、書いてあるんですか」
ユイの問いに、俺は、慎重に、読み解いていった。
「『この扉は、楽園の理を持つ者、あるいは、その理を打ち破りし者にのみ、開かれる』……」
その一文に、俺たちは、しばらく、言葉を失った。
「楽園の理……もしかして、Elysium、そのもののこと?」
サーラの呟きに、俺は、頷いた。
「多分。俺たちみたいな、巡礼者のことを、指してるのかもしれません」
俺は、試しに、扉に、手を触れてみた。
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視界が、一瞬、白く、発光した。
「な……!」
俺は、思わず、目を細めた。次の瞬間、視界に、これまで見たことのない、システムメッセージが、浮かび上がった。
【巡礼者権限を確認しました】
【扉の起動条件、一部を満たしています】
(不足要素:楽園中枢との接続履歴)
「不足要素……?」
俺の呟きに、光は、静かに、収まっていった。扉は、僅かに、振動したものの、完全には、開かなかった。
「今のは……」
サーラが、興奮と、困惑の入り混じった表情で、俺を見た。
「俺たち、巡礼者だから、少しは、反応したみたいです。でも――『楽園中枢との接続履歴』が、足りないって」
「楽園中枢……。それって、まさか」
ユイが、はっとしたように、俺を見た。
「フィリアさんの、あの、供給システムの、中枢のこと、でしょうか」
その可能性に、俺は、思わず、息を呑んだ。もし、そうだとしたら――俺は、既に、あの管理区画で、その「接続」を、経験しているはずだった。
「ミラ、これって……」
俺は、思わず、ミラを、呼び出した。
「はい」
「この扉、楽園中枢との接続履歴が、必要みたいなんですけど……俺、あの、管理区画に行ったこと、条件に、含まれますか」
ミラは、少し、間を置いてから、答えた。
「申し訳ございません。この扉に関する、詳細な情報は、私のデータベースには、存在しません。ですが――」
ミラの声が、少し、慎重なものに、変わった。
「あなたが、管理区画で経験した出来事が、何らかの形で、影響を及ぼしている可能性は、否定できません」
その言葉に、俺は、改めて、扉に、手を触れてみた。
【巡礼者権限を確認しました】
【扉の起動条件、一部を満たしています】
(不足要素:楽園中枢との接続履歴)
同じ、メッセージが、繰り返された。
「今は、まだ、開けないみたいです」
俺の言葉に、サーラが、少し、残念そうな表情を見せた。だが、すぐに、気を取り直したように、頷いた。
「それでも、大きな、前進だわ。この扉の存在自体、確認できたんだから」
「はい。もう少し、条件を、探ってみましょう」
俺たちは、扉の周辺を、丁寧に、調査した。周囲の壁面にも、いくつかの、追加の記述が、見つかった。
「『扉の先には、始まりの記憶が、眠る』……か」
俺の呟きに、タクトが、首を傾げた。
「始まりの記憶、って、なんでしょうね」
「分かりません。でも、この世界そのものの、成り立ちに、関わることかもしれません」
俺たちは、見つけた情報を、丁寧に、記録に残した。
「今日のところは、これくらいにしておきましょう。条件については、また、時間をかけて、探っていけばいいと思います」
俺の提案に、サーラが、頷いた。
「ええ。焦っても、仕方ないものね」
峡谷を出ると、日は、既に、傾き始めていた。俺たちは、街への帰路を、歩き始めた。
「今日も、色々、分かりましたね」
ユイの言葉に、俺は、頷いた。
「はい。少しずつですけど、この世界の、根っこの部分に、近づいてる気がします」
俺は、改めて、自分のステータスを、確認した。
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延命ポイント(LP):29.6日分
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数字は、緩やかに、増加していた。三十日という、当初の数字に、また、近づきつつある。だが、その道のりの中で、俺が見てきたものは、単純な時間の問題を、遥かに超えた、大きな謎の連続だった。
「明日は、また、通常の依頼を、こなしましょうか。稼ぎも、必要ですし」
俺の提案に、皆が、頷いた。異国ヴァルシアでの日々は、これからも、確かに、続いていく。俺たちは、それぞれの思いを抱えながら、ラシャールの街並みへと、足を進めた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:31
HP:178/178 MP:120/120
STR:120 VIT:96
AGI:108 INT:68
延命ポイント(LP):29.6日分
所持金:銀貨94枚
名声:841
満腹度:72/100
次のレベルまで:2,570/16,500
【冒険者ランク】
B
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:嵐風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
「楽園の扉」発見、そして、まだ見ぬ「始まりの記憶」。
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