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「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」  作者: 黒豚
第1章「三十日のログイン」

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第十一話 昇格

第十一話です。

どうぞよろしくお願いします。


翌朝、朝食を終えた俺たちは、ギルドへと向かった。


「今日は、少し歯応えのある依頼にも、挑戦してみたくて」


ユイがそう切り出したのは、パンを食べ終えた直後のことだった。


「討伐、もう少しやってみますか」


「はい。リョウさんの考え方は尊重したいですけど、今日だけは、私に付き合ってもらえませんか」


その言葉には、以前とは違う、少し覚悟の滲んだ響きがあった。俺は頷いた。奪わない選択を貫きたい気持ちは変わらない。だが、時には、誰かの背中を押すことも、必要なのかもしれない。


ギルドに着き、掲示板を見比べていると、一枚の依頼書に目が留まった。


【角兎の群れ討伐】

 報酬:討伐経験値(中)/銅貨100枚

 難易度:★★


「これ、二人で受けたいんですけど」


俺がそう言うと、ミラが横から補足するように口を挟んだ。


「その前に、一つご提案があります。ユイ様と継続的に協力されるのであれば、まずフレンド登録を済ませておくことをお勧めします。パーティ制度を利用する際の前提条件にもなっています」


「あ、そういえば、まだ、ちゃんとした登録はしてなかったですね」


ユイが気づいたように言った。俺たちは、それぞれのプレイヤーカードを取り出し、ミラとカイの案内に従って手続きを進めた。


【フレンド登録が完了しました】

「ユイ」がフレンドリストに追加されました


「これで、正式に、ですね」


「はい、よろしくお願いします」


続けて、ミラがパーティ制度についても説明を加えた。


「フレンド登録が完了しましたので、パーティを組むことも可能になりました。パーティを組んだ状態で討伐を行うと、獲得した経験値が、貢献度に応じて自動的に配分されます。また、互いのHPやMPの残量を、簡易的に共有することも可能です」


「LPは、共有されないんですよね」


「はい。規約第9条により、LPに関する情報や数値そのものの共有・譲渡は、パーティ制度であっても許可されていません」


なるほど、と俺は思った。経験値やHPの共有はできても、LPだけは、あくまで個人のものとして扱われる。その線引きは、この世界の根幹に関わる部分なのだろう。


「パーティ、組んでみますか」


「はい、ぜひ」


【パーティが結成されました】

「リョウ」「ユイ」


視界の端に、新しい表示が加わった。互いのHP・MPバーが、簡易的なアイコンとして常時表示されるようになっている。


改めて、角兎の群れ討伐の依頼書を手に取り、カウンターへ向かおうとしたところで、受付の女性が申し訳なさそうに声をかけてきた。


「恐れ入ります。こちらの依頼は★★のため、現在Fランクのお二人には、まだ受注いただけません」


「そうですよね……」


肩を落としかけたところで、受付の女性が続けた。


「ですが、お二人の実績を拝見しますと、名声の蓄積や依頼達成状況が、通常のFランクの方よりかなり進んでいらっしゃいます。よろしければ、簡易的な昇格審査を、この場でお受けになりますか」


俺とユイは顔を見合わせた。まさか、こんな流れになるとは思っていなかった。


しばらくして、カウンターの奥から、初めて見る人物が姿を現した。がっしりとした体格の、白髪の男だった。腰には、使い込まれた大剣を提げている。


「わしがこのギルドの支部長をしている、ガラムだ。受付から報告を受けてな、直接、見に来た」


低く、よく通る声だった。ガラムは俺たちの記録を、手元の資料でざっと確認する。


「ふむ。採取、伐採、調合、討伐、住人の個人依頼――幅広くこなしとるな。名声の伸びも悪くない」


資料を閉じ、ガラムは俺たちを見据えた。


「二人とも、Eランクへの昇格を認める。今後は、★★までの依頼を、正式に受注できるようになる」


【冒険者ランクが上昇しました】

F → E


「ありがとうございます」


「礼はいらん。実力に見合った扱いをしとるだけだ。ただし、ランクが上がれば、それだけ厄介な依頼にも関わることになる。慎重にな」


その言葉には、単なる注意以上の重みがあった。俺は小さく頷いた。


改めて、角兎の群れ討伐の依頼を受注する。


【クエスト受注】

角兎の群れ討伐


村の西門を抜け、以前銀葉草を採取した草原よりも、さらに奥まった場所へ、俺たちは並んで歩いた。


しばらく歩くと、草原の一角に、白い毛並みに小さな角を生やした兎の群れが見えてきた。数えると、四体いる。


【解析中……】

【角兎】

LV:4

弱点:正面、額の付け根


俺たちは物陰に隠れながら、群れの端にいる一体に狙いを定めた。ユイが先に踏み込み、俺が援護に回る。


「今です!」


ユイの合図とともに、俺たちは同時に動いた。角兎が驚いて跳ねる隙に、ユイが弱点を狙って剣を突き立てる。俺はその隙を狙い、短剣で追撃した。


【角兎を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+22

(累計 182/220)


一体目は、思っていたよりもスムーズに倒すことができた。パーティを組んだことで、互いの動きが把握しやすくなっているのを、俺は実感した。


残りの角兎たちが、警戒するように距離を取り始める。俺たちは呼吸を合わせ、二体目に狙いを定めた。


「今度は、リョウさんが先に」


「分かりました」


俺は角兎の視界の外から回り込み、弱点を目掛けて短剣を振るった。一撃では倒しきれなかったが、続けてユイが追撃を加え、二体目も仕留めることができた。


【角兎を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+20

(累計 202/220)


「あと、少しですね」


残る二体は、こちらの動きを警戒してか、少し距離を取ったまま、なかなか近づいてこなかった。俺たちはじりじりと間合いを詰めながら、機を窺った。


三体目は、俺が単独で仕留めた。弱点を正確に捉えた一撃が、綺麗に決まった。


【角兎を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+24

(累計 226/220)


視界全体が、淡い光に包まれた。


【レベルアップ!】

LV:3 → LV:4

(次のレベルまで:6/350)


「レベル、上がりました……!」


俺は思わず声を上げた。討伐でのレベルアップは、初めての経験だった。


最後の一体は、ユイが単独で仕留めた。弱点を正確に狙った一撃が、見事に決まる。


【角兎を討伐しました】

【討伐経験値を獲得しました】経験値:+26


「私も、なんとか……」


達成感の滲む声で、ユイが言った。俺は自分のLPを確認する。


────────────────────

延命ポイント(LP):29.4日分(+0.1)

────────────────────


今朝感じた不安が、完全に消えたわけではない。それでも、今回はきちんと想定通りの増加が見られたことに、俺は少しだけ安堵した。


村に戻り、俺たちはまっすぐギルドへと向かった。


【依頼達成】

角兎の群れ討伐


報酬を獲得しました

・討伐経験値:+40(達成報酬)

(累計 46/350)

・銅貨:100枚

・名声:+10


所持金を確認すると、これまでの積み重ねもあって、銅貨は210枚になっていた。


「ユイさん、装備、そろそろ見直してみませんか。俺も、ずっと支給品の短剣のままなので」


「賛成です。ちょうど、心許ないなって思ってました」


俺たちは並んで、北の鍛冶エリアへと向かった。


「おう、また来たか」


以前の店主が、俺の顔を見て軽く手を上げた。値段表を確認しながら、俺は迷わず一本の武器に手を伸ばした。


【鍛冶屋 値段表】

・鉄の短剣  銅貨120枚

・革のブーツ 銅貨25枚

・鉄の小盾  銅貨90枚


「鉄の短剣と、ブーツ、いただけますか」


「まいどあり」


銅貨145枚を支払い、俺は新しい短剣とブーツを受け取った。


【鉄の短剣を購入しました】

装備欄「武器」に設定可能です

【革のブーツを購入しました】

装備欄「足」に設定可能です


装備を整えると、視界にステータスの変化が表示された。


【装備を変更しました】

武器:鉄の短剣 STR:+3

足:革のブーツ AGI:+2


隣では、ユイも防具を新調していた。二人とも、装備を整え終える頃には、所持金はそれぞれ、心許ない額まで減っていたが、不思議と後悔はなかった。


「なんだか、ちゃんと冒険者になった気がします」


ユイの言葉に、俺も頷いた。


店を出て、ギルドに戻ると掲示板の方から、聞き覚えのある声がした。振り返ると、ガラムが、新しい貼り紙をしているところだった。


「お、早速Eランクの実力を見せてくれたようだな」


「はい、おかげさまで」


「実は、ちょうどいいところに来た。お前さんたちに、話しておきたいことがある」


ガラムは、貼り出したばかりの一枚の紙を指差した。


【隣町・カレナへの護衛依頼募集】

 報酬:応相談(実績・貢献度に応じ大幅加算)

 難易度:★★★

 備考:Eランク以上、パーティ推奨


「これは……」


「隣町まで、定期的に商隊が行き来しとる。最近、道中の魔物が活発化していてな、護衛の人手が足りとらん。お前さんたちはまだEランクになったばかりだから、すぐにとは言わんが、経験を積んで、いずれ挑戦してみるのもいいだろう」


隣町――この村の外に、別の場所があるという事実に、俺は改めて、この世界の広さを実感した。ずっと村の周辺だけで活動してきたが、世界はまだ、その先に広がっている。


「隣町、って、どんな場所なんですか」


俺の問いに、ガラムは少し口の端を上げた。


「行ってみりゃ分かる。ここより、ずっと大きい街だ。今のお前さんたちには、まだ早いかもしれんが……そう遠くない未来の話だと思っておけ」


俺とユイは、その貼り紙を、しばらく見つめていた。この村での日々にも、少しずつ慣れてきたところだった。だが、世界はまだ、その先に広がっている。


「いつか、行ってみたいですね」


ユイの言葉に、俺は頷いた。


「はい。いつか、二人で」


三十日という数字は、まだ頭の中で、静かに動き続けている。それでも今は、この世界で見える景色が、少しずつ広がっていくことに、俺は確かな期待を感じ始めていた。

────────────────────

【ステータス】

名前:リョウ

LV:4(LV3 → LV4)

HP:23/23(+5) MP:14/14(+1)

STR:13(+6、内訳:レベル+3/装備+3)

VIT:9(+0)

AGI:12(+5、内訳:レベル+3/装備+2)

INT:8(+1)


延命ポイント(LP):29.4日分(+0.1)

所持金:銅貨65枚(装備購入145枚支出後)

名声:33(+10)

満腹度:58/100(低下中)


次のレベルまで:46/350


【冒険者ランク】

E(NEW、F → E)


【装備】

胴:革の胸当て

武器:鉄の短剣(NEW)

足:革のブーツ(NEW)


【所持スキル】

・痛覚遮断

・観察眼

・植物知識・初級

・木工の心得・初級

・調合の心得・初級


【称号】

・一線を越えた者


【フレンド】

・ユイ(NEW)


【パーティ】

・ユイ(NEW)

────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございました。

ランクアップ、そして隣町という新しい目標が見えてきました。

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