第四十四話 遺跡の続き
第四十四話です。
どうぞよろしくお願いします。
灼熱の支配者を討伐した翌日、ナディアから、追加の報告が届いた。
「訂正だ。昨日の討伐報酬、計算に、誤りがあった」
ナディアが、資料を、机に広げた。
「あの個体、我々の記録には、一切、存在しない、未確認種だった。しかも、初撃破という実績は、通常の討伐とは、比較にならない、特別報酬の対象になる」
【追加討伐経験値を獲得しました】
経験値:+37,200
(未確認種・初撃破ボーナス)
視界に浮かんだ数字に、俺は、思わず、目を見張った。
【レベルアップ!】
LV:28 → LV:31
(次のレベルまで:320/16,500)
「そんなに、増えるものなんですね……」
ユイも、驚いたように、自分のステータスを確認していた。
「未確認種の初撃破は、この世界における、貴重な、生きた記録になる。それだけの価値が、ある行為なんだ」
ナディアの説明に、俺は、改めて、あの戦いの重みを、噛み締めた。
報告を終えると、俺たちは、改めて、あの遺跡で見つけた、石碑の記述について、話し合うことにした。
「『楽園を求めし旅人たちの記憶』か……。気になる文言だな」
ナディアも、腕を組みながら、考え込んだ。
「この街に、古代文字の専門家がいる。紹介しよう」
案内された先は、ラシャールの一角にある、小さな研究室だった。中には、様々な発掘品が、所狭しと並んでいる。
「お客さん? 珍しいわね」
出迎えてくれたのは、褐色の肌に、活発そうな瞳を持つ、俺たちと、そう変わらない年頃の女性だった。
「私は、サーラ。この街で、古代遺跡の研究をしてるわ」
俺は、遺跡で見た、石碑の記述について、話した。サーラの表情が、みるみる、真剣なものに変わっていく。
「『楽園を求めし旅人』……その表現、聞いたことがあるわ。この大陸の、古い伝承に、似たような話が、残ってる」
「伝承、ですか」
「ええ。大昔、"別の世界"から来た旅人たちが、この地に、痕跡を残していったっていう、言い伝え。学会では、ただの、御伽噺扱いだけど……」
サーラは、俺たちを、まじまじと見つめた。
「あなたたち、もしかして、巡礼者、よね」
その問いに、俺は、少し、驚いた。
「分かるんですか」
「この街にも、時々、いるもの。独特の、雰囲気があるのよ」
サーラは、少し、声を潜めた。
「実は、私、その伝承と、巡礼者の存在に、何か、繋がりがあるんじゃないかって、ずっと、調べてたの。でも、一人じゃ、遺跡の奥まで、踏み込めなくて」
「俺たちが、力になれるかもしれません」
俺の申し出に、サーラの目が、輝いた。
「本当? だったら――一緒に、来てくれないかしら。あの遺跡の、まだ調査してない、奥の区画に」
俺は、ユイとタクトと、顔を見合わせた。二人とも、興味深そうな表情を見せている。
「はい、行きましょう」
翌日、俺たちは、サーラを加えた四人で、再び、あの砂漠の遺跡へと向かった。
「装備、随分、しっかりしてるのね。頼もしいわ」
サーラは、身軽な動きで、遺跡の奥へと、俺たちを、案内した。
「ここから先が、まだ、未調査の区画よ」
崩れかけた通路を進むと、俺は、看破の瞳を、周囲に、巡らせた。
【解析中……】
【周辺環境】
生体反応:複数(未確認、強い警戒反応)
「何か、いますね」
俺の言葉に、サーラの表情が、緊張した。
「気をつけて。この先、私も、初めてなの」
通路の奥、開けた空間に、俺たちは、足を踏み入れた。そこには、複数の、石で出来た人型の像が、等間隔に、並んでいた。
「これ……ゴーレムかしら」
サーラの呟きと同時に、像の目に、赤い光が、灯った。
「動きます!」
俺の警告と同時に、石像たちが、一斉に、こちらへと、向き直った。
【解析中……】
【古代の守護者】
LV:35(複数)
「サーラさん、下がっていてください!」
俺は、叫びながら、疾風の双牙を、構えた。ユイとタクトも、瞬時に、臨戦態勢に入る。
「守護者……。遺跡を、守ってるのね」
サーラが、興奮と緊張の入り混じった声で、呟いた。
石像の一体が、巨大な拳を、振り下ろしてきた。俺は、育った回避の心得・上級で、紙一重で、それをかわす。
「弱点、探ります」
【解析中……】
【古代の守護者】
弱点:胸部の紋章、魔力の核
「胸の、紋章です!」
俺の報告に、ユイが、素早く反応した。
「私が、引きつけます!」
ユイの剣が、一体の守護者の側面へと、鋭く斬り込んだ。
「タクトさん、後方から!」
「はい……!」
タクトの盾撃が、別の守護者の動きを、確実に、封じていく。
俺は、風纏で、素早く、一体の懐へと踏み込んだ。
「今です……!」
疾風の双牙が、胸部の紋章を、正確に貫く。石像が、甲高い音とともに、砕け散った。
【古代の守護者を討伐しました】
【討伐経験値を獲得しました】経験値:+450
残りの守護者たちも、俺たちの連携によって、次々と、無力化されていった。
「終わった、みたいですね」
俺の言葉に、サーラが、興奮した様子で、駆け寄ってきた。
「すごいわ……! こんなに、あっさり……!」
守護者たちが守っていた奥、そこには、さらに、古い石碑が、静かに、佇んでいた。
「これは……」
俺は、育った文献解読のスキルを、発動させた。
【解析中……】
【古代文字の石碑(続き)】
解読可能:範囲、拡大
「前の石碑より、状態が、いいです」
俺は、慎重に、文字を、読み解いていった。
「『楽園を追われし者たちは、この地に、扉を残した。いつか、還る者のために』……」
その一文に、俺たちは、しばらく、言葉を失った。
「扉……?」
ユイの呟きに、俺は、首を振った。
「詳しいことは、まだ、分かりません。でも――この大陸にも、Elysiumの、何か、大きな秘密が、眠ってる気がします」
サーラが、興奮を隠しきれない様子で、俺たちを、見つめた。
「お願い、これからも、一緒に、調査を続けさせてもらえないかしら。私一人じゃ、絶対に、ここまで、辿り着けなかった」
その申し出に、俺は、ユイとタクトと、顔を見合わせた。
「はい、喜んで」
俺の答えに、サーラは、嬉しそうに、笑った。
「よろしくね、リョウさん、ユイさん、タクトさん」
新しい仲間の存在に、俺は、確かな心強さを、感じていた。奪わずに生きる道を、俺は、これからも、選び続けていく。だが、その道は今、この大陸の、まだ見ぬ真実へと、確かに、繋がり始めていた。
遺跡を出ると、日は、既に、傾き始めていた。
「今日は、収穫、多かったですね」
俺の言葉に、サーラが、深く頷いた。
「ええ。この続きが、本当に、楽しみだわ」
俺は、改めて、自分のステータスを、確認した。
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延命ポイント(LP):29.1日分
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数字は、緩やかに、増加していた。この異国の地で、俺たちの物語は、また、新しい深みへと、確かに、踏み込み始めていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:31(LV28 → LV31)
HP:178/178 MP:120/120
STR:112 VIT:96
AGI:108 INT:68
延命ポイント(LP):29.1日分
所持金:銀貨374枚
名声:841(+8)
満腹度:38/100
次のレベルまで:770/16,500
【冒険者ランク】
B
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:疾風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
経験値の訂正、そして、新しい仲間サーラとの出会い。
「楽園を追われし者たち」――大きな謎が、また一つ。
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