第三十話 再始動
第三十話です。
どうぞよろしくお願いします。
修行を始めて半月が過ぎた頃、セリアから、緊急の呼び出しがあった。
「ガイウスの足取りが、掴めました」
会議室に集まった俺たちに、セリアは、地図を広げながら説明した。
「帝都南部、旧採石場跡地に、彼が拠点を構えている可能性が高いという情報です。周辺で、怪しい人の出入りが、複数、目撃されています」
「フィリアさんの容態は」
俺の問いに、ライアスが、静かに答えた。傷はすでに癒えていたが、その表情には、まだ疲労の色が濃く残っていた。
「装置の修復は、なんとか完了した。だが、あの襲撃の影響で、供給の効率が、以前より落ちている。今のペースでは、いずれ、彼女の状態を維持しきれなくなる」
その言葉に、俺は、拳を握った。ガイウスを、これ以上、野放しにはできない。
「行きましょう。今度は、ちゃんと、対等に戦えます」
俺の言葉に、ユイとタクトが頷いた。クロトも、腕を組みながら、口を開いた。
「俺も、同行する。約束しただろ」
セリアが、少し驚いたように、クロトを見た。
「あなたは……」
「カレナ支部所属、クロトだ。リョウの、まあ、腐れ縁みたいなもんだ」
クロトの軽口に、俺は思わず笑った。
「腐れ縁は、余計だ」
「事実だろ」
俺たちは、ギルド警備部隊とともに、旧採石場跡地へと向かった。荒れ果てた岩場が、夕闇の中に、不気味な影を落としている。
「観察眼……いや、看破の瞳、使います」
俺は、意識を集中させた。育った看破の瞳は、以前よりも遥かに広い範囲を、鮮明に映し出した。
【解析中……】
【???】LV:52
【???】LV:38(複数)
「ガイウスと、その部下たちみたいです。数、結構います」
「無理に正面から挑む必要はない。まずは、包囲を固める」
セリアの指示のもと、俺たちは、慎重に、拠点へと接近した。岩陰から見えたのは、簡素な作業小屋と、その中から漏れる、異様な光だった。
「あの光……」
俺は、看破の瞳を向けた。
【解析中……】
【簡易供給装置】
反応:稼働中
「まさか、もう新しい供給システムを、構築してるんですか」
俺の呟きに、セリアが、険しい表情で頷いた。
「規模は小さいですが……本格的に稼働すれば、被害は、拡大の一途を辿るでしょう」
その時、小屋の中から、ガイウスが姿を現した。俺たちの気配に、既に気づいていたようだった。
「随分と、大所帯で来たものだな」
低く、静かな声だった。だが、以前対峙した時よりも、その声には、余裕が滲んでいるように感じられた。
「ガイウスさん、その装置、止めてください」
俺の言葉に、ガイウスは、僅かに口の端を上げた。
「断る、と言ったら?」
「力ずくでも、止めます」
俺は、疾風の双牙を構えた。ユイとタクト、そしてクロトも、それぞれ武器を構える。
「面白い。前回とは、少し様子が違うようだな」
ガイウスも、大剣を抜き放った。空気が、一瞬で張り詰める。
「行きます!」
俺は、風纏と身体強化を、並列詠唱で同時に発動させた。以前よりも、遥かに滑らかな発動だった。
ガイウスが、地を蹴った。俺は、看破の瞳で、僅かな予兆を捉える。
「タクトさん、右から牽制を!」
「はい!」
タクトの一撃を、ガイウスは、危なげなく受け流した。だが、その一瞬の隙を、俺は見逃さなかった。
「ユイさん、今!」
ユイの剣が、鋭く、ガイウスの側面を狙う。ガイウスは、それを避けながらも、僅かに体勢を崩した。
「その隙、もらった!」
クロトが、鋭い踏み込みで、ガイウスの正面から斬りかかった。四人での連携は、以前よりも、遥かに洗練されていた。
「ほう……」
ガイウスの表情に、初めて、驚きの色が浮かんだ。
「短期間で、随分と、腕を上げたものだ」
「あなたに、負けたままじゃ、いられないので」
俺は、隙を見て、看破の瞳を発動させた。
【解析中……】
【ガイウス】
弱点:右肩、古傷の跡(新規検出)
状態:連戦による疲労蓄積
以前は検出できなかった弱点が、育った看破の瞳によって、初めて浮かび上がった。
「弱点、見つけました! 右肩です!」
俺の声に、クロトが、即座に反応した。
「そこか!」
クロトの一撃が、ガイウスの右肩を、正確に捉えた。ガイウスが、僅かに、苦悶の表情を浮かべる。
「小癪な……!」
反撃の一撃が、俺に迫った。俺は、成長した回避の心得で、紙一重で、その攻撃をかわす。
【回避の心得・中級が発動】
反撃の隙を生成
生まれた隙を、俺は、逃さなかった。
「今です、皆さん!」
四人での一斉攻撃が、ガイウスへと殺到した。彼は、防戦一方になりながらも、なんとか致命傷は避け続けていた。
戦いが長引くにつれ、俺のMPは、着実に減っていった。だが、並列詠唱の効率化と、育った回復魔法・上級のおかげで、以前よりも、遥かに長く戦い続けることができていた。
「回復魔法!」
素早い詠唱で、俺は、自分自身の傷を癒した。以前よりも、格段に速い発動だった。
「まだ、続けられます!」
その言葉に、ガイウスの表情が、初めて、僅かに焦りの色を帯びた。
「たかが数人に、いつまでも足止めされるとは……!」
ガイウスが、大剣を振りかぶった。全力の一撃だった。俺は、看破の瞳で、その軌道を見切り、ぎりぎりで回避する。
【HPが減少しました】
145 → 98
一撃の重さは、以前と変わらない。だが、俺たちは、もう、あの日とは違った。
「セリアさん、装置を!」
俺の叫びに、待機していたギルド職員たちが、簡易供給装置へと駆け寄った。ガイウスが、それを阻止しようと動くが、俺たちが、その進路を塞ぐ。
「行かせません」
俺は、正面から、ガイウスと対峙した。
「お前は、本当に、しぶといな」
「守りたいものが、ありますから」
俺は、育った全てのスキルを、意識に乗せた。並列詠唱で維持する風纏と身体強化、研ぎ澄まされた看破の瞳、そして、確かな回避の技術。
「ここまでだ、ガイウス」
俺は、最後の踏み込みを放った。ガイウスは、それを受け止めようとしたが、疲労と、右肩の負傷が、僅かに、その反応を鈍らせていた。
短剣が、ガイウスの得物を弾き飛ばした。
「くっ……!」
体勢を崩したガイウスに、クロトの一撃が、追い打ちをかける。ガイウスは、ついに、片膝をついた。
「これで、終わりです」
俺の言葉に、ガイウスは、しばらく黙り込んだあと、小さく笑った。
「……見事だ。完敗を認めよう」
背後で、簡易供給装置が、ギルド職員たちの手によって、停止させられた。
【簡易供給装置が停止しました】
その通知とともに、辺りに漂っていた、異様な気配が、静かに消えていった。
「ガイウス、あなたを拘束します」
セリアが、静かに告げた。ガイウスは、抵抗する様子もなく、静かに頷いた。
「これで、いいのかもしれんな……」
その呟きには、これまでの冷たさとは違う、どこか、諦めにも似た響きがあった。
ガイウスが連行されていくのを、俺たちは、静かに見送った。
「終わった……んですかね」
タクトが、疲れたように、その場に座り込んだ。
「多分、まだです。でも、大きな一歩、進んだと思います」
俺の言葉に、ユイとクロトが、それぞれ頷いた。
視界の端に、通知が浮かんだ。
【ガイウスを撃退しました】
【討伐に準ずる貢献経験値を獲得しました】経験値:+450
【スキルが成長しました】
「並列詠唱・初級」 → 「並列詠唱・中級」
戦いの中で、確かに、俺自身も、また一段、成長していた。
「フィリアさんの容態、これで、少しは、落ち着くといいんですけど」
俺の呟きに、ライアスが、静かに歩み寄ってきた。
「ありがとう……本当に、ありがとう」
深く頭を下げるライアスに、俺は、小さく頷いた。まだ、全てが解決したわけではない。だが、確かに、大きな山を、一つ越えることができた。
夕闇に包まれた採石場跡地を、俺たちは、それぞれの疲労を抱えながら、静かに後にした。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:25
HP:98/145(未回復) MP:52/98
STR:78 VIT:68
AGI:76 INT:48
延命ポイント(LP):26.7日分(+0.2)
所持金:銀貨41枚
名声:420(+45)
満腹度:48/100
次のレベルまで:1,070/9,500
【冒険者ランク】
C
【装備】
胴:軽量強化胸当て
武器:疾風の双牙
足:革のブーツ
装飾:魔力の指輪
携帯品:保存食・簡易野営道具
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の瞳
・植物知識・初級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・中級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・中級(進化)
【称号】
・一線を越えた者
【フレンド】
・ユイ
・タクト
・クロト
【パーティ】
・ユイ
・タクト
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
ガイウスとの再戦、そして決着。
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