第三十七話 闇討ち
第三十七話です。
どうぞよろしくお願いします。
数日後の夜、俺たちは、依頼をこなした帰り道、宿への近道になる裏通りを歩いていた。
「今日は、色々、依頼、こなせましたね」
ユイが、満足そうに言った。だが、俺は、その言葉に応じながらも、微かな違和感を、拭いきれずにいた。
「どうしたんですか、リョウさん」
タクトの問いに、俺は、看破の瞳を、控えめに発動させた。
【解析中……】
【???】LV:22(複数)
視界の端、路地の陰に、複数の反応が、見え隠れしていた。
「誰か、いるみたいです」
俺の呟きに、ユイとタクトの表情が、瞬時に、引き締まった。
「ミラ、この気配、何か分かりますか」
俺の問いに、視界の端に、淡い光が集まった。
「複数のプレイヤーが、あなた方の周囲を、意図的に、囲む形で、位置取りしています」
その言葉に、俺は、身構えた。以前、ミラから聞いた「良からぬ形での注目」という言葉が、頭をよぎった。
「出てきなさい」
俺の呼びかけに、路地の奥から、フードを被った、数人の人影が、姿を現した。先頭に立つ男が、フードを、ゆっくりと払った。
「久しぶりだな、坊やたち」
見覚えのある顔だった。
「あなたは……赤牙の……」
俺の言葉に、男は、忌々しげに笑った。以前、夜市で対峙した、リーダー格の男だった。
「よく、覚えてたな。あの一件で、俺は、随分と、痛い目を見た。仲間も、大勢、捕まった」
「摘発されたのは、あなたたちが、悪いことをしてたからです」
俺の言葉に、男の表情が、憎悪に歪んだ。
「屁理屈を、言うな。俺たちは、俺たちなりに、この世界で、生き延びる方法を、探ってただけだ。それを、正義面して、潰しやがって」
男の背後に控える、他の人影たちも、それぞれ、武器に手をかけていた。
「今日は、正式な決闘の手続きなんて、面倒なこと、しない。ここで、恨みを、晴らさせてもらう」
その言葉の意味に、俺は、思わず、息を呑んだ。
「まさか、LPを、奪うつもりですか」
「その通りだ」
男の声には、はっきりとした、殺意が滲んでいた。
「お前らの持つ、莫大な名声とLP、頂いてやる」
ユイとタクトが、それぞれ武器を構えた。俺も、疾風の双牙を、静かに、抜き放った。
「正式な手続きを、踏まない襲撃は、重大な規約違反のはずです」
俺の言葉に、男は、鼻で笑った。
「今更、そんなことを、気にする段階じゃない。俺たちは、既に、後がないんだよ」
その言葉とともに、男たちが、一斉に、飛びかかってきた。俺は、風纏と身体強化を、並列詠唱で発動させる。
「ユイさん、タクトさん、背中合わせで!」
「はい……!」
「分かりました!」
俺たちは、円陣を組むように、位置取った。囲まれている状況では、それが、最も安全な布陣だった。
一人が、俺に向かって、剣を振るってきた。俺は、育った回避の心得で、その一撃をかわす。
【回避の心得・中級が発動】
反撃の隙を生成
俺は、その隙を突き、短剣の柄で、相手の武器を弾き飛ばした。
「くそ……!」
「今のあなたたちに、俺たちを倒すだけの実力、ないと思います」
俺の言葉に、リーダー格の男が、苛立ったように叫んだ。
「実力の差なんて、関係ねえ! 数の暴力で、押し切る!」
その言葉通り、男たちは、なりふり構わず、俺たちに、殺到してきた。
「タクトさん、右、来ます!」
「はい……!」
タクトが、育った守りの構えと、新しい盾撃のスキルで、相手の攻撃を、しっかりと受け止めた。
「盾撃!」
タクトの一撃が、相手を、大きく弾き飛ばす。以前とは、明らかに違う、頼もしい動きだった。
「ユイさん、そっちは!」
「大丈夫です……!」
ユイも、着実に、相手を一人ずつ、無力化していった。
俺は、看破の瞳で、リーダー格の男の動きを、注意深く見つめた。
【解析中……】
【偽冒険者・元赤牙リーダー】
弱点:以前の戦闘で負った、左肩の古傷
「そこか……!」
俺は、隙を見て、男の左肩を、正確に狙った。短剣が、掠める。男が、苦悶の表情を浮かべた。
「くそ、この……!」
男が、なりふり構わず、大剣を振り回した。俺は、身体強化で高めた反射で、それを、紙一重で回避する。
「もう、終わりです」
俺は、男の懐へと、素早く踏み込んだ。左肩の古傷、そこへ向かって、疾風の双牙を、鋭く突き立てる。
「がああっ……!」
男が、武器を取り落とし、その場に、膝をついた。周囲の部下たちも、次々と、ユイとタクトによって、無力化されていった。
「もう、抵抗する余力、ないですよね」
俺の言葉に、男は、悔しそうに、地面を睨みつけた。
【偽装冒険者集団を撃退しました】
【PvP戦闘における貢献経験値を獲得しました】経験値:+220
LPのやり取りは、発生していなかった。俺たちが、相手のLPを奪う一撃を、意図的に、避け続けたからだった。
「なんで、俺たちのLP、狙わなかった……」
男が、掠れた声で、そう尋ねた。俺は、静かに、答えた。
「あなたたちは、俺たちのLPを、狙ってきました。でも、俺は、同じことは、しません。奪わずに生きる道を、俺は、選んでるので」
その言葉に、男は、しばらく、俺を見つめたあと、力なく、目を伏せた。
「……甘い、な。お前も」
「そうかもしれません。でも、これが、俺のやり方です」
騒ぎを聞きつけたのか、遠くから、複数の足音が近づいてきた。カレナの夜間警備隊だった。
「動くな! 何があった!」
俺は、事の経緯を、簡潔に説明した。男たちは、次々と、拘束されていった。
「今夜は、随分な騒ぎだったな」
警備隊長らしき男が、俺たちを見て、感心したように言った。
「無傷で、これだけの人数を、制圧するとは、大したもんだ」
「たまたま、上手くいっただけです」
俺の謙遜に、隊長は、小さく笑った。
「明日、詳しい事情聴取に、協力してもらうことになる。今夜は、ゆっくり休んでくれ」
事態が落ち着くと、俺たちは、ようやく、詰めていた息を、大きく吐いた。
「本当に、大丈夫でしたか、二人とも」
俺の問いに、ユイとタクトが、それぞれ頷いた。
「はい、なんとか」
「今回は、ちゃんと、皆さんの力になれた気がします」
タクトの言葉に、俺は、頷いた。
「はい、本当に、頼もしかったです」
視界の端に、通知が浮かんだ。
【スキルが成長しました】
「回避の心得・中級」 → 「回避の心得・上級」
【回避の心得・上級】
攻撃回避時、確実に反撃の隙を生み出す
一定確率で、複数の攻撃を連続回避できる
初めての、明確なPvP戦闘を経験したことで、俺自身も、また一段、成長していた。
「これから、こういうことが、増えるかもしれません」
俺の呟きに、ユイが、静かに頷いた。
「はい。でも、今日みたいに、しっかり対応できれば、大丈夫だと思います」
「もっと、強くならないと、ですね」
タクトの言葉に、俺は、頷いた。
宿への帰り道、俺は、改めて、自分のステータスを確認した。
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延命ポイント(LP):17.6日分
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数字は、緩やかに、増加していた。だが、今夜の一件は、俺たちに、新しい現実を、突きつけていた。奪わない道を選ぶ俺たちであっても、この世界には、悪意を持って、向かってくる者たちが、確かに、存在する。
「今夜は、もう、休みましょう」
俺の言葉に、二人が頷いた。宿に戻り、俺は、静かに、その日の出来事を、頭の中で、整理していった。
奪わずに生きる道――その選択は、決して、安全を約束するものではない。それでも、俺は、この道を、貫き続けるつもりだった。
窓の外、カレナの夜が、静かに、更けていく。俺たちの物語は、まだ、その先へと、確かに、続いていた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:25
HP:145/145 MP:98/98
STR:78 VIT:68
AGI:76 INT:48
延命ポイント(LP):17.6日分
所持金:銀貨56枚
名声:655(+25)
満腹度:52/100
次のレベルまで:1,900/9,500
【冒険者ランク】
C
【装備】
胴:軽量強化胸当て
武器:疾風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:保存食・簡易野営道具
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・初級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級(進化)
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
【フレンド】
・ユイ
・タクト
・クロト
【パーティ】
・ユイ
・タクト
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
初めての、明確なPvP。奪わない選択を、貫きました。
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