第四十二話 異国の街並み
第四十二話です。
どうぞよろしくお願いします。
港に降り立った瞬間、俺は、これまで嗅いだことのない、香辛料の匂いに、思わず、鼻を刺激された。
「すごい、匂いですね」
ユイが、興味深そうに、周囲を見渡した。街並みは、カレナや帝都とは、まったく違う様式だった。石造りの建物は、丸みを帯びた屋根を持ち、壁には、色鮮やかな模様が、描かれている。
「ここが、大陸ヴァルシアの、玄関口――港湾都市、ラシャール」
ガイが、案内するように、先を歩き始めた。
「言葉、通じるんでしょうか」
タクトの不安そうな問いに、ガイは、笑いながら答えた。
「安心しな。Elysiumの仕様上、基本的な言語は、自動的に、翻訳される。多少、独特の言い回しはあるが、意思疎通に、困ることはないはずだ」
俺たちは、ガイに連れられ、まず、この街の冒険者ギルドへと向かった。建物の外観も、これまでとは、異なる意匠だった。
中に入ると、受付の女性が、俺たちを見て、少し驚いたような表情を見せた。
「カレナからの、旅の方々ですね。護衛依頼、お疲れ様でした」
事前に、話は通っていたらしい。手続きは、驚くほど、スムーズに進んだ。
「こちらの街でも、活動される場合は、簡単な登録更新を、お願いします」
【システム通知】
ラシャール支部での活動が可能になりました
Cランクとして継続登録されます
手続きを終えると、俺は、掲示板へと目を向けた。並んでいる依頼は、これまでのカレナや帝都とは、明らかに、傾向が違っていた。
【砂漠地帯の遺跡調査】
難易度:★★★
【火竜の鱗、採取依頼】
難易度:★★★★
【異国の毒草、解毒法研究への協力】
難易度:★★
「なんだか、雰囲気、違いますね」
ユイの言葉に、俺は、頷いた。この大陸独自の、モンスターや、環境の依頼が、数多く並んでいた。
「まずは、街を、少し見て回りませんか。装備も、こちらの土地に合わせて、整えた方がいいかもしれません」
俺の提案に、二人が頷いた。
ラシャールの街を歩くと、これまでとは違う、様々な発見があった。露店には、見たこともない果物や、香辛料が並び、鍛冶エリアには、軽量で、熱に強い、独特の素材を使った武具が、揃えられていた。
「これ、見てください」
タクトが、目を輝かせながら、指差した先には、砂漠地帯での活動に特化した、通気性の良い軽装が、並んでいた。
「気候に、合わせた装備、必要そうですね」
俺は、店主に、声をかけた。
「観光客じゃなさそうだな。冒険者かい」
「はい。これから、この辺りで、活動しようと思ってます」
「なら、これがいい」
店主が、勧めてくれたのは、砂漠特有の砂塵を防ぎつつ、動きやすさを重視した、軽量なローブだった。
「これに、風纏の魔法、掛け合わせると、砂漠での機動力、かなり上がるはずだ」
俺は、その言葉に従い、装備を新調することにした。
【装備を変更しました】
胴:軽量強化胸当て → 砂塵避けの軽装ローブ
AGI:+3、環境耐性:砂塵(付与)
「思ったより、動きやすいです」
試しに、少し身体を動かしてみると、確かに、以前よりも、軽やかな感覚があった。
ユイとタクトも、それぞれ、この土地に合った装備を、新たに買い揃えた。
「所持金、随分、減っちゃいましたね」
ユイの苦笑に、俺は、頷いた。
【現在の所持金】
銀貨8枚
「まあ、これも、必要な投資です。稼げば、いいだけなので」
装備を整え終えると、俺たちは、ギルドに戻り、この土地に慣れるための、比較的、簡単な依頼を、いくつかこなすことにした。
【異国の毒草、解毒法研究への協力】
報酬:成長経験値(中)/銀貨6枚
難易度:★★
「これ、受けてみましょうか」
俺の提案に、二人が頷いた。依頼内容は、ラシャール郊外に自生する、未知の毒草を採取し、研究機関へ届けるというものだった。
「観察眼……看破の瞳、使ってみます」
俺は、街の外れに広がる、乾いた荒野を、意識を集中させながら、歩いた。
【解析中……】
【異国の毒草・棘紫】
反応:微弱に検出
以前、銀葉草を探した時と、似たような感覚で、俺は、目当ての植物を、少しずつ、見つけていった。
「意外と、見分けやすいですね」
俺の呟きに、ユイが、感心したように、頷いた。
「植物知識のスキル、こういう時、地味に、役に立ちますね」
【スキルが成長しました】
「植物知識・初級」 → 「植物知識・中級」
【植物知識・中級】
未知の植物についても、
一定の精度で、特性を判別できるようになる
久しぶりに、既存のスキルが、育つ感覚を、俺は、確かに、感じていた。
依頼を達成し、研究機関へと届けると、担当の学者らしき人物が、丁寧に、礼を言ってくれた。
【依頼達成】
異国の毒草、解毒法研究への協力
報酬を獲得しました
・成長経験値:+90(達成報酬)
・銀貨:6枚
・名声:+8
その後、俺たちは、比較的、実入りの良い、砂漠地帯の遺跡調査の依頼にも、挑戦することにした。
遺跡は、街の外れ、砂に半ば埋もれた、古代の建造物だった。
「観察眼……看破の瞳」
【解析中……】
【周辺環境】
生体反応:複数(遺跡内部に集中)
「モンスターが、いるみたいです」
俺の言葉に、ユイとタクトが、それぞれ、武器を構えた。遺跡の中に足を踏み入れると、乾いた空気とともに、微かな、獣の唸り声が、響いてきた。
【解析中……】
【砂蠍】
LV:40
以前対峙した、どの魔物とも違う、この土地特有のモンスターだった。
「弱点、確認します」
【解析中……】
【砂蠍】
弱点:尾の付け根、装甲の薄い一点
「ユイさん、タクトさん、いつも通りで!」
「はい……!」
「分かりました!」
俺たちは、連携しながら、砂蠍との戦闘に挑んだ。以前よりも、遥かに、洗練された連携で、俺たちは、着実に、ダメージを重ねていく。
「対人戦の心得、モンスター相手にも、応用効きますね」
俺の呟きに、ユイが、剣を振るいながら、答えた。
「相手の動きを、読む感覚、確かに、似てますね!」
俺は、隙を見て、尾の付け根へと、疾風の双牙を、突き立てた。
【砂蠍を討伐しました】
【討伐経験値を獲得しました】経験値:+310
遺跡内部を、慎重に、進んでいく。いくつかの砂蠍を、着実に、討伐しながら、俺たちは、遺跡の中心部へと、辿り着いた。
そこには、古代の文字が刻まれた、大きな石碑が、静かに、佇んでいた。
「これ……」
俺は、文献解読のスキルを、発動させた。
【解析中……】
【古代文字の石碑】
一部、解読可能
「なんて、書いてあるんですか」
ユイの問いに、俺は、慎重に、読み解いていった。
「『この地に眠るは、かつての楽園を求めし、旅人たちの、記憶』……」
その一文に、俺は、僅かな引っかかりを覚えた。楽園――この大陸にも、Elysiumに関わる、何らかの痕跡が、残されているのだろうか。
「続き、読めますか」
タクトの問いに、俺は、さらに、文字を追った。だが、その先は、経年劣化で、判読が困難だった。
【文献解読の熟練度が、一定基準に達しました】
より詳細な解読には、さらなる経験が必要です
「今の俺のレベルじゃ、これ以上は、読み解けないみたいです」
俺の言葉に、少し、残念そうな空気が流れた。だが、それでも、この発見は、確かな手がかりの一つになりそうだった。
遺跡調査の依頼を達成し、俺たちは、ギルドへと戻った。
【依頼達成】
砂漠地帯の遺跡調査
報酬を獲得しました
・討伐経験値:+150(達成報酬)
・銀貨:40枚
・名声:+25
受付の女性に、石碑の記述について報告すると、彼女は、興味深そうに、資料を書き留めた。
「貴重な情報、ありがとうございます。この街のギルドとしても、詳しく、調査を進めたいと思います」
一連の活動を終え、俺たちは、宿への帰り道を、歩いていた。
「今日一日で、随分、色々、ありましたね」
ユイの言葉に、俺は、頷いた。
視界の端に、これまで見たことのない、大きな通知が浮かんだ。
【冒険者ランク昇格審査、条件を満たしました】
「これは……」
俺は、思わず、足を止めた。
【冒険者ランクが上昇しました】
C → B
「Bランクに、なった……」
その通知に、俺たちは、しばらく、言葉を失った。一人前として扱われる目安と言われた、Cランク。それを、確かに、超えたのだと、俺は、改めて、実感した。
「熟練者、って言われる、目安ですよね」
タクトの呟きに、俺は、頷いた。
「はい。まだまだ、実感、湧かないですけど」
俺は、改めて、自分のステータスを、確認した。
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延命ポイント(LP):28.3日分
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数字は、緩やかに、増加していた。この異国の地で、俺たちは、また、新しい一歩を、確かに、踏み出していた。
「明日から、本格的に、この大陸のこと、探っていきましょうか」
俺の提案に、ユイとタクトが、それぞれ、力強く、頷いた。
異国ヴァルシアの夜が、これまで見たどの夜とも違う、独特の静けさとともに、俺たちを、包み込んでいった。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:28
HP:145/145 MP:98/98
STR:92 VIT:80
AGI:90 INT:56
延命ポイント(LP):28.3日分
所持金:銀貨54枚(+46)
名声:713(+33)
満腹度:55/100
次のレベルまで:1,280/12,000
【冒険者ランク】
B(NEW、C → B)
【装備】
胴:砂塵避けの軽装ローブ(更新)
武器:疾風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:長期保存食・船上用軽量ブーツ(ユイ)・耐水加工の籠手
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・中級(進化)
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
【フレンド】
・ユイ
・タクト
・クロト
【パーティ】
・ユイ
・タクト
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
異国の街での探索、そしてBランクへの昇格。
古代の石碑に刻まれた、気になる一文も。
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