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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

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第四十話 夜狩の女王

第四十話です。

どうぞよろしくお願いします。


リーザたちとの遭遇から、数日が過ぎた。


俺たちは、警戒を強めながらも、いつも通り、依頼をこなす日々を送っていた。だが、俺の中には、まだ、あの夜の記憶が、確かな重みとして、残り続けていた。


視界の端に、まだ見ていなかった通知が、いくつか残っていることに、俺は、ふと、気づいた。


【実績解除】

「奪う者となりし瞬間」


説明:初めて、プレイヤーを撃破し、

   その者の積み上げた力の一部を、

   継承した記録


効果:称号「簒奪者」を獲得

   (プレイヤー討伐時の共鳴レベル

    獲得効率が、僅かに上昇)


「簒奪者……」


俺は、その称号の名を、静かに、口の中で、繰り返した。以前の「一線を越えた者」よりも、さらに、踏み込んだ響きだった。


もう一つ、新しいスキルの通知も、残っていた。


【新スキルを習得しました】

「対人戦の心得・初級」


【対人戦の心得・初級】

プレイヤーとの戦闘時、

相手の動きの癖を、より正確に読み取れる


奪わずに生きる道を、俺は選び続けてきた。だが、その道の途中で、俺は、確かに、この世界の、もう一つの側面に、深く踏み込んでしまっていた。


「リョウさん、大丈夫ですか」


朝食の席で、ユイが、心配そうに、俺の顔を、覗き込んだ。


「はい。ただ、まだ、色々、整理中で」


俺の答えに、ユイは、静かに、頷いた。


その日の午後、俺たちがギルドで、依頼を確認していると、視界の端に、見覚えのある反応が、浮かび上がった。


【解析中……】

【リーザ】LV:42


「来た……」


俺の呟きに、ユイとタクトが、瞬時に、緊張した表情を見せた。


ギルドの入口に、リーザが、一人で、静かに立っていた。以前のような、部下を引き連れた様子は、なかった。


「話が、あるの。少し、時間を、もらえないかしら」


その声には、以前の、余裕に満ちた響きが、僅かに、薄れていた。


俺たちは、警戒しながらも、彼女の話に、耳を傾けることにした。ギルドの応接室に、俺たちは、向かい合って座った。


「単刀直入に、言うわ。あなたと、決着をつけたい」


リーザの言葉に、俺は、身構えた。


「決着、というのは」


「正式な、決闘よ。LPのやり取りが発生しない、闘技場での」


その提案に、俺は、少し意外な思いを、抱いた。


「以前は、LPを、奪うつもりだったはずですよね」


俺の指摘に、リーザは、小さく、笑った。


「ええ。でも、あの夜、あなたの部下――サイラスのレベルが、根こそぎ、持っていかれるのを見て、少し、考えが、変わったの」


「サイラス、というのは」


「あの日、あなたが、討伐した男よ。あいつ、今、ひどく落ち込んでるわ。積み上げてきたものを、一瞬で、失うことの意味、身をもって、知ったみたいね」


リーザの声には、これまでにない、複雑な色合いが、滲んでいた。


「私たち夜狩は、強者を狩ることに、ある種の、意味を見出してきた。でも――今回の一件で、私自身、少し、その"意味"に、疑問を、抱くようになったの」


「それで、正式な決闘、ですか」


「ええ。あなたの実力を、本当の意味で、確かめてみたい。奪う形ではなく、真っ向から」


俺は、しばらく、考えた。この申し出を、受けるべきかどうか。だが、目の前の相手の、真剣な眼差しに、俺は、確かなものを、感じ取っていた。


「分かりました。受けます」


俺の答えに、リーザは、満足そうに、頷いた。


「明日、闘技場で。楽しみにしてるわ」


翌日、俺たちは、カレナの闘技場へと向かった。正式な決闘の手続きを済ませ、俺は、リーザと、向かい合った。観客席には、ユイとタクト、そして、噂を聞きつけた、何人かの冒険者たちの姿があった。


「本気で、来なさい」


リーザの言葉に、俺は、頷いた。


「はい」


開始の合図とともに、リーザが、一気に、間合いを詰めてきた。俺は、風纏と身体強化を、並列詠唱で、同時に発動させる。育った並列詠唱・上級のおかげで、三つ目の支援効果――回避の心得の常時発動も、無理なく、維持できていた。


「対人戦の心得、使います」


俺は、新しく習得したスキルを、意識に乗せた。リーザの動きの、僅かな癖――踏み込みの際、常に、右足から動く傾向が、俺の目に、鮮明に映るようになった。


「あら、成長してるじゃない」


リーザの猛攻を、俺は、以前よりも、確かな精度で、しのぎ続けた。


「看破の瞳!」


【解析中……】

【リーザ】

弱点:右脇腹、隠蔽スキルの効果切れの一瞬


「見えた……!」


以前は検出できなかった弱点が、育った看破の瞳と、対人戦の心得の相乗効果で、ついに、その姿を現した。


「今です!」


俺は、リーザの隙を突き、疾風の双牙を、鋭く振るった。刃が、彼女の脇腹を、掠める。


「やるじゃない」


リーザの表情に、初めて、素直な称賛の色が、浮かんだ。


戦いは、拮抗しながらも、徐々に、俺の方が、優勢になっていった。以前とは違う、確かな成長――クロトとの修行、そして、あの夜の経験。それらすべてが、今、俺の力として、結実していた。


「これで、終わりです」


俺は、最後の踏み込みを放った。リーザは、それを受け止めようとしたが、僅かに、体勢を崩す。短剣が、彼女の得物を、弾き飛ばした。


【模擬戦、終了】

勝者:リョウ


観客席から、大きな歓声が上がった。リーザは、しばらく、その場に立ち尽くしたあと、静かに、微笑んだ。


「完敗ね。あなたの、その、奪わない生き方――やっぱり、嫌いじゃないわ」


「ありがとうございます」


俺は、差し出された手を、握り返した。


「これから、夜狩は、どうするんですか」


俺の問いに、リーザは、少し、考える素振りを見せた。


「正直、まだ、分からない。でも、少なくとも――もう、無闇に、誰かを、狩ることは、しないつもりよ」


その言葉に、俺は、確かな安堵を、覚えた。


「サイラスさん、でしたっけ。あの人にも、伝えてもらえますか。奪ったことに、後悔はないけど、悪いとは思ってるって」


俺の言葉に、リーザは、少し驚いたような表情を見せたあと、小さく、頷いた。


「伝えておくわ。あなたみたいな人間が、この世界に、いるってことも」


リーザたちが、闘技場を去っていくのを、俺たちは、静かに見送った。


「終わった、んですね」


タクトの言葉に、俺は、頷いた。


「はい。一つ、大きな区切りが、ついた気がします」


ギルドに戻ると、決闘の噂を聞きつけたヴォルグが、豪快に、俺の肩を叩いた。


「いい戦いだったらしいな。それに――」


ヴォルグは、少し、真剣な表情になった。


「異国交易船の護衛依頼、まだ、興味あるか。実力も、名声も、十分に、条件を満たしてる」


その言葉に、俺は、ユイとタクトと、顔を見合わせた。


「行きましょうか」


俺の言葉に、二人が、力強く、頷いた。


「まだ見ぬ、この世界の、さらに先へ」


俺は、そう呟きながら、改めて、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):27.8日分

────────────────────


奪わない道を選び続けてきた俺は、確かに、一度、その一線を越えた。だが、その経験もまた、俺自身の一部として、確かに、刻まれていた。


「異国、か……。楽しみですね」


ユイの言葉に、俺は、頷いた。窓の外、カレナの空は、どこまでも、青く澄み渡っていた。俺たちの物語は、これから、この国の外へと、新しい一歩を、踏み出そうとしていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:28

HP:145/145 MP:98/98

STR:92 VIT:80

AGI:90 INT:56


延命ポイント(LP):27.8日分

所持金:銀貨56枚

名声:680(+25)

満腹度:50/100


次のレベルまで:820/12,000


【冒険者ランク】

C


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:疾風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪

携帯品:保存食・簡易野営道具


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の瞳

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・上級

・回避の心得・上級

・風纏・中級

・身体強化・中級

・文献解読・初級

・並列詠唱・上級

・対人戦の心得・初級(NEW)


【称号】

・一線を越えた者

・世界の歪みを正した者

・簒奪者(NEW)


【フレンド】

・ユイ

・タクト

・クロト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

リーザとの決着、そして異国への扉。

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