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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

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第三十七話 闇討ち

第三十七話です。

どうぞよろしくお願いします。


数日後の夜、俺たちは、依頼をこなした帰り道、宿への近道になる裏通りを歩いていた。


「今日は、色々、依頼、こなせましたね」


ユイが、満足そうに言った。だが、俺は、その言葉に応じながらも、微かな違和感を、拭いきれずにいた。


「どうしたんですか、リョウさん」


タクトの問いに、俺は、看破の瞳を、控えめに発動させた。


【解析中……】

【???】LV:22(複数)


視界の端、路地の陰に、複数の反応が、見え隠れしていた。


「誰か、いるみたいです」


俺の呟きに、ユイとタクトの表情が、瞬時に、引き締まった。


「ミラ、この気配、何か分かりますか」


俺の問いに、視界の端に、淡い光が集まった。


「複数のプレイヤーが、あなた方の周囲を、意図的に、囲む形で、位置取りしています」


その言葉に、俺は、身構えた。以前、ミラから聞いた「良からぬ形での注目」という言葉が、頭をよぎった。


「出てきなさい」


俺の呼びかけに、路地の奥から、フードを被った、数人の人影が、姿を現した。先頭に立つ男が、フードを、ゆっくりと払った。


「久しぶりだな、坊やたち」


見覚えのある顔だった。


「あなたは……赤牙の……」


俺の言葉に、男は、忌々しげに笑った。以前、夜市で対峙した、リーダー格の男だった。


「よく、覚えてたな。あの一件で、俺は、随分と、痛い目を見た。仲間も、大勢、捕まった」


「摘発されたのは、あなたたちが、悪いことをしてたからです」


俺の言葉に、男の表情が、憎悪に歪んだ。


「屁理屈を、言うな。俺たちは、俺たちなりに、この世界で、生き延びる方法を、探ってただけだ。それを、正義面して、潰しやがって」


男の背後に控える、他の人影たちも、それぞれ、武器に手をかけていた。


「今日は、正式な決闘の手続きなんて、面倒なこと、しない。ここで、恨みを、晴らさせてもらう」


その言葉の意味に、俺は、思わず、息を呑んだ。


「まさか、LPを、奪うつもりですか」


「その通りだ」


男の声には、はっきりとした、殺意が滲んでいた。


「お前らの持つ、莫大な名声とLP、頂いてやる」


ユイとタクトが、それぞれ武器を構えた。俺も、疾風の双牙を、静かに、抜き放った。


「正式な手続きを、踏まない襲撃は、重大な規約違反のはずです」


俺の言葉に、男は、鼻で笑った。


「今更、そんなことを、気にする段階じゃない。俺たちは、既に、後がないんだよ」


その言葉とともに、男たちが、一斉に、飛びかかってきた。俺は、風纏と身体強化を、並列詠唱で発動させる。


「ユイさん、タクトさん、背中合わせで!」


「はい……!」


「分かりました!」


俺たちは、円陣を組むように、位置取った。囲まれている状況では、それが、最も安全な布陣だった。


一人が、俺に向かって、剣を振るってきた。俺は、育った回避の心得で、その一撃をかわす。


【回避の心得・中級が発動】

反撃の隙を生成


俺は、その隙を突き、短剣の柄で、相手の武器を弾き飛ばした。


「くそ……!」


「今のあなたたちに、俺たちを倒すだけの実力、ないと思います」


俺の言葉に、リーダー格の男が、苛立ったように叫んだ。


「実力の差なんて、関係ねえ! 数の暴力で、押し切る!」


その言葉通り、男たちは、なりふり構わず、俺たちに、殺到してきた。


「タクトさん、右、来ます!」


「はい……!」


タクトが、育った守りの構えと、新しい盾撃のスキルで、相手の攻撃を、しっかりと受け止めた。


「盾撃!」


タクトの一撃が、相手を、大きく弾き飛ばす。以前とは、明らかに違う、頼もしい動きだった。


「ユイさん、そっちは!」


「大丈夫です……!」


ユイも、着実に、相手を一人ずつ、無力化していった。


俺は、看破の瞳で、リーダー格の男の動きを、注意深く見つめた。


【解析中……】

【偽冒険者・元赤牙リーダー】

弱点:以前の戦闘で負った、左肩の古傷


「そこか……!」


俺は、隙を見て、男の左肩を、正確に狙った。短剣が、掠める。男が、苦悶の表情を浮かべた。


「くそ、この……!」


男が、なりふり構わず、大剣を振り回した。俺は、身体強化で高めた反射で、それを、紙一重で回避する。


「もう、終わりです」


俺は、男の懐へと、素早く踏み込んだ。左肩の古傷、そこへ向かって、疾風の双牙を、鋭く突き立てる。


「がああっ……!」


男が、武器を取り落とし、その場に、膝をついた。周囲の部下たちも、次々と、ユイとタクトによって、無力化されていった。


「もう、抵抗する余力、ないですよね」


俺の言葉に、男は、悔しそうに、地面を睨みつけた。


【偽装冒険者集団を撃退しました】

【PvP戦闘における貢献経験値を獲得しました】経験値:+220


LPのやり取りは、発生していなかった。俺たちが、相手のLPを奪う一撃を、意図的に、避け続けたからだった。


「なんで、俺たちのLP、狙わなかった……」


男が、掠れた声で、そう尋ねた。俺は、静かに、答えた。


「あなたたちは、俺たちのLPを、狙ってきました。でも、俺は、同じことは、しません。奪わずに生きる道を、俺は、選んでるので」


その言葉に、男は、しばらく、俺を見つめたあと、力なく、目を伏せた。


「……甘い、な。お前も」


「そうかもしれません。でも、これが、俺のやり方です」


騒ぎを聞きつけたのか、遠くから、複数の足音が近づいてきた。カレナの夜間警備隊だった。


「動くな! 何があった!」


俺は、事の経緯を、簡潔に説明した。男たちは、次々と、拘束されていった。


「今夜は、随分な騒ぎだったな」


警備隊長らしき男が、俺たちを見て、感心したように言った。


「無傷で、これだけの人数を、制圧するとは、大したもんだ」


「たまたま、上手くいっただけです」


俺の謙遜に、隊長は、小さく笑った。


「明日、詳しい事情聴取に、協力してもらうことになる。今夜は、ゆっくり休んでくれ」


事態が落ち着くと、俺たちは、ようやく、詰めていた息を、大きく吐いた。


「本当に、大丈夫でしたか、二人とも」


俺の問いに、ユイとタクトが、それぞれ頷いた。


「はい、なんとか」


「今回は、ちゃんと、皆さんの力になれた気がします」


タクトの言葉に、俺は、頷いた。


「はい、本当に、頼もしかったです」


視界の端に、通知が浮かんだ。


【スキルが成長しました】

「回避の心得・中級」 → 「回避の心得・上級」


【回避の心得・上級】

攻撃回避時、確実に反撃の隙を生み出す

一定確率で、複数の攻撃を連続回避できる


初めての、明確なPvP戦闘を経験したことで、俺自身も、また一段、成長していた。


「これから、こういうことが、増えるかもしれません」


俺の呟きに、ユイが、静かに頷いた。


「はい。でも、今日みたいに、しっかり対応できれば、大丈夫だと思います」


「もっと、強くならないと、ですね」


タクトの言葉に、俺は、頷いた。


宿への帰り道、俺は、改めて、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):17.6日分

────────────────────


数字は、緩やかに、増加していた。だが、今夜の一件は、俺たちに、新しい現実を、突きつけていた。奪わない道を選ぶ俺たちであっても、この世界には、悪意を持って、向かってくる者たちが、確かに、存在する。


「今夜は、もう、休みましょう」


俺の言葉に、二人が頷いた。宿に戻り、俺は、静かに、その日の出来事を、頭の中で、整理していった。


奪わずに生きる道――その選択は、決して、安全を約束するものではない。それでも、俺は、この道を、貫き続けるつもりだった。


窓の外、カレナの夜が、静かに、更けていく。俺たちの物語は、まだ、その先へと、確かに、続いていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:25

HP:145/145 MP:98/98

STR:78 VIT:68

AGI:76 INT:48


延命ポイント(LP):17.6日分

所持金:銀貨56枚

名声:655(+25)

満腹度:52/100


次のレベルまで:1,900/9,500


【冒険者ランク】

C


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:疾風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪

携帯品:保存食・簡易野営道具


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の瞳

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・上級

・回避の心得・上級(進化)

・風纏・中級

・身体強化・中級

・文献解読・初級

・並列詠唱・上級


【称号】

・一線を越えた者

・世界の歪みを正した者


【フレンド】

・ユイ

・タクト

・クロト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

初めての、明確なPvP。奪わない選択を、貫きました。

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