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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第1章「三十日のログイン」

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第十七話 夜市の入口

「情報屋、また探してみませんか」


朝食の席で、俺がそう切り出すと、ユイとタクトが顔を上げた。


「昨日の人、ですよね。夜市について、詳しく聞けそうな」


「はい。あの後、色々考えたんですけど、もう少し具体的な情報がないと、動きようがない気がして」


俺たちは食事を終えると、昨日老人と出会った茶屋へと向かった。だが、席は空いており、老人の姿はどこにもなかった。


「今日は、いないみたいですね」


店主に尋ねてみると、素っ気ない返事が返ってきた。


「ああ、あのじいさんか。気まぐれでね、毎日来るわけじゃないよ」


肩透かしを食らった俺たちは、仕方なく、ギルドへと足を向けることにした。とりあえず、今できることをやろうという結論だった。


掲示板を眺めていると、一枚の依頼書が目に留まった。


【夜市周辺の警備補助(夜間)】

 報酬:討伐経験値(中)/銅貨120枚

 難易度:★★

 備考:ギルド公認の巡回任務


「これ……」


タクトが、驚いたように呟いた。まさに、俺たちが気にしていた場所そのものだった。


受付で詳細を確認すると、夜市周辺で、不審な動きをする者や、トラブルが増えているため、ギルドが公式に警備人員を募集しているとのことだった。


「これなら、堂々と夜市周辺に行けますね」


俺の言葉に、ユイとタクトも頷いた。俺たちは迷わず、依頼を受注した。


【クエスト受注】

夜市周辺の警備補助(夜間)


日中は、体力を温存するため、比較的軽い依頼をいくつかこなした。行商人の荷物運びを手伝い、街の外れで薬草を採取し、夕方には、依頼で得た成長経験値と討伐経験値の両方が、着実に積み上がっていた。


日が暮れ始めた頃、俺たちは指定された集合場所へと向かった。夜市の入口付近、他にも数組のパーティが、同じ依頼で集まっていた。


「今夜の巡回は、二人一組、あるいは複数人での行動を基本としてください」


ギルド職員の指示のもと、俺たちは夜市の外周を巡回する班に割り当てられた。


「じゃあ、行きましょうか」


夜市は、昼間の大通りとはまったく違う顔を見せていた。等間隔に灯る提灯の明かりが、通りを橙色に照らし出す。露店の数は少ないが、その分、どこか秘密めいた雰囲気が漂っていた。


「観察眼、使ってみます」


俺は意識を集中させた。


【解析中……】

【周辺環境】

不審な反応:複数検出(詳細不明)


「何か、あるみたいですけど、はっきりしないですね」


俺たちは、指示されたルートに沿って、外周をゆっくりと歩いた。露店の一つ一つを、それとなく観察しながら進む。


しばらく歩くと、路地の奥、人目につきにくい場所に、小さな屋台のようなものがあるのに気づいた。看板もなく、フードを被った人物が、静かに立っている。


「あそこ、なんでしょう」


「見に行ってみましょうか。あくまで、警備の範囲内で」


俺たちが近づくと、フードの人物が、こちらに気づいて顔を上げた。


「おや、警備の巡回かい。今夜は熱心だね」


その声には、聞き覚えがあった。昨日の情報屋の老人だった。


「あなた……」


「奇遇だね、坊やたち。まさか、こんな形で会うとは」


老人は、屋台の上に並べられた、いくつかの小瓶を、ちらりと見た。


「安心しな、俺が売ってるのは、ただの怪しげな薬さ。規約に触れるようなものは、扱っちゃいない」


「昨日の話、もう少し詳しく聞けませんか」


俺の問いに、老人は少し考える素振りを見せた。


「そうさなあ……ちょうどいい。あっちを見てみな」


老人が視線で示した先、路地のさらに奥、暗がりの中に、複数の人影が、何やらひそひそと話し込んでいるのが見えた。


観察眼を発動させると、視界に反応が浮かんだ。


【解析中……】

【???】LV:22

【???】LV:19


かなりレベルの高い相手だった。俺は思わず、身構えた。


「あれが、噂の連中かもしれん。だが、坊やたちが今、迂闊に手を出すのは、お勧めしないねえ」


老人はそう言うと、屋台をたたむように、荷物をまとめ始めた。


「今夜は、これくらいにしておこう。長居は、俺の性分に合わない」


「待ってください、まだ――」


「また会えたら、話してやるよ。それより――」


老人は、路地の奥を、もう一度見やった。


「あっちの連中、こっちに気づいたみたいだ。坊やたちも、気をつけな」


その言葉と同時に、暗がりの人影の一つが、こちらに視線を向けた。俺は息を呑んだ。だが、次の瞬間、複数の足音とともに、路地の奥から、大きな唸り声が響いた。


「な、なんですか、今の……!」


タクトが、驚いたように後ずさった。人影たちが、慌てたように散り散りになって逃げていく。その直後、路地の奥から、巨大な影が、ゆっくりと姿を現した。


【解析中……】

【変異狼・アルファ】

LV:25


これまで遭遇したどの魔物より、遥かに大きく、禍々しい姿をしていた。夜市に、モンスターが迷い込んできたのか、あるいは、何かに引き寄せられたのか――理由は分からなかったが、目の前の脅威は本物だった。


「まずい、あれは……!」


ギルド職員らしき声が、周囲から響いた。近くにいた他のパーティも、一斉に警戒態勢を取る。


「俺たちも、援護に入ります!」


俺は叫びながら、短剣を構えた。ユイとタクトも、俺の両脇に並ぶ。


「三人で、連携でいきます! ユイさんは側面から、タクトさんは俺の後方支援を!」


「はい……!」


「わ、分かりました!」


変異狼が、地を蹴って突進してきた。俺は横に跳んでかわそうとしたが、想像以上の速さに、完全にはかわしきれず、肩を掠める。


【HPが減少しました】

33 → 21


痛みはない。だが、視界の端に浮かぶ数字が、確かな脅威を伝えてくる。俺は観察眼を発動させた。だが、これまでとは何かが違った。意識を集中させた瞬間、視界に映る情報の密度が、明らかに増している。


【スキルが成長しました】

「観察眼」 → 「看破の眼」


【看破の眼】

対象のステータス、弱点に加え、

簡易的な状態異常や、隠された特性の

一部を看破できるようになる


【解析中……】

【変異狼・アルファ】

弱点:後頭部、一瞬の隙のみ

状態:興奮状態(通常より攻撃頻度上昇)


「弱点、後頭部です! でも、隙が一瞬しかないみたいで……!」


「私が、引きつけます!」


ユイが叫びながら、側面から斬りかかった。変異狼の意識が、一瞬、ユイへと向く。


「今です、リョウさん!」


俺は地を蹴り、変異狼の背後へと回り込んだ。何度も攻撃をかわし続けてきた経験が、今この瞬間、確かな形を結んだ。


【新スキルを習得しました】

「回避の心得・初級」


【回避の心得・初級】

戦闘時、攻撃を回避する成功率が上昇する


新しい感覚が、身体に馴染む間もなく、俺は変異狼の後頭部目掛けて、短剣を突き立てた。


――手応えがあった。変異狼が、甲高い咆哮を上げる。


「もう一撃、いけます!」


タクトが、後方から援護の一撃を放つ。俺はもう一度、後頭部へと刃を振るった。


【変異狼・アルファを討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+320


とてつもなく大きな数字だった。俺は思わず、その場に立ち尽くした。


視界の端に、続けて通知が浮かぶ。


────────────────────

延命ポイント(LP):29.1日分(+0.6)

────────────────────


「LP、増えて……」


これまでの雑魚討伐とは、比較にならないほどの増加量だった。強大な魔物を討伐すれば、それだけLPへの還元も大きくなる――そういう仕組みらしかった。


【レベルアップ!】

LV:6 → LV:7

(次のレベルまで:96/1300)


ユイとタクトも、同じように大きく成長を遂げていた。三人で顔を見合わせ、俺たちは互いの無事を確認し合った。


「あ、あの……大丈夫でしたか、みなさん」


いつの間にか戻ってきていた老人が、興味深そうに俺たちを見ていた。


「変異狼のアルファ種を、Eランクの新人が三人で仕留めるとはねえ。大したもんだ」


「あの、さっきの人たち……逃げていった人たちは」


俺の問いに、老人は肩をすくめた。


「さあな。俺にも、そこまでは分からん。ただ――」


老人は、少し声を潜めた。


「今夜、ここで見たものは、坊やたちが思ってる以上に、意味のあることかもしれん。夜市の裏で何かが動いてる証拠が、また一つ増えたってわけだ」


ギルド職員が駆けつけ、俺たちの討伐を確認すると、通常の警備任務の報酬に加えて、緊急対応としての追加報酬が提示された。


【依頼達成】

夜市周辺の警備補助(夜間)

緊急討伐ボーナス:変異個体討伐


報酬を獲得しました

・討伐経験値:+150(達成報酬)

・銅貨:300枚

・名声:+30


「今夜のところは、これで解散にしよう。詳しい調査は、ギルド側でも改めて行う」


ギルド職員の言葉に、俺たちは頷いた。夜市の灯りの下、俺は改めて、自分のステータスを確認した。


LPは、まだ29.1日。想定外の増加ではあったが、この数字が本当の意味を持つのかどうか、俺にはまだ、判断がつかなかった。


「今日は、色々ありすぎましたね」


ユイが、疲れたように、それでいてどこか興奮した声で言った。


「はい。でも、少しだけ、この街の裏側に、近づけた気がします」


タクトの言葉に、俺は頷いた。奪わずに生きる道を選び続けてきた俺が、今夜、久しぶりに大きな討伐をした。その事実は、単純に喜べるものではなかった。だが同時に、この世界の裏で動いている何かに、俺たちは確かに一歩、近づいたのかもしれない。


夜市の灯りが、静かに揺れている。老人の後ろ姿が、雑踏の中へと消えていくのを見送りながら、俺は、これから先に待つものへの予感を、胸の奥に刻み込んだ。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:7(LV6 → LV7)

HP:21/38(討伐後、未回復) MP:22/27

STR:22 VIT:18

AGI:22 INT:14


延命ポイント(LP):29.1日分(+0.6)

所持金:銅貨630枚(+300)

名声:109(+30)

満腹度:45/100


次のレベルまで:96/1300


【冒険者ランク】

E


【装備】

胴:強化革の鎧

武器:鋭利な鉄の短剣

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪


【所持スキル】

・痛覚遮断

・看破の眼(観察眼から進化)

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・小回復魔法・初級

・回避の心得・初級(NEW)


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ

・タクト


【パーティ】

・ユイ

・タクト

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

夜市での激戦、そして情報屋の言葉。

物語が、大きく動き始めました。

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