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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第2章 供給の行方

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27/72

第二十六話 空腹の限界

第二十六話です。

どうぞよろしくお願いします。


管理区画を出てから、俺たちはセリアと共に、今後の対応について話し合いを続けていた。


「引き続き、ライアスの動向は監視します。ですが、表立った摘発は、しばらく見送りましょう」


セリアの言葉に、俺たちは頷いた。ギルド本部への帰り道、俺はふと、視界の端に浮かんだ数値に目を留めた。


【満腹度】

現在:18/100

(危険域)


「あ……」


思わず声が漏れた。考えてみれば、今朝から、まともに食事を取っていなかった。管理区画での出来事に、頭がいっぱいで、空腹すら意識から抜け落ちていた。


「リョウさん、大丈夫ですか」


ユイが、俺の顔を覗き込んだ。


「あ、いえ……満腹度、結構、減ってて」


「私も、そういえば」


ユイも、自分のステータスを確認し、少し顔をしかめた。タクトも同様だった。


「これ、危険域なんですよね。何か起こる前に、食事、取った方がよさそうです」


「はい、急ぎましょう」


俺たちは、大通りに面した食堂へと足を向けた。だが、ちょうどその時、路地の奥から、複数の悲鳴が響いた。


「何かあったみたいです」


俺は、看破の眼を発動させた。


【解析中……】

【暴走個体(脱走モンスター)】

LV:30


「モンスターが、街中に……?」


セリアが、険しい表情で呟いた。


「帝都内の魔物研究施設から、逃げ出した個体かもしれません。急ぎましょう」


俺たちは、悲鳴の方向へと駆けた。路地の奥、大柄な、鎧のような外殻を持つ獣が、逃げ惑う人々を追い立てていた。


「俺たちで、食い止めます!」


俺は、疾風の双牙を構えた。満腹度の低下が気になったが、目の前で困っている人々を、見過ごすわけにはいかなかった。


「ユイさん、タクトさん、いつも通りで!」


「はい!」


「分かりました!」


俺たちは、連携しながら、暴走個体との距離を詰めた。だが、いつもより、動きに僅かな鈍さを感じる。


【満腹度が著しく低下しています】

ステータスに一時的なペナルティが発生します


「これは……」


STR、AGIの数値が、視界の端で、僅かに暗く表示されているのが分かった。空腹が、実際の戦闘力にまで、影響を及ぼし始めていた。


「無理はしないでください。俺が、前に出ます」


俺は、身体強化を発動させ、鈍った動きを、意識して補った。暴走個体が、太い前脚を振り上げ、突進してくる。


「観察眼……いえ、看破の眼!」


【解析中……】

【暴走個体】

弱点:関節部、外殻の継ぎ目


「関節、狙います!」


俺は、風纏で速度を上げ、獣の側面へと回り込んだ。ユイが、正面から注意を引きつけ、タクトが、後方から牽制の一撃を放つ。


「今です!」


俺は、外殻の継ぎ目を、正確に見極め、短剣を突き立てた。手応えとともに、獣が甲高い叫び声を上げる。


【暴走個体を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+210


視界の端に、通知が浮かぶ。


────────────────────

延命ポイント(LP):26.3日分(+0.1)

────────────────────


暴走個体が崩れ落ちると、周囲から、安堵のどよめきが広がった。セリアが、駆け寄ってきた警備隊に、事後処理を指示する。


「助かりました。とはいえ――」


セリアが、俺たちの顔色を見て、少し驚いたように言った。


「皆さん、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか」


「すみません、実は、満腹度がかなり下がってて」


俺の言葉に、セリアは、慌てたように近くの店を指差した。


「すぐそこに、食堂があります。急いで、何か食べてください。今日のところは、もう休んでも構いません」


俺たちは、逃げるように食堂へと駆け込んだ。


「三人分、なんでもいいので、早く……!」


俺の必死な様子に、店主が、驚きながらも、すぐに料理を用意してくれた。運ばれてきた煮込み料理を、俺たちは、無我夢中でかき込んだ。


【満腹度が回復しました】

現在:52/100


「はあ……生き返ります」


タクトが、深く息を吐いた。


「まさか、こんな形で、満腹度の限界を、体感するとは思いませんでした」


ユイの言葉に、俺は苦笑した。


「俺も、正直、油断してました。これからは、もっと気をつけないと」


食事を終える頃には、身体の重さも、随分と軽くなっていた。だが、今日一日の出来事――ライアスとの対峙、そして暴走個体との遭遇――は、俺の中に、確かな疲労を残していた。


「今日は、本当に、色々ありすぎましたね」


ユイが、しみじみと呟いた。


「はい。少し、休む必要が、ありそうです」


俺の言葉に、タクトも、大きく頷いた。


「明日は、少しゆっくりしません? さすがに、詰め込みすぎな気がします」


「賛成です」


俺たちは、宿舎への帰り道、そんな相談をしながら、夕暮れの帝都を歩いた。楽園機関、ライアス、フィリア――解き明かされた真実の重さは、まだ、俺の中で、うまく消化しきれていなかった。


宿舎に戻り、俺は改めて、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):26.3日分

────────────────────


数字は、今日、僅かながら増加していた。だが、その裏にある、この世界の歪みの正体を知った今、単純に喜べる数字ではなかった。


「明日は、ゆっくり休みましょう。色々、整理する時間も、必要だと思います」


俺の提案に、ユイとタクトが、それぞれ頷いた。窓の外、帝都の夜景を見つめながら、俺は、これまでの旅路を、静かに振り返っていた。


奪わずに生きる道を選び続けてきた自分が、今、この世界の根幹に関わる、大きな真実の前に立っている。三十日という、自分自身の時間と向き合いながら、俺はまだ、この物語の、本当の終わりを、知らないままだった。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:20

HP:118/118 MP:78/78

STR:62 VIT:54

AGI:60 INT:38


延命ポイント(LP):26.3日分(+0.1)

所持金:銀貨58枚

名声:360(+15)

満腹度:52/100(回復済み)


次のレベルまで:1,530/8,000


【冒険者ランク】

C


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:疾風の双牙

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の眼

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・中級

・回避の心得・初級

・風纏・初級

・身体強化・初級

・文献解読・初級


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ

・タクト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

満腹度の危険域と、街中での緊急討伐。

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