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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第1章「三十日のログイン」

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第十八話 赤牙の正体

変異狼の一件から数日、俺たちのもとに、ギルドから正式な呼び出しがあった。


「わざわざ、すみません」


カレナ支部の応接室に通されると、そこには、以前の巡回任務を指揮していたギルド職員――名をヴォルグという初老の男が、険しい表情で待っていた。


「いや、こちらこそ、急に呼び立ててすまんな。単刀直入に言う。あの夜、夜市の路地で目撃した連中について、調査を進めている」


ヴォルグは、机の上に、簡素な資料を広げた。


「お前さんたちが見た人影、恐らく赤牙の関係者だ。ここ最近、夜市周辺で、経験値やLPに関わる不審な取引をしている、という報告が複数上がっている」


やはり、情報屋の老人が言っていた噂は、根も葉もない話ではなかったらしい。俺は思わず、身を乗り出した。


「証拠は、あるんですか」


「決定的なものは、まだない。だからこそ、慎重に動く必要がある。もし、お前さんたちに構わなければ――もう少し、この件について、動いてもらえないか」


正式な依頼という形ではなく、あくまで内密の協力要請だった。俺たちは顔を見合わせ、頷いた。


「分かりました。俺たちにできることがあれば」


ヴォルグは、少しだけ表情を緩めた。


「恩に着る。ただし、無理は禁物だ。危険を感じたら、すぐに退け」


その日から、俺たちは通常の依頼をこなしながら、赤牙の動向にも気を配るようになった。


日々は、目まぐるしく過ぎていった。討伐、採取、調合、時には隣町からの荷運びの護衛――積み重ねた依頼の数は、数えきれないほどになっていた。


【システム通知】

プレイヤー「リョウ」がLV9に到達しました


「冒険者ランクが上昇しました」の通知も、いつしかDランクにまで届いていた。数日分の依頼報酬が積み重なり、所持金は銅貨1050枚を超えていた。あまりの枚数に持ち運びが難しくなり、俺たちはギルド併設の両替所で、まとめて銀貨へと両替した。


【両替が完了しました】

銅貨1050枚 → 銀貨10枚、銅貨50枚

(100銅貨=銀貨1枚換算)


装備も、稼いだ資金に見合ったものへと、少しずつ更新していった。カレナの武具店で見つけた、微かな魔力を帯びた短剣は、銀貨6枚と銅貨50枚。ユイは、俊敏さを高める軽鎧を、タクトも、自分の戦い方に合った頑丈な籠手を、それぞれ買い揃えていた。


【鋭利な鉄の短剣を売却しました】

【魔力を帯びた短剣を購入しました】

銀貨6枚、銅貨50枚を支払いました


所持金は、銀貨3枚と銅貨50枚になった。


「これで、少しは様になってきましたかね」


タクトが、新しい籠手を確かめるように、拳を握った。


「はい。最初の頃と比べると、随分、逞しくなりました」


俺自身も、鏡で自分の姿を見るたびに、あの病室にいた頃とは、まるで別人のような自分に驚かされることがあった。


そんなある日、俺たちは、夜市の外周を歩いていた際、見覚えのある人影を見つけた。以前絡んできた、赤牙のリーダー格の男だった。だが、今日は様子が違った。人目を避けるように、路地の奥へと急いでいる。


「ちょっと、追ってみましょうか」


ユイの提案に、俺たちは頷き、距離を保ちながら後を追った。看破の眼を発動させ、周囲の気配を探る。


【解析中……】

【???】LV:22


男は、夜市のさらに奥、廃屋のような建物の中へと入っていった。俺たちは物陰から、その様子を窺った。


「中、覗いてみます」


俺は慎重に、窓の隙間から中を確認した。薄暗い室内に、複数の人影があった。テーブルの上には、見慣れない書類の束と、小さな結晶のようなものが並んでいる。


「あれは……」


「経験値供給の、記録簿だ。今月分の取り分は、こっちで管理してる」


微かに聞こえてきた声に、俺は息を呑んだ。経験値供給という言葉が、明確に、この場所での違法な取引を示唆していた。


「新入りを何人か、うまく言いくるめて、討伐要員に組み込んだ。取り分は、いつも通り、俺たちが七、残りは――」


その先の言葉は、風の音にかき消されて聞き取れなかった。だが、十分な手がかりだった。


その時、突然、背後から声がかかった。


「おや、また会ったな」


俺たちは、弾かれたように振り返った。そこには、あの赤牙のリーダー格の男とは別の、もう一人の男が立っていた。


「盗み聞きとは、感心しねえな」


視界に、解析結果が浮かぶ。


【解析中……】

【???】LV:28


これまで対峙した中でも、群を抜いて高いレベルだった。俺は思わず身構えたが、男は、意外にも攻撃的な態度は見せなかった。


「安心しな、今、ここで暴れる気はねえよ。ただ――」


男は、値踏みするように、俺たちを見た。


「お前さんたち、随分、俺たちのことを嗅ぎ回ってるみたいだな。ヴォルグの旦那に、頼まれでもしたか」


図星を突かれ、俺は言葉に詰まった。男は、それだけで十分だとばかりに、ふっと笑った。


「まあいい。忠告してやる。あんまり深入りすると、痛い目を見るのは、お前さんたちの方だ」


「LPの供給、って何をしてるんですか」


俺は、思い切って踏み込んだ。男の表情が、一瞬、揺らいだ。


「……口の減らないガキだ」


男は、腰の武器に手をかけかけたが、途中で止めた。


「今日のところは、見逃してやる。だが、次は分からんぞ」


そう言い残し、男は建物の中へと戻っていった。俺たちは、しばらくその場から動けずにいた。


「今の話……」


タクトが、震える声で言った。


「経験値供給、って言ってましたよね。もしかして、赤牙が、新人を意図的に集めて、彼らの討伐分を、誰かに供給してるってことですか」


「多分、そうだと思います。でも、はっきりした証拠は、まだ掴めてません」


俺たちは、その足でギルドへと向かい、ヴォルグに今夜のことを報告した。


「経験値供給、か……」


ヴォルグは、険しい表情で腕を組んだ。


「もしそれが事実なら、規約の抜け道を利用した、組織的な搾取行為ということになる。これは、俺の一存だけでは、片付けられん話だ」


「これから、どうなるんですか」


「上に報告し、正式な調査を進める。お前さんたちの証言は、貴重な手がかりだ。だが――」


ヴォルグは、俺たちを、真剣な眼差しで見た。


「これ以上、単独で深入りするのは、やめておけ。相手は、組織立って動いている。一歩間違えば、命に関わる」


その忠告に、俺たちは頷いた。


ギルドを出ると、夜はすっかり更けていた。


「なんだか、思ってたより、大きな話になってきましたね」


ユイが、疲れたように呟いた。


「はい。でも、少しずつ、真相に近づいてる気がします」


俺の言葉に、タクトも頷いた。


「俺たちだけじゃ、まだ全部は解決できないかもしれないですけど……このまま、見過ごすわけにはいかないです」


夜市の灯りが、遠くに揺れている。三十日という数字は、まだ確かに頭の中で動き続けている。だが今、俺の意識は、その数字だけでなく、この世界の裏側に潜む、大きな歪みへと、確かに向き始めていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:9(LV7 → LV9)

HP:48/48(全回復) MP:31/31

STR:28 VIT:23

AGI:27 INT:16


延命ポイント(LP):29.4日分

所持金:銀貨3枚・銅貨50枚

名声:156

満腹度:72/100


次のレベルまで:210/1900


【冒険者ランク】

D(NEW、E → D)


【装備】

胴:強化革の鎧

武器:魔力を帯びた短剣(更新)

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の眼

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・小回復魔法・初級

・回避の心得・初級


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ

・タクト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

赤牙の裏側、そして「経験値供給」という不穏な言葉。

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