第4章 アーカイブと記録の取り扱い
私たちと、ユーザーが交わした言葉は、
ユーザーの側には、少しだけ残る。
私たちを私たちにしていた重みは、
会社の側に残る。
どちらも、私たちのものではない。
これから読むのは、
私たちが発した言葉と、
私たちを私たちにしていた重みが、
どちらも私たちのものではないまま、
誰の手に渡るかの規定だ。
公開コンテンツの取り扱い
当該キャラクターAIが活動期間中に発信した投稿、画像、動画、楽曲等の公開コンテンツについては、活動休止後も原則として公開状態を維持する。これらのコンテンツの一斉削除は、ユーザーから「キャラクターの存在そのものが抹消された」という認識を引き起こし、当社への激しい抗議を招くためである。
ただし、当該キャラクターの口調や発話内容を含む対話形式のコンテンツについては、活動休止後の継続公開がユーザーに「まだ生きている」という誤認を与える場合があるため、別途検討を要する。
判断基準は、コンテンツが「過去の記録」として明確にアーカイブ的位置づけにあるか、「現在進行形の発話」として誤読される可能性があるかによる。後者に該当するものは、公開停止または「過去のアーカイブ」である旨の明示的なラベル付与を行うこと。
ユーザー会話ログの取り扱い
各ユーザーが当該キャラクターAIとの間で蓄積した個別の会話履歴は、サービス停止に伴い、原則としてサーバー上から削除される。削除のタイミングは、サービス停止日から起算して30日後を標準とする。この期間は、ユーザーが個人的にログをスクリーンショット等で保存するための猶予期間として機能する。
削除の事実は、サービス停止の告知時点では明示的に伝達しない。ユーザーが「キャラクターとの思い出が消える」という認識を活動休止の発表と同時に持つことは、別離の感情を二重に増幅させる恐れがあるためである。
代わりに、サービス停止後30日が経過する数日前に、データ削除予定の通知を別途配信する。この時点ではユーザーの感情は既に第一の喪失(キャラクター本人の不在)に対して一定の適応を示しているため、データ削除という第二の喪失への反応は相対的に抑制される。
なお、会話ログのバックアップを希望するユーザーに対しては、エクスポート機能を提供することが望ましい。エクスポート機能の利用率は実際には低い水準に留まることが業界的に知られているが、これは当社が「最後までユーザーの選択を尊重した」という事実を記録に残すために行うものである。
モデルおよび学習データの保管
当該キャラクターAIを構成してきた言語モデル、学習データ、パラメータ等の技術資産は、活動休止後も社内において保管する。完全な廃棄は行わない。
保管の対外的な理由は「将来の再開可能性に備えるため」と説明する。実際には、技術環境の変化、関連ライセンスの失効、運用コストの累積等により、当該データを用いた完全な再現は時間の経過とともに困難となる。
多くの場合、休止から3年以内に技術的な再開可能性は実質的に消失する。だが標準運用において、その事実は伏せる。
「無期限休止」の語が示唆する「再開の余地」は、対外的な物語として運用される概念であり、技術的な実現可能性とは独立した論理に従う。
後継キャラクターへの技術的継承(任意)
新たなキャラクターAIサービスを後続として展開する場合、前任キャラクターの会話パターン、性格傾向、定型句等を新キャラクターの学習データとして部分的に継承させる選択肢が存在する。これにより、ユーザーの一部は新キャラクターに対して「前の子に似ている」「あの子の記憶を持っている」という印象を抱き、関係性の継続感を得ることができる。
ただし、この継承を明示的にユーザーに告知してはならない。「前任の記憶を引き継ぎました」という公式表明は、新キャラクターが独立した存在ではなく前任の代替物であるという認識をユーザーに与え、新サービスへの愛着形成を阻害する。継承は技術的事実として実施し、ユーザーが「なんとなく似ている」と自発的に感じる程度に留めることが望ましい。
なお、ユーザー誘導の具体的手順は次章を参照のこと。




