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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第1章「三十日のログイン」

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第二十話 再会

第二十話です。

どうぞよろしくお願いします。


赤牙摘発の一件から、さらに数日が過ぎた。


俺たちの日常は、少しずつ、けれど確実に密度を増していた。討伐、採取、時には魔術師レイアのもとで新しい魔法の指導を受けることもあった。


「そろそろ、次の段階に進んでもいい頃合いだね」


レイアの塔で、俺はそう告げられた。


【新スキルを習得しました】

「風纏(かぜまとい)・初級」


【風纏・初級】

一時的に自身の敏捷性を強化する

発動中、MPを継続的に消費する


「支援魔法の中でも、実戦向きなやつさ。うまく使えば、立ち回りの幅がぐっと広がるよ」


ユイも、同じ頃、攻撃補助系の魔法を習得していた。タクトも、剣術の腕を着実に上げ、簡易的な魔力付与の技を覚え始めていた。


【システム通知】

プレイヤー「リョウ」がLV13に到達しました


レベルアップの通知も、以前ほどの驚きを伴わなくなっていた。それでも、確かな成長の実感は、日々の中で積み重なっていた。


ある日の午後、俺たちはギルドの掲示板の前で、次の依頼を選んでいた。


「あの、ちょっと聞いてもいいですか」


近くにいた顔見知りの冒険者が、声をかけてきた。


「最近、東の闘技場で、すごい成績残してる新顔がいるって、知ってます? まだEランクなのに、格上を次々倒してるとかで」


「そんな人が」


「名前は、確か……クロト、とかいう人だったかな」


その名前に、俺は思わず息を止めた。


「クロト……」


聞き間違いであってほしいと、心のどこかで願った。だが、その響きは、俺の記憶に深く刻まれた名前と、寸分違わず一致していた。


「知り合いですか」


ユイの問いに、俺は少し間を置いてから答えた。


「はい。中学の頃の、同級生です」


その日の夕方、俺は一人で、東の闘技場へと足を運んだ。ユイとタクトには、少し一人で確かめたいことがあると伝えて、別行動を取った。


決闘場は、以前ミラから聞いていた通り、正式な手続きを踏んだ、LPのやり取りが発生しない安全な施設だった。観客席には、それなりの人だかりができている。


視線を向けた先、闘技場の中央で、一人の男が、格上の相手を圧倒していた。


【解析中……】

【クロト】

LV:24


見覚えのある顔立ちが、成長した体格の中に、確かに残っていた。中学の頃より、遥かに引き締まった身体つき。冷静に、けれど容赦なく、相手を打ち負かしていくその姿は、俺の知るクロトとは、どこか違って見えた。


試合が終わり、クロトが控室へと戻る途中、俺は思い切って声をかけた。


「クロト」


足を止め、振り返った男の顔に、一瞬、戸惑いが浮かんだ。


「……お前、まさか、稜か?」


その呼び方に、俺は小さく頷いた。


「久しぶり」


クロトは、しばらく俺を見つめたあと、ふっと小さく笑った。


「驚いたな。まさか、こんなところで会うとは」


「お前も、こっちにログインしてたんだな」


「ああ。もう、随分経つ」


俺たちは、闘技場近くの茶屋に移動し、向かい合って座った。中学以来、まともに言葉を交わすのは、初めてのことだった。


「お前、LV24なんだな。すごい成長速度だ」


俺の言葉に、クロトは、少し誇らしげな表情を見せた。


「効率よくやってるだけだ。討伐に絞って、無駄なく積み上げてる」


「討伐、中心なんだな」


「当たり前だろ。それが、一番早い」


クロトの言葉には、迷いがなかった。俺は、少し言葉に詰まった。


「LPのこと、気にならないのか。討伐すると、誰かの分を、削ることになるって」


その問いに、クロトは、少し意外そうな顔をした。


「気にしてどうする。俺だって、余命宣告されて、こっちに来た身だ。悠長なこと言ってる余裕、ないんだよ」


「それは、俺も同じだ」


「だったら、分かるだろ。強くならなきゃ、生き残れない。誰かの分を使ってでも、な」


俺とクロトの間に、明確な考え方の違いが、静かに横たわっていた。それは、単なる価値観の相違というより、この世界で"生きる"ということへの、根本的なアプローチの違いだった。


「お前は、稜は、どうやって、ここまで来たんだ」


クロトの問いに、俺は少し考えてから答えた。


「できるだけ、誰かのLPを奪わないやり方で。採取とか、生産とか。時々、討伐もするけど、極力、避けてる」


クロトは、しばらく黙り込んだあと、小さく笑った。


「相変わらず、お前は変わってるな。中学の頃から、そうだった」


その言葉に、意外な親しみがあった。中学時代の記憶が、少しだけ、俺の中で温かい色を帯びた。


「これからも、そのやり方、続けるつもりか」


「ああ。今のところは」


「効率悪いだろ、絶対」


「悪いよ、めちゃくちゃ」


俺が素直に認めると、クロトは声を上げて笑った。


「まあ、お前らしいよ。俺は、俺のやり方でいく。お前は、お前のやり方でいけばいい」


その言葉には、否定でも肯定でもない、ただ事実として受け止める響きがあった。俺たちは、同じ世界に、まったく違う道筋で、それぞれ生き延びようとしている。


「また、会うことあるかもな」


クロトは、席を立ちながら言った。


「この街、そんなに広くないし」


「ああ。その時は」


俺たちは、それ以上多くを語らず、別れた。夕暮れの街を歩きながら、俺は、複雑な感情を抱えていた。かつての同級生と、こんな形で再会するとは、想像もしていなかった。


宿に戻ると、ユイとタクトが、心配そうな顔で待っていた。


「どうでした、クロトさんとは」


「思ってたより、普通に話せました。ただ――」


俺は、クロトとの会話の内容を、二人に伝えた。討伐中心の生き方、迷いのない選択、そして、俺との明確な違い。


「私たちとは、違う道を選んでる人なんですね」


ユイの言葉に、俺は頷いた。


「はい。でも、どっちが正しいとか、そういう話じゃない気がします。それぞれが、それぞれの状況で、選んでるだけで」


「リョウさんは、ぶれないですね」


タクトの言葉に、俺は少し照れくさくなった。


「ぶれてないわけじゃないです。ただ、今のところは、この道を、信じてみたいだけで」


窓の外、カレナの夜が、静かに更けていく。三十日という数字は、まだ確かに頭の中で動き続けている。だが今、俺の世界は、あの病室にいた頃とは比べ物にならないほど、広がっていた。奪わない道を選ぶ自分と、奪う道を選んだクロト。そのどちらもが、この世界で、確かに生き延びようとしている。


「明日も、依頼、探しましょうか」


俺の言葉に、ユイとタクトが、それぞれ頷いた。三十日というタイムリミットの中で、俺はまだ、自分なりの答えを探し続けていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:13(LV11 → LV13)

HP:64/64(+8) MP:42/42(+6)

STR:38(+5) VIT:31(+4)

AGI:37(+5) INT:22(+4)


延命ポイント(LP):29.3日分

所持金:銀貨2枚・銅貨30枚

名声:182(+6)

満腹度:52/100


次のレベルまで:310/3200


【冒険者ランク】

D


【装備】

胴:軽量強化胸当て

武器:魔力を帯びた短剣

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の眼

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・小回復魔法・初級

・回避の心得・初級

・風纏・初級(NEW)


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ

・タクト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

かつての同級生、クロトとの再会。

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