第四十三話 指名依頼
第四十三話です。
どうぞよろしくお願いします。
翌朝、俺たちは、ラシャールのギルドから、呼び出しを受けた。
「護衛依頼の、正式な報酬計算が、終わりました」
受付の女性が、そう告げながら、革袋を差し出した。
「カレナからの長期護衛、お疲れ様でした。貢献度に応じた、特別報酬です」
【依頼達成】
異国交易船・護衛依頼(長期)
報酬を獲得しました
・討伐経験値:+200
・銀貨:120枚
・名声:+40
思っていたより、大きな報酬だった。
「随分、遅くなっての、支払いだったんですね」
俺の呟きに、受付の女性は、少し申し訳なさそうに、頭を下げた。
「大陸間の依頼は、両国のギルド間で、正式な清算手続きが、必要になるため、どうしても、時間がかかってしまうんです」
なるほど、と俺は思った。以前、カレナへの護衛依頼の報酬が、いつの間にか、うやむやになっていたのも、恐らく、似たような事情だったのかもしれない。
報酬を受け取ると、受付の女性が、少し、声のトーンを変えた。
「実は、皆さんに、もう一つ、お伝えしたいことがあります」
「なんでしょうか」
「Bランクへの昇格と、これまでの実績を鑑みて、支部長より、指名依頼のご相談です」
「指名依頼、ですか」
「はい。通常の掲示板には、公開されない、信頼できる冒険者にのみ、直接、依頼する形式です」
案内された応接室には、褐色の肌をした、鋭い眼光の女性が、待っていた。
「私は、ラシャール支部長、ナディア。よく来てくれた」
ナディアは、机の上に、地図を広げた。
「単刀直入に、話す。この大陸の南方、『灼熱の回廊』と呼ばれる地域で、最近、これまでにない規模の、モンスターの異常発生が、報告されている」
「異常発生、ですか」
「ああ。しかも、その中心地に、これまで、目撃されたことのない、新種の魔物がいるという情報がある」
ナディアは、一枚の絵――粗い筆致で描かれた、巨大な影の姿を、俺たちに見せた。
「『灼熱の支配者』と、現地の民は、呼んでいる。もし、これが、本当に、規格外の強さを持つ個体なら、放置すれば、周辺の街に、甚大な被害が出る可能性がある」
俺は、看破の瞳を、絵に向けて、試しに、発動させてみた。だが、実物を見ていない以上、詳細な情報は、得られなかった。
「お前さんたちに、まず、現地の調査を、依頼したい。無理に、討伐する必要はない。実態を、掴んでほしいだけだ」
その依頼に、俺は、少し、緊張を覚えながらも、頷いた。
「分かりました。受けます」
「助かる。それと、もう一つ――」
ナディアは、少し、言葉を選ぶように、続けた。
「現地には、既に、別の冒険者パーティが、調査に向かっている。彼らとも、恐らく、合流することになるだろう。腕は確かな連中だが、少々、気性が荒い。心しておくといい」
俺たちは、必要な準備を整え、翌日、南方への旅路に、出発した。
灼熱の回廊は、その名の通り、乾いた熱風が、絶えず吹き荒れる、過酷な地形だった。
「観察眼……看破の瞳」
俺は、周囲に、意識を巡らせた。
【解析中……】
【周辺環境】
生体反応:異常密度(広範囲)
「これは、確かに、尋常じゃないですね」
俺の呟きに、ユイとタクトも、緊張した表情を見せた。
しばらく進むと、前方に、複数の人影が見えた。俺たちと同じく、この地を調査しているらしい、冒険者パーティのようだった。
「おい、お前ら、ナディアの旦那が、寄越した増援か」
先頭に立つ、大柄な男が、値踏みするように、俺たちを見た。
【解析中……】
【???】LV:45
「はい。調査の依頼で、来ました」
俺の答えに、男は、鼻を鳴らした。
「Bランクの、駆け出しか。まあ、いい。俺は、ザイン。このパーティのリーダーだ」
ザインの背後には、他に、二人の仲間がいた。一人は、俺たちと同年代くらいの、弓を携えた女性――名を、ミレイというらしい。もう一人は、寡黙な、大剣を背負った男だった。
「調査、進んでるんですか」
俺の問いに、ザインは、苦い表情を見せた。
「ああ。だが、正直、厄介だ。モンスターの数が、異常に多い。しかも――」
その時、地面が、大きく揺れた。
「来たか……!」
ザインが、緊張した声を上げた。遠方の砂塵の中から、これまで見たことのない、巨大な影が、姿を現し始めた。
【解析中……】
【灼熱の支配者】
LV:58
その数値に、俺は、思わず、息を呑んだ。これまで対峙した、どの相手よりも、明確に、格上だった。
「調査だけの、はずが……」
タクトが、震える声で、呟いた。
「退くなら、今のうちだぞ」
ザインの言葉に、俺は、しばらく、考えた。だが、目の前で、既に、こちらへと向かってきている、あの魔物を、放置すれば、周辺への被害は、避けられない。
「戦います。一緒に、やらせてもらえますか」
俺の言葉に、ザインは、少し、驚いたような顔をしたあと、口の端を、僅かに、上げた。
「面白い。若いのに、いい度胸だ」
俺たちと、ザインたちのパーティ、合わせて六人での、即席の連携が、始まった。
「並列詠唱、風纏、身体強化、回避の心得、全部乗せます」
俺は、育った並列詠唱・上級で、複数の支援効果を、同時に発動させた。
灼熱の支配者が、咆哮とともに、巨大な火炎を、吐き出した。
「散れ!」
ザインの声に、俺たちは、それぞれ、身を翻した。地面が、大きく、抉れる。
「弱点、探ります」
俺は、看破の瞳を、全力で発動させた。
【解析中……】
【灼熱の支配者】
弱点:喉の奥、火炎生成器官の付け根
状態:外殻が硬く、通常攻撃はほぼ無効
「外殻が、硬すぎます! 直接攻撃、ほとんど、通らないです!」
俺の報告に、ザインが、舌打ちした。
「なら、あいつが、口を開けた瞬間を、狙うしかねえ」
ミレイの弓が、灼熱の支配者の目を狙い、正確に、射抜いた。獣が、怯むように、僅かに、動きを止める。
「今です!」
俺は、その隙に、風纏の全力で、獣の懐へと、飛び込んだ。
「喉の奥……!」
疾風の双牙を、渾身の力で、突き入れる。手応えとともに、獣が、甲高い咆哮を上げた。
「もう一撃、いけます!」
タクトの盾撃が、獣の脚部を捉え、体勢を、大きく崩させる。ユイの剣が、追い打ちをかけた。
「これで、終わりだ!」
ザインの大剣と、大剣使いの男の一撃が、同時に、弱点へと、叩き込まれた。
【灼熱の支配者を討伐しました】
【討伐経験値を獲得しました】経験値:+2,800
視界に浮かんだ数字に、俺は、思わず、目を見張った。
【レベルアップ!】
LV:28 → LV:31
灼熱の支配者が、地響きとともに、崩れ落ちた。俺たちは、しばらく、その場に、立ち尽くしていた。
「やった……のか」
タクトが、放心したように、呟いた。
「ああ、討伐、成功だ」
ザインが、豪快に、笑った。
「お前ら、思ったより、やるじゃねえか。連携も、悪くなかった」
「ありがとうございます。ザインさんたちのおかげです」
俺の言葉に、ザインは、少し、照れくさそうに、頭を掻いた。
「今後も、この大陸で、活動するなら、また、一緒にやろうぜ。悪くない相性だ」
その申し出に、俺たちは、頷いた。
「よろしくお願いします」
ミレイが、弓を仕舞いながら、俺たちに、微笑みかけた。
「私も、リョウさんの、あの解析、すごく助かった。また、パーティ組めたら、嬉しいわ」
新しい出会いの予感に、俺は、確かな高揚を、感じていた。
視界の端に、新しい通知が浮かんだ。
【新スキルを習得しました】
「灼熱耐性・初級」
【灼熱耐性・初級】
高温環境における、行動制限が緩和される
俺たちは、討伐の証拠として、灼熱の支配者の一部を回収し、ラシャールへと、帰路についた。
「ナディアさん、驚くでしょうね」
ユイの言葉に、俺は、頷いた。
ギルドに戻り、報告を行うと、ナディアは、しばらく、言葉を失った様子だった。
「まさか、本当に、討伐までしてくるとはな……。正直、想定外だ」
【依頼達成】
灼熱の回廊、調査・討伐
報酬を獲得しました
・討伐経験値:+600(達成報酬)
・銀貨:200枚
・名声:+80
「これで、この地域の脅威は、大きく、軽減されたはずだ。本当に、助かった」
ナディアの言葉に、俺は、静かに、頷いた。
「また、何かあれば、頼らせてもらう。お前さんたちなら、信頼できる」
その日の夜、俺は、改めて、自分のステータスを、確認した。
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延命ポイント(LP):28.9日分
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数字は、確かに、増加していた。この異国の地で、俺たちは、新しい仲間との出会いを経て、また一段、大きく、成長を遂げていた。
「明日も、何か、依頼、探しましょうか」
俺の提案に、ユイとタクトが、それぞれ、力強く、頷いた。異国ヴァルシアでの物語は、これから、さらに、大きく、動き始めようとしていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:31(LV28 → LV31)
HP:178/178(+33) MP:120/120(+22)
STR:112(+20) VIT:96(+16)
AGI:108(+18) INT:68(+12)
延命ポイント(LP):28.9日分
所持金:銀貨374枚(+320)
名声:833(+120)
満腹度:45/100
次のレベルまで:2,180/15,500
【冒険者ランク】
B
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ
武器:疾風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級(NEW)
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
【フレンド】
・ユイ
・タクト
・クロト
・ザイン(NEW)
・ミレイ(NEW)
【パーティ】
・ユイ
・タクト
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
未回収だった護衛報酬、そして、新たな仲間との激戦。
灼熱の支配者、討伐しました!
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