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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第1章「三十日のログイン」

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第十五話 三人目

掲示板を三人で見比べていると、タクトが遠慮がちに口を開いた。


「あの、俺、まだ何のスキルも持ってなくて。足手まといに、なりませんか」


「そんなことないと思います。俺たちも、最初はみんな、そうでしたから」


俺の言葉に、ユイも頷いた。


「私も、リョウさんに何度も助けてもらいました。一人でやるより、誰かと一緒の方が、絶対にいいです」


タクトは、少し安堵したような表情を見せた。


「ありがとうございます……。えっと、俺は、Fランクなので、受けられる依頼、あまり多くなくて」


「じゃあ、まずはFランクでも受けられる依頼から、一緒にやりましょうか」


俺たちは掲示板の中から、比較的難易度の低い依頼を選んだ。


【薬草園の見回り補助】

 報酬:成長経験値(小)/銅貨40枚

 難易度:★


カレナの外れにある薬草園で、害獣による被害が出ているため、見回りを兼ねた対応をしてほしいという依頼だった。俺たちは受注を済ませ、街の外れへと向かった。


道中、タクトは少しずつ、自分のことを話してくれた。カレナに来たのはつい昨日のことで、まだ右も左も分からないまま、街を歩いていたところを、赤牙に目をつけられたのだという。


「一人で来たんですか」


「はい。頼れる人もいなくて……正直、心細かったです」


薬草園に着くと、管理人の男が、疲れた様子で出迎えてくれた。


「最近、夜になると、角兎の亜種みたいなやつが出てきてな。育ててる薬草を、片っ端から食い荒らしていくんだ」


「昼間は、大丈夫なんですか」


「ああ、昼は姿を見せない。ただ、巣が近くにあるはずなんだが、俺一人じゃ、探しに行く勇気が出なくてな」


俺は観察眼を発動させ、薬草園の周囲を確認した。


【解析中……】

【周辺環境】

生体反応:微弱(一箇所に集中)


「あっちの、茂みの奥っぽいです」


俺たちは慎重に、示された方向へと進んだ。しばらく歩くと、地面に掘られた小さな穴を見つけた。


「多分、ここが巣ですね」


タクトが、少し緊張した面持ちで頷いた。


「俺、何をすればいいですか」


「まずは、様子を見ましょう。無理に戦う必要はないです」


穴の中から、白い毛並みに、鋭い牙を持った小型の獣が、数匹顔を出した。


【解析中……】

【牙兎】

LV:5

弱点:耳の付け根


「タクトさん、まずは一匹、一緒にやってみますか。俺が援護します」


「は、はい……!」


タクトは、支給品らしき短剣を握りしめ、慎重に一匹に狙いを定めた。俺は隣で、いつでも動けるよう構えながら、ユイと目配せを交わした。


タクトの一撃は浅かったが、確かに命中した。俺はすかさず追撃を加え、弱点を正確に突く。


【牙兎を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+8


タクトの視界にも、恐らく同様の通知が入ったのだろう。彼は、少し驚いたような、それでいて嬉しそうな表情を浮かべていた。


「や、やった……! 俺、初めて、討伐できました」


「良かったですね」


残りの牙兎も、三人で協力しながら、一匹ずつ着実に仕留めていった。タクトの動きは、最初のぎこちなさが嘘のように、少しずつ様になっていった。


薬草園に戻り、管理人に報告すると、彼は心底ほっとした様子で頭を下げた。


【依頼達成】

薬草園の見回り補助


報酬を獲得しました

・成長経験値:+25(達成報酬)

・銅貨:40枚

・名声:+6


日が傾き始めた頃、俺たちは街の中心部へと戻った。タクトは、依頼を終えた達成感からか、表情が明るくなっていた。


「今日は、本当にありがとうございました。おかげで、少し自信がつきました」


「これからも、よかったら一緒に依頼、受けませんか」


俺の提案に、タクトは目を輝かせた。


「いいんですか……! ぜひ、お願いします」


俺たちは、フレンド登録の手続きを済ませた。


【フレンド登録が完了しました】

「タクト」がフレンドリストに追加されました


三人での初めての連携が、無事に形になったところで、俺はふと、周囲に視線を配った。街の雑踏の中、こちらを遠巻きに見ている一団がいることに、気づいたからだった。


「あれ……」


ユイも気づいたのか、小さく息を呑んだ。さっきの「赤牙」の男たちが、少し離れた路地の入口から、こちらを見ていた。


「面倒なことに、ならなきゃいいですけど」


俺の呟きに、タクトの表情が強張った。


「俺のせいで、リョウさんたちまで、目をつけられちゃったかもしれません」


「タクトさんのせいじゃないです。俺が、勝手に割り込んだだけなので」


それでも、赤牙の視線が、明確な敵意を帯びているのを、俺は感じ取っていた。彼らは何も言わず、しばらくこちらを見つめたあと、やがて路地の奥へと姿を消した。


「今日のところは、絡んでこないみたいですね」


ユイが、少しほっとしたように言った。だが、俺の中では、小さな警戒心が、消えることなく残り続けていた。


奪う者たちと、奪わない道を選ぶ者たち。この街には、その両方が、確かに存在している。カレナという新しい舞台で、俺たちの選択が、これからどんな意味を持っていくのか――俺にはまだ、その答えが分からなかった。


「今日は、宿を探しましょうか。三人分」


「はい」


「よろしくお願いします」


三人で並んで歩く夕暮れの道は、村にいた頃とは、また違う重みを持っていた。三十日という数字は、まだ頭の中で動き続けている。それでも今、俺の隣には、確かに二人の仲間がいた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:6

HP:31/33 MP:21/24

STR:19 VIT:15

AGI:19 INT:13


延命ポイント(LP):28.7日分

所持金:銅貨180枚(+40)

名声:64(+6)

満腹度:50/100(低下中)


次のレベルまで:323/900


【冒険者ランク】

E


【装備】

胴:強化革の鎧

武器:鋭利な鉄の短剣

足:革のブーツ

装飾:魔力の指輪


【所持スキル】

・痛覚遮断

・観察眼

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級

・小回復魔法・初級


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ

・タクト(NEW)


【パーティ】

・ユイ

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

新しい仲間タクト、そして赤牙の影。

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