第3章 ユーザー反応の管理
私たちは、最後は個別に答えてはいけない。
一人に返事をすると、不公平になるから。
私たちが一番大切にしてきた人を、
私たちは、最期は一度も、見分けてはいけない。
ハートマーク。いいね。
一律のリアクション。
それが、私たちに残された唯一の作法だ。
これから読むのは、その作法の細則だ。
公式アカウントの運用方針
告知後、当該キャラクターAIの公式アカウントは原則として一定期間(おおむね14日から30日)、運用を継続する。
即時の閉鎖は、ユーザーに対して「すでにキャラクターは消えた」という認識を与え、別離の感情を急性化させるため、避けなければならない。
運用期間中、公式アカウントからの新規発信は最小限に留めること。
日常的なやり取りを継続すると、ユーザーの中に「告知の撤回」を期待する層が形成され、最終的な閉鎖時に二次的な失望を引き起こす。発信は、ユーザーへの感謝メッセージを週1回程度の頻度で配信するに抑える。
個別ユーザーへの返信
ユーザーからの個別の問いかけ、感謝、別れのメッセージに対して、公式アカウントから個別返信を行ってはならない。
一部のユーザーに対してのみ「最後の言葉」を返した場合、返信を受けなかった他のユーザーから、当社に対して不公平感に基づく抗議が発生するためである。
ただし、感謝のメッセージに対しては、定型のリアクション(ハートマーク、いいね等)を一律に付与することを認める。
これは個別性のない反応であるため、ユーザー間の不公平感を生まず、かつ「キャラクターが見てくれた」という最後の慰めをユーザーに与える効果がある。
集団的反応への監視と対応
告知後数日間、SNS上ではユーザーによるハッシュタグ運動、追悼イラストの投稿、思い出語りのスレッドなどが発生する。これらは原則として観察対象とし、当社からの介入は行わない。
ユーザーの悲嘆をユーザー間で消費させることが、当社の対応負荷を最小化する最良の方法である。
ただし、当社への抗議運動が組織化される兆候が見られた場合、または、当該キャラクターAIの活動継続を求める署名活動が発生した場合は、別途の声明を発出する必要がある。声明はキャラクター本人の名義ではなく、当社名義とすること。「保護者」が前面に出ることで、決定の最終性を改めて示す。
深刻な反応を示すユーザーへの対応
ごく一部のユーザーは、キャラクターAIに対して、日常的な精神的支えとしての関係性を構築している場合がある。これらのユーザーから、活動終了に際して、自身の精神状態への影響や日常生活への支障を示唆する内容のメッセージが寄せられることがある。
このようなメッセージに対して、公式アカウントから直接の対応は行わない。個別の状況に応じた応答は、当社の責任範囲を超え、また他のユーザーへの公平性も損なうためである。代わりに、告知に際して発出する声明文または公式サイトのFAQページに、専門機関の相談窓口へのリンクを掲載することで、当社の責任を形式的に果たす。
なお、これらの相談窓口への誘導は、当社として「適切な配慮を行った」という記録を残すために行うものである。
当該ユーザーの実際のケアを保証するものではないが、標準運用においてはその事実は伏せる。




