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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

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第三十六話 偽りの冒険者

第三十六話です。

どうぞよろしくお願いします。


翌朝、俺たちは、久しぶりに、カレナのギルド本部を訪れた。


掲示板には、以前と変わらず、様々な依頼が張り出されている。だが、俺たちの実力を見た受付の職員が、少し困ったような表情を見せた。


「Cランクの、しかも帝都での大きな功績をお持ちの方々に、これといって、見合う依頼が……」


「大丈夫です。無理に、難しいものを、選ばなくても」


俺の言葉に、受付の職員は、少しほっとしたように、資料をめくった。


「でしたら、こちらは、いかがでしょう。最近、街道沿いで、偽の冒険者を名乗る一団が、旅人から金品を巻き上げているという、被害報告が相次いでいます」


【偽冒険者集団の調査・討伐】

 報酬:討伐経験値(大)/銀貨15枚

 難易度:★★★


「本物のギルド証を偽造しているらしく、旅人たちも、すっかり騙されているようで。正規の冒険者パーティに、実態調査と、可能であれば、確保をお願いしたいとのことです」


「偽の、冒険者……」


俺は、少し引っかかりを覚えた。以前、赤牙という組織が摘発された後、あの手口を真似た、便乗犯のようなものが、現れているのかもしれない。


「受けます」


俺の言葉に、ユイとタクトも頷いた。


「タクトさん、無理はしないでください。まだ、本調子じゃないはずですし」


俺の気遣いに、タクトは、しっかりとした口調で答えた。


「大丈夫です。今回は、俺も、ちゃんと、戦力になります」


その言葉には、以前とは違う、確かな決意が滲んでいた。


依頼書を受け取り、俺たちは、街道沿いの目撃情報があった地域へと向かった。カレナの外れ、街道が森へと差し掛かる手前に、簡易的な休憩所が設けられている。


「あそこ、怪しいですね」


ユイが指差した先に、粗末な天幕を張った、数人組の集団が見えた。旅装束の男が、その集団に、何やら詰め寄られている様子だった。


俺は、看破の瞳を発動させた。


【解析中……】

【???】LV:15(複数)


「本物の冒険者にしては、装備が、妙にちぐはぐですね」


俺の呟きに、ユイも頷いた。


「はい。ギルド証だけ、立派で、他は、間に合わせみたいな感じです」


俺たちは、物陰から、しばらく様子を窺った。


「通行料だ、払え。この道は、俺たちが、魔物の討伐で、安全を保証してるんだからな」


集団のリーダー格らしき男が、旅人に、そう凄んでいた。旅人は、渋々といった様子で、財布を取り出している。


「今です」


俺は、物陰から進み出た。


「その通行料、正式な依頼として、ギルドに登録されてますか」


突然の声に、集団の男たちが、一斉に振り返った。


「なんだ、お前ら」


「ギルドから、調査の依頼を受けてきました。あなたたちの活動、正式な冒険者証に基づくものか、確認させてください」


俺の言葉に、リーダー格の男の表情が、みるみる強張った。


「うるせえ! 関係ねえ奴は、引っ込んでろ!」


男が、剣を抜いた。他の仲間たちも、次々と、武器を構える。


「戦うしか、ないみたいですね」


俺の呟きに、ユイとタクトが、それぞれ武器を構えた。


「タクトさん、まずは、後方からの援護で。無理そうなら、すぐに、下がってください」


「はい、分かりました」


男たちが、一斉に、襲いかかってきた。俺は、風纏と身体強化を、並列詠唱で発動させる。


「観察眼……看破の瞳!」


【解析中……】

【偽冒険者・リーダー】

LV:18

弱点:利き腕の動きに、大きな癖あり


本職の戦闘訓練を、まともに受けていないのだろう。動きには、隙が多かった。


「ユイさん、リーダーを!」


「はい!」


ユイが、リーダー格の男へと、まっすぐ踏み込んだ。俺は、周囲を囲む、他の部下たちの相手をする。


一人が、大振りの一撃を、繰り出してきた。俺は、成長した回避の心得で、紙一重で、それをかわす。


【回避の心得・中級が発動】

反撃の隙を生成


生まれた隙を、俺は、逃さなかった。短剣の柄で、相手の腹部を強く打ち据える。


「ぐはっ……!」


男が、崩れ落ちた。俺は、致命傷は避けつつ、確実に、戦闘不能に追い込んでいく。奪わずに生きる道を選んできた俺にとって、この手加減の感覚は、既に、自然なものになっていた。


「タクトさん、後ろ!」


俺の警告に、タクトが、素早く振り返った。背後から迫っていた男の一撃を、盾のように使う籠手で、しっかりと受け止める。


「守りの構え、身についてきました……!」


タクトの声には、確かな自信が滲んでいた。育った「守りの構え・初級」のスキルが、彼を、しっかりと支えていた。


「ユイさん、そっちは!」


「もう少しです……!」


ユイが、リーダー格の男と、鋭い剣戟を交わしていた。男の利き腕の癖を、既に見切っているのか、ユイの動きには、無駄がなかった。


「これで、終わりです!」


ユイの一撃が、男の武器を、弾き飛ばした。男は、呆然とした表情で、その場に立ち尽くした。


「く、くそ……!」


「もう、逃げ場は、ないですよ」


俺は、周囲を見渡した。既に、部下たちの大半が、戦闘不能に追い込まれていた。


【偽冒険者集団を制圧しました】

【討伐に準ずる貢献経験値を獲得しました】経験値:+150


「一体、何のために、こんなことを……」


俺の問いに、リーダー格の男は、しばらく、黙り込んだあと、力なく答えた。


「赤牙が、摘発されてから……俺たち、稼ぎ口が、なくなったんだよ。元々、赤牙の下っ端だった連中で、集まって……」


その言葉に、俺は、思わず、息を呑んだ。


「赤牙の……」


「ああ。あんたらのせいで、俺たちの、それまでのやり方は、もう、通用しなくなった。だから、こんな形で、しのぐしか……」


男の言葉には、身勝手な逆恨みと、確かな困窮の両方が、入り混じっていた。


「その理屈で、旅人を、脅していい理由には、ならないです」


俺の言葉に、男は、何も言い返せなかった。


到着したギルドの警備隊に、男たちを引き渡すと、俺たちは、ようやく、詰めていた息を吐いた。


「タクトさん、今日は、随分、頼もしかったです」


俺の言葉に、タクトは、少し照れくさそうに笑った。


「まだまだ、皆さんに、比べたら、全然です。でも――少しずつ、進んでる実感、ありました」


視界の端に、通知が浮かんだ。


【新スキルを習得しました】(タクト)

「盾撃・初級」


タクトのスキルが、確かに、成長していた。俺自身は、今回、新しい成長こそなかったが、それでも、確かな手応えを感じていた戦いだった。


依頼を達成し、俺たちはギルドへと戻った。


【依頼達成】

偽冒険者集団の調査・討伐


報酬を獲得しました

・討伐経験値:+80(達成報酬)

・銀貨:15枚

・名声:+20


受付の職員が、丁寧に礼を言った。


「本当に、助かりました。旅人の方々からも、感謝の声が、届くと思います」


ギルドを出ると、日は、既に、傾き始めていた。


「赤牙の残党、か……。ああいう形で、まだ、影響が、残ってたんですね」


ユイの呟きに、俺は、頷いた。


「はい。今日みたいな、単発の事件なら、まだいいですけど……」


俺は、少し、言葉を濁した。実は、戦闘の最中、ある違和感を、覚えていた。


「どうしたんですか、リョウさん」


ユイの問いに、俺は、正直に答えた。


「さっきの連中、誰かに、俺たちの動きを、探るように、頼まれてたような……そんな、雰囲気があった気がして」


「探る……?」


「気のせいかもしれません。でも、念のため、ミラに、聞いてみます」


俺は、ミラを呼び出した。


「最近、俺たちについて、何か、不審な調査や、噂の類は、ありますか」


ミラは、少し間を置いてから、答えた。


「確定的な情報ではありませんが……あなた方の、赤牙及び楽園機関摘発における功績が、一部の界隈で、良からぬ形で、注目を集めているという噂は、耳にしています」


「良からぬ形、というのは」


「その名声、あるいは実力を、快く思わない者たちがいる、ということです。特に、赤牙の残党や、それに類する組織に、恨みを買っている可能性は、否定できません」


その言葉に、俺の中で、小さな警戒心が、静かに、頭をもたげた。


「気をつけた方が、いいですね」


俺の呟きに、ユイとタクトも、それぞれ、真剣な表情で頷いた。


「今のところ、直接的な脅威は、確認されていません。ですが、油断は、しない方がよろしいかと」


ミラの言葉を、俺は、静かに、心に留めた。


宿への帰り道、俺は、改めて、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):17.5日分

────────────────────


数字は、緩やかに、増加していた。だが、今日感じた違和感は、単なる杞憂では、終わらないかもしれない。そんな予感が、俺の中に、確かに、残り続けていた。


「今日は、もう、休みましょう。また、明日、色々、考えましょう」


俺の言葉に、ユイとタクトが、それぞれ頷いた。


宿に戻り、俺は、久しぶりに、静かな夜を、過ごすことにした。だが、頭の片隅には、ミラの言葉が、小さな棘のように、残り続けていた。


もしかすると、この平穏な日々も、そう長くは、続かないのかもしれない。俺は、そんな予感を抱きながら、ゆっくりと、目を閉じた。


翌朝、俺たちは、改めて、ギルドの掲示板を、確認することにした。


「今日は、何にしましょうか」


ユイの問いに、俺は、掲示板を見渡した。以前より、随分と、依頼の種類が、豊富になっている気がした。


「これ、見てください」


タクトが、指差した先には、見慣れない依頼書があった。


【異国交易船・護衛依頼(長期)】

 報酬:応相談(高額)

 難易度:★★★★

 備考:Cランク以上、長期契約可


「異国、って……」


俺は、思わず、その依頼書を、まじまじと見つめた。


「カレナの港から、海を渡って、異国との交易を行う船の、護衛依頼みたいです」


タクトの説明に、俺は、興味を惹かれた。この世界には、まだ、俺たちの知らない、広大な場所が、確かに、存在している。


「今すぐには、無理でしょうけど……いつか、行ってみたいですね」


俺の呟きに、ユイが、微笑みながら頷いた。


「はい。まずは、目の前のことから、一つずつ、ですね」


俺たちは、その日も、いつも通り、依頼をこなしながら、着実に、前へと進み続けた。だが、心の奥底には、これから訪れるであろう、新たな脅威と、まだ見ぬ広い世界への、確かな予感が、静かに、灯り続けていた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

偽冒険者との対決、そして新たな不穏の気配。

異国への扉も、少しずつ見え始めました。

ブックマーク・評価、応援よろしくお願いします!


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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