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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

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第三十五話 帰路

第三十五話です。

どうぞよろしくお願いします。


タクトの危機を脱してから、数日が過ぎた。


俺たちは、宿舎で、久しぶりに、ゆっくりとした朝を迎えていた。


【システム通知】

休息によりHP・MPが全回復しました


窓から差し込む光を浴びながら、俺は、ようやく、身体の芯まで、力が戻ってきたのを感じていた。


朝食の席で、タクトは、以前よりも、幾分か、血色の良い顔をしていた。


「LP、その後、変動ないですか」


俺の問いに、タクトは、自分のステータスを確認しながら、頷いた。


「はい。今のところ、普通に、時間経過分だけ、減ってます。あの日みたいな、急激な変化は、ないです」


「よかった……」


ユイが、心底、安堵したような表情を見せた。


その日、俺たちは、セリアに呼ばれ、これまでの一連の出来事について、正式な報告を受けることになった。


「まず、お伝えしたいことがあります」


セリアの表情は、以前よりも、幾分、柔らかくなっていた。


「先日の一件を受けて、Elysium運営元は、システム全体の総点検を、正式に開始しました。今後、同様の歪みが、他の地域でも発見される可能性があります」


「俺たちに、また、協力してほしい、ということですか」


俺の問いに、セリアは、静かに首を振った。


「いいえ。今回の件は、皆さんの、身を挺した働きによって、大きな前進を遂げました。これ以上、無理をお願いするつもりはありません。ここから先は、私たち、専門の調査チームが、引き継ぎます」


その言葉に、俺は、少し複雑な気持ちを抱きながらも、同時に、確かな安堵も覚えていた。


「タクトさんの件についても、引き続き、こちらで、経過を見守ります。何か変化があれば、必ず、連絡します」


「ありがとうございます」


タクトが、深く頭を下げた。


「それと――」


セリアは、少し表情を和らげ、続けた。


「皆さんは、もう十分すぎるほど、この街のために、働いてくれました。一度、カレナに戻って、ゆっくり、休まれてはいかがですか」


その提案に、俺たちは、顔を見合わせた。


「カレナ、ですか」


「はい。あちらのヴォルグさんも、皆さんのことを、心配していました。落ち着いたら、顔を見せてあげてください」


俺は、この帝都で過ごした日々を、静かに振り返った。ライアスとフィリア、楽園機関の真相、そして、タクトの危機。あまりにも、濃密すぎる時間だった。


「はい、そうします」


俺の言葉に、ユイとタクトも、それぞれ頷いた。


その足で、俺たちは、管理区画にも、別れの挨拶に向かった。フィリアは、まだ、本調子ではなかったが、以前よりも、確かに、血色が良くなっていた。


「本当に、ありがとう」


ライアスが、深く頭を下げた。


「あなたたちがいなければ、私は、罪を償う機会すら、得られなかった。フィリアも、目覚めることが、なかったかもしれない」


「これから、どうするんですか」


俺の問いに、ライアスは、静かに答えた。


「正式な処分については、これから、ギルドと協議していく。だが、どんな結果になろうと、フィリアの傍にいられるよう、最後まで、努力するつもりだ」


フィリアが、ベッドから、小さく手を振った。


「稜さん、また、来てくださいね」


その屈託のない笑顔に、俺は、胸の奥が、温かくなるのを感じた。


「はい、必ず」


管理区画を出ると、俺たちは、宿舎に戻り、荷物をまとめた。カレナへの帰路は、以前来た道を、そのまま辿ることになった。


出発の日、帝都の東門には、見覚えのある顔があった。


「よお、また会ったな」


ガイだった。


「カレナへの荷運びの仕事、また受けたんだ。お前らも、帰るんだろ? 一緒に行くか」


「はい、ぜひ」


俺たちは、ガイの馬車に同乗させてもらうことになった。


出発の直前、クロトが、見送りに来てくれた。


「本当に、帰るのか」


「ああ。一度、カレナで、落ち着こうと思ってる」


「そうか」


クロトは、少し寂しそうな表情を見せたあと、すぐに、いつもの調子に戻った。


「まあ、俺は、こっちに残る。討伐で稼ぐには、帝都の方が、都合がいいからな」


「また、会えるか」


「当たり前だろ。腐れ縁だからな」


俺たちは、固い握手を交わした。


「お前らしいやり方、これからも、続けろよ。俺は、俺のやり方で、お前に負けないくらい、強くなっとくから」


「ああ、楽しみにしてる」


馬車が動き出し、帝都の街並みが、次第に、遠ざかっていった。俺は、窓の外を眺めながら、この街で過ごした、濃密な日々を、静かに振り返っていた。


「帝都、色々、ありましたね」


ユイが、しみじみと呟いた。


「はい。でも、無事に、帰れそうで、よかったです」


俺の言葉に、タクトも、静かに頷いた。


「俺、正直、この旅で、色々な意味で、自分の限界を、思い知らされました。でも――」


タクトは、拳を、軽く握りしめた。


「今度こそ、ちゃんと、強くなりたいです。皆さんに、守られるだけじゃなくて」


「一緒に、頑張りましょう」


俺の言葉に、タクトは、力強く頷いた。


道中、俺たちは、以前訪れた霧の谷を、再び通過した。今回は、特に、大きなトラブルもなく、無事に、通り抜けることができた。


「随分、慣れたもんだな」


ガイが、感心したように言った。


「最初にここを通った時とは、比べ物にならないくらい、頼もしくなった」


「そう言ってもらえると、嬉しいです」


俺は、素直に、その言葉を受け止めた。


道中、俺たちは、久しぶりに、他愛のない会話を交わしながら、旅を続けた。ユイは、看護学生だった頃の話を、もう少し詳しく聞かせてくれた。タクトも、大学に行くはずだった頃の、夢について、少しずつ、語り始めていた。


「実は、俺、建築の勉強、したかったんです。大きな建物、設計してみたくて」


「素敵な夢ですね」


「はい。こっちでの経験、なんだか、少し、その夢に、繋がってる気がするんです。色んな街を見て、色んな建物を見て」


タクトの言葉に、俺は、小さく微笑んだ。この世界での経験が、いつか、現実での彼の未来にも、繋がっていくのかもしれない。そう思うと、俺自身の中にも、確かな希望が、灯るような気がした。


五日目の夕方、俺たちは、ようやく、見慣れたカレナの城壁を、目にした。


「帰ってきた……」


ユイが、感慨深そうに呟いた。


門をくぐると、以前と変わらない、カレナの賑わいが、俺たちを迎えてくれた。だが、その景色は、初めて訪れた時とは、まったく違う色合いで、俺の目に映った。


「まずは、ギルドに、顔を出しましょうか」


俺の提案に、二人が頷いた。カレナのギルド本部に足を踏み入れると、見覚えのある顔が、すぐに、俺たちに気づいた。


「おお、帰ってきたか!」


ヴォルグだった。彼は、俺たちを見るなり、大股で近づいてきた。


「無事だったか。帝都での活躍、報告は聞いている。まさか、あそこまでの騒動になっていたとはな」


「ご心配、おかけしました」


俺の言葉に、ヴォルグは、豪快に笑った。


「心配なんぞしとらん。お前さんたちなら、なんとかするだろうと、思ってたさ」


その言葉に、俺は、少し照れくさくなった。


「ちょうどいい、ガラムの旦那にも、連絡しておこう。始まりの村の方でも、お前さんたちの噂で、持ちきりらしいぞ」


「村の方にも、そんな話が……」


「当然だろう。何せ、この街から、村から、あちこちの支部を巻き込んだ、大事件を、解決に導いたんだからな」


俺は、あの、始まりの村での日々を、久しぶりに、思い出していた。銀葉草の採取、木材の伐採、そして、ミラとの出会い。この物語の、始まりの場所。


「久しぶりに、村にも、顔を出してみたいですね」


俺の呟きに、ユイとタクトが、それぞれ頷いた。


「いい考えだ。少し、休みを取ってから、行ってみるといい」


ヴォルグの言葉に、俺たちは、頷いた。


ギルドを出ると、俺たちは、以前泊まった「灯火亭」へと足を向けた。女将が、俺たちの顔を見るなり、目を丸くした。


「あら、久しぶりだね! 随分、雰囲気が、変わったじゃないか」


「色々、ありまして」


俺の答えに、女将は、豪快に笑った。


「詳しい話は、また今度、聞かせておくれ。今日のところは、ゆっくり、休んでいきな」


俺たちは、それぞれの部屋に荷物を置き、久しぶりに、落ち着いた夜を、迎えることになった。


夕食の席で、俺は、改めて、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):17.4日分

────────────────────


数字は、緩やかに、増加していた。三十日という当初の数字からは、大きく減ってしまったが、それでも、まだ、確かな時間が、残されていた。


「これから、どうしましょうか」


ユイの問いに、俺は、少し考えた。


「少し、ゆっくりしましょう。それから、村にも、顔を出しに行きたいです」


「賛成です」


タクトも、頷いた。


「俺、正直、まだ、実感が、追いついてないところ、あります。帝都で、あんな大きなことに、関わったのに」


「はい。俺も、同じです」


俺は、素直に、自分の気持ちを、口にした。


「でも、少しずつ、整理していきましょう。急ぐことは、ないですから」


窓の外、カレナの夜景が、静かに広がっていた。帝都ほどの規模ではないが、この街にも、俺たちが積み重ねてきた、確かな記憶が、刻まれていた。


「戻ってこられて、よかったです」


ユイの言葉に、俺は、静かに頷いた。


奪わずに生きる道を、俺は、選び続けてきた。その道は、決して、平坦なものではなかった。だが、こうして、仲間とともに、確かな場所へと、帰ってこられたことに、俺は、深い安堵を覚えていた。


「明日から、また、少しずつ、進んでいきましょう」


俺の言葉に、ユイとタクトが、それぞれ、静かに頷いた。カレナの夜は、これまでのどの夜よりも、穏やかに、更けていった。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:25

HP:145/145(全回復) MP:98/98

STR:78 VIT:68

AGI:76 INT:48


延命ポイント(LP):17.4日分

所持金:銀貨41枚

名声:610

満腹度:75/100


次のレベルまで:1,450/9,500


【冒険者ランク】

C


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:疾風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪

携帯品:保存食・簡易野営道具


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の瞳

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・上級

・回避の心得・中級

・風纏・中級

・身体強化・中級

・文献解読・初級

・並列詠唱・上級


【称号】

・一線を越えた者

・世界の歪みを正した者


【フレンド】

・ユイ

・タクト

・クロト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

帝都編の後始末、そして、カレナへの帰還。

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