↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第3章 現実という名の戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/72

第三十四話 引き戻す糸

第三十四話です。

どうぞよろしくお願いします。


「できた……かもしれない」


夜明け前、ライアスの呟きに、研究室にいた俺たちは、一斉に顔を上げた。


「本当ですか」


俺の問いに、ライアスは、憔悴しきった表情ながらも、確かな光を目に宿していた。


「理論上は。だが、実際に発動させてみるまで、確証は持てない。それに――」


ライアスは、机の上に広げられた術式図を、指し示した。


「この規模の術式を発動するには、莫大な魔力供給が必要になる。装置の出力だけでは、恐らく、足りない」


「俺たちの魔力を、使えばいいんじゃないですか」


俺の提案に、ライアスは、少し驚いたように、俺を見た。


「危険が伴う。魔力を根こそぎ持っていかれれば、下手をすれば、命に関わる」


「タクトさんの命が、懸かってるんです。迷ってる時間は、ないと思います」


俺の言葉に、ユイも、力強く頷いた。


「私も、協力します」


タクトが、震える声で、しかし、しっかりとした口調で言った。


「俺のために、そこまで、してくれるんですか」


「当たり前です」


俺は、迷わず、答えた。


【延命ポイント(LP):1.8日分】


タクトのステータスに表示された数字を見て、俺は、改めて、時間がないことを、痛感していた。


「準備を始めよう。装置の周辺に、術式を展開する」


ライアスの指示のもと、俺たちは、管理区画の中央、フィリアのカプセルが安置された部屋へと、機材を運び込んだ。複雑な魔法陣が、床一面に、丁寧に描かれていく。


「リョウ君、ユイ君、この二つの起点に、それぞれ立ってくれ。並列詠唱のスキルがあれば、術式の安定に、大きく貢献できるはずだ」


「分かりました」


俺とユイは、指示された位置に立った。ライアスが、最後の調整を、慌ただしく行っている。


その時――突然、部屋全体が、大きく揺れた。


「な、なんですか、今の……!」


タクトが、驚いたように、周囲を見渡した。俺は、反射的に、看破の瞳を発動させた。


【解析中……】

【残滓の獣(ざんしのけもの)】

LV:40

状態:術式の暴走反応に共鳴、出現


「まずい、これは……」


ライアスが、青ざめた表情で呟いた。


「未完成の術式が、周辺の魔力を、大量に吸い寄せている。その影響で、この地に残る、楽園機関の残留エネルギーが、実体化してしまったようだ」


部屋の隅、床から、黒い靄のような塊が、次第に、獣の輪郭を形作っていった。全身が、無数の光る亀裂に覆われた、異形の姿だった。


「あれを、放っておくと」


「術式そのものが、破壊されかねない。頼む、時間を稼いでくれ! 術式の再構築には、もう少し、時間がいる!」


ライアスの叫びに、俺は、短剣を構えた。


「ユイさん、タクトさん、俺たちで、食い止めます!」


「はい……!」


「俺も……! やります!」


タクトが、震える手で、剣を握りしめた。LPが1.8日という、極限の状態にもかかわらず、彼の目には、確かな決意が宿っていた。


「無理は、しないでください」


「大丈夫です。今は、これが、俺にできることだから」


タクトの言葉に、俺は、それ以上、何も言えなかった。


残滓の獣が、咆哮とともに、こちらへと突進してきた。


「風纏、身体強化、並列で!」


俺は、育った並列詠唱のスキルで、二つの魔法を、滑らかに同時発動させた。以前よりも、遥かに、負担が少ない。


「看破の瞳!」


【解析中……】

【残滓の獣】

弱点:胸部の亀裂、最も光が強い一点

状態:不安定、攻撃のたびに自壊が進行


「胸の、光ってる場所が、弱点みたいです!」


俺の声に、ユイが、素早く反応した。


「私が、引きつけます!」


ユイが、剣に魔力を纏わせ、獣の正面から、斬りかかった。獣の爪が、ユイを掠める。だが、ユイは、怯むことなく、攻撃を続けた。


「タクトさん、後方から、援護を!」


「はい!」


タクトが、震える身体を叱咤するように、剣を振るった。一撃、また一撃と、獣に、着実にダメージを与えていく。


俺は、隙を見て、獣の背後へと回り込んだ。


「今です!」


疾風の双牙を、胸部の亀裂目掛けて、突き立てる。手応えとともに、獣が、甲高い叫び声を上げた。


【HPが減少しました】

145 → 98


獣の反撃が、俺の脇腹を掠めた。痛みはないが、視界の端で、数字が、確かに動いた。


「回復魔法!」


俺は、育った回復魔法・上級を、素早く発動させた。詠唱時間が、以前より、格段に短くなっている。


「まだ、いけます!」


俺たちは、連携しながら、獣の猛攻を、なんとか凌ぎ続けた。だが、獣の動きは、時間が経つにつれ、むしろ、激しさを増していった。


「術式の暴走に、共鳴して、強くなってる……!」


ライアスが、背後で叫んだ。


「もう少しだ! あと少しで、術式が、完成する!」


俺は、視界の端で、タクトの様子を確認した。彼の顔色は、明らかに、悪化していた。それでも、剣を振るう手を、止めようとはしなかった。


「タクトさん、無理は……!」


「まだ、大丈夫です……! 俺が、ここで、諦めるわけには……!」


タクトの一撃が、獣の脚部を捉えた。獣が、体勢を崩す。俺は、その隙を見逃さなかった。


「今しかない!」


俺は、全ての力を、一撃に込めた。看破の瞳で捉えた弱点、そこへ向かって、疾風の双牙を、深く突き立てる。


【残滓の獣を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+380


獣が、黒い靄となって、静かに、霧散していった。


その瞬間、部屋の中央で、ライアスの声が、高らかに響いた。


「完成した!」


魔法陣が、眩い光を放ち始めた。ライアスが、慎重に、術式を起動させる。


「タクト君、こちらへ!」


タクトが、よろめきながら、術式の中心へと歩み寄った。俺とユイは、息を呑んで、その様子を見守った。


光が、タクトの身体を、優しく包み込んでいく。


【システム通知】

延命ポイント(LP)緊急補正処理を実行中……


長い、長い数秒だった。俺は、祈るような気持ちで、その光景を、見つめ続けていた。


やがて、光が、静かに収まっていく。タクトが、ゆっくりと、自分のステータスを確認した。


【延命ポイント(LP):15.6日分】


「戻った……! 戻ってます……!」


タクトの声が、震えていた。完全に、元の水準に戻ったわけではない。だが、絶望的だった数字は、確かに、大きく回復していた。


「よかった……本当に、よかった……!」


ユイが、目に涙を浮かべながら、タクトの肩を抱いた。俺も、詰めていた息を、大きく吐き出した。


「ありがとう、ございました……! みんな、ありがとう……!」


タクトが、崩れ落ちるように、その場に座り込んだ。安堵と、疲労が、一気に押し寄せてきたのだろう。


「よく、頑張ったな」


ライアスが、疲れ果てた様子ながらも、満足そうに微笑んだ。


「これで、完全にとは、いかない。だが、少なくとも、当面の危機は、脱したはずだ」


俺は、改めて、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):17.1日分

────────────────────


戦闘での消費を差し引いても、緩やかな増加が見られた。


【スキルが成長しました】

「並列詠唱・中級」 → 「並列詠唱・上級」


【並列詠唱・上級】

三つ以上の支援魔法を、

同時に維持できるようになる


戦闘の中で、確かに、俺自身も、また一段、成長していた。


「タクトさん、まだ、油断はできません。でも、今日は、本当に、よく頑張りました」


俺の言葉に、タクトは、涙を拭いながら、頷いた。


「はい……今度は、俺も、もっと、強くならないと。守られてばかりじゃ、いられないので」


その言葉に、俺は、小さく笑った。


「一緒に、頑張りましょう」


窓の外、帝都の空が、朝の光に、静かに照らされ始めていた。長い夜が、ようやく、明けようとしていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:25

HP:98/145(未回復) MP:61/98

STR:78 VIT:68

AGI:76 INT:48


延命ポイント(LP):17.1日分

所持金:銀貨41枚

名声:610(+40)

満腹度:40/100


次のレベルまで:1,450/9,500


【冒険者ランク】

C


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:疾風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪

携帯品:保存食・簡易野営道具


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の瞳

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・上級

・回避の心得・中級

・風纏・中級

・身体強化・中級

・文献解読・初級

・並列詠唱・上級(進化)


【称号】

・一線を越えた者

・世界の歪みを正した者


【フレンド】

・ユイ

・タクト

・クロト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

研究の完成、そして残滓の獣との死闘。

タクトの危機、ひとまず脱しました。

ブックマーク・評価、応援よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。