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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第2章 供給の行方

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22/72

第二十一話 一か月後

赤牙摘発から、およそ一か月が過ぎた。


この世界の時間の流れを思えば、現実ではまだ数日程度のことなのだろう。それでも俺にとっては、確かに、長い一か月だった。


【システム通知】

プレイヤー「リョウ」がLV20に到達しました


日々は、目まぐるしく過ぎていった。討伐と採取を織り交ぜながら、着実に力をつけ、時にはレイアのもとで、新しい魔法の指導を受けた。


【新スキルを習得しました】

「回復魔法・中級」


【回復魔法・中級】

自身、または対象のHPを中程度回復する

MP消費:12


【新スキルを習得しました】

「身体強化・初級」


【身体強化・初級】

一定時間、STR・AGIを底上げする

MP消費:継続


風纏と組み合わせた立ち回りは、以前とは比較にならないほど、洗練されていた。ユイも、剣に魔力を纏わせる技を覚え、タクトも、盾のように使う籠手の扱いに、すっかり熟練していた。


冒険者ランクも、いつしかCにまで上がっていた。


「一人前として扱われる目安、って言われた時のこと、覚えてます」


ユイが、感慨深そうに呟いた。


「はい。あの頃は、まだ自分がここまでやれるとは、思ってなかったです」


装備も、稼いだ資金に見合ったものへと更新していた。俺の武器は、ある依頼の報酬として手に入れた、微かに風の力を宿す短剣――「疾風の双牙」に変わっていた。ユイの剣にも、タクトの籠手にも、それぞれ相応の強化が施されている。


【現在の所持金】

銀貨58枚


日々の積み重ねは、確かな形になっていた。それでも、俺の頭の片隅には、常に一つの疑問が居座り続けていた。


経験値供給の、受け手。


赤牙の摘発から一か月、ヴォルグたちの調査は、少しずつ進んでいるという話だったが、決定的な情報は、まだ俺たちのもとには届いていなかった。


その日の午後、俺たちはギルドに呼び出された。応接室には、ヴォルグが、以前より一層疲れた表情で待っていた。


「待たせたな。ようやく、話せる段階まで来た」


ヴォルグは、机の上に、分厚い資料を広げた。


「赤牙から押収した記録の解読が、進んだ。経験値供給――厳密には、討伐によって得たLPの増加分を、特定のルートを通じて、まとめて誰かに流していた仕組みが、明らかになった」


「誰が、受け取ってたんですか」


俺の問いに、ヴォルグは、少し言葉を選ぶように黙り込んだ。


「一個人ではない。恐らく、複数の組織が絡んだ、大規模な仕組みだ。そして、その中心にあるのが……帝都に本部を置く、大手の商業ギルド、『黄金の羅針盤』の関係先だという可能性が浮上している」


帝都。俺は、その言葉を、頭の中で繰り返した。カレナよりもさらに大きな、この世界の中心とも言える場所があるという話は、以前、ガイから聞いたことがあった。


「黄金の羅針盤って、有名な組織なんですか」


「ああ。表向きは、この世界全域に流通網を持つ、巨大な商業組織だ。だが、今回の件が事実なら、その裏で、規約違反すれすれの仕組みを、組織的に運用していることになる」


ヴォルグは、資料を閉じ、俺たちを見据えた。


「正直に言う。この件は、俺たちカレナのギルド支部だけで、片付けられる規模を超えている。帝都本部への正式な報告と、合同調査が必要になる」


「俺たちは、これから、どうすればいいんですか」


「お前さんたちの実力と実績を鑑みて、一つ、提案がある」


ヴォルグは、俺たちを、真剣な眼差しで見つめた。


「帝都行きの、合同調査団に、正式に加わってみないか。もちろん、危険は伴う。だが、ここまでの経緯を知る者として、お前さんたちの視点は、貴重だと思っている」


その提案に、俺は、ユイとタクトと顔を見合わせた。


帝都――この世界の、さらに奥深くへ。俺たちの日常は、また一つ、大きな転換点を迎えようとしていた。


「少し、考える時間、いただけますか」


「もちろんだ。急ぐ話ではない」


応接室を出ると、俺たちは、しばらく無言のまま、街を歩いた。


「帝都、か……」


タクトが、ぽつりと呟いた。


「行ってみたい気持ちも、正直あります。でも、危険も大きいですよね、きっと」


「はい。俺たちの実力じゃ、まだ足りない部分も、多いと思います」


ユイの言葉に、俺は頷いた。だが同時に、心のどこかで、確かな衝動もあった。


奪わずに生きる道を選び続けてきた俺にとって、この経験値供給という仕組みは、看過できないものだった。誰かの時間が、意図的に、悪意ある形で吸い上げられている――その事実の中心に、少しでも近づきたいという気持ちが、確かにあった。


「俺は、行ってみたいと思ってます」


俺の言葉に、ユイとタクトが、それぞれ俺を見た。


「奪わずに生きる道を、俺は選んできました。でも、その一方で、意図的に奪い続けてる誰かがいるなら――見過ごすのは、俺の性に合わない気がして」


「私も、同じ気持ちです」


ユイが、静かに、しかし確かな声で言った。


「俺も、行きます。二人だけに行かせるわけには、いかないですし」


タクトの言葉に、俺は、少し胸が熱くなるのを感じた。この一か月で積み上げてきたのは、レベルやスキルだけではない。互いへの信頼も、確かに育っていた。


ギルドに戻り、俺たちはヴォルグに、正式に合同調査団への参加を伝えた。


「よく決めてくれた。準備が整い次第、帝都への出発になる。数日の猶予があるから、身辺を整えておいてくれ」


ヴォルグの言葉に、俺たちは頷いた。応接室を出ると、夕暮れの光が、街を橙色に染めていた。


宿への帰り道、俺は、自分のステータスを確認した。


────────────────────

延命ポイント(LP):26.4日分

────────────────────


一か月分の活動を経て、数字は、確かに減っていた。討伐による微増を重ねてもなお、自然減少の重みには、及ばない。三十日という数字が、もう三分の一近く、削れている計算になる。


それでも、俺の中に、後悔はなかった。この一か月で見てきたもの、出会った人々、そして、これから向かう先にあるであろう、大きな真実。それらすべてが、今の俺にとって、確かな意味を持っていた。


「帝都、どんな場所なんでしょうね」


ユイが、夕焼けを見上げながら呟いた。


「行けば、分かります」


俺の言葉に、ユイとタクトが、それぞれ小さく笑った。三十日という数字は、まだ確かに動き続けている。だが今、俺たちの前には、これまでとは比べ物にならないほど大きな、新しい目標が、はっきりと見え始めていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:20(LV13 → LV20)

HP:118/118(+54) MP:78/78(+36)

STR:62(+24) VIT:54(+23)

AGI:60(+23) INT:37(+15)


延命ポイント(LP):26.4日分(一か月の活動による減少)

所持金:銀貨58枚

名声:312(+130)

満腹度:68/100


次のレベルまで:1,140/8,000


【冒険者ランク】

C(NEW、D → C)


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:疾風の双牙(更新)

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の眼

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・回復魔法・中級(進化)

・回避の心得・初級

・風纏・初級

・身体強化・初級(NEW)


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ

・タクト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

第2章「供給の行方」、スタートです。

一か月分の成長と、帝都という新しい目標。

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