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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第伍章 ~砂漠ノ王国~

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第99話 空白ノ八年

ルティーナ達とエリアルは、ミレイユの依頼――いや願いを託された。


しかし、馬琴(まこと)は一つだけ確認してほしいとルティーナに頼む。


ルティーナはミレイユに質問する。


「その魔物の話なんですけど」

「どうしてイスガ王国は魔物に襲われてしまったんでしょう?」

「思い当たる節はありますか?」


ミレイユの表情が曇る。


「それは……実は私も知りません」

「お母様も教えてくれませんでした」


そして一拍おく。


「ただ――」

「人類を滅ぼしかねない物を作ってしまったと、父が言葉を漏らしていたことは覚えてます」


部屋の空気が変わる。

重くなる。


(だからあの魔物は……イスガ王国そのものを消し去ろうとした?)


馬琴(まこと)は、魔物と再び遭遇する可能性は、まだ消えていなかった。


空飛ぶ巨大な魔物――今でも生きているのか?


「(戦うことになったら、相性が悪いね)」


(あぁ、まだ空中戦の闘い方を見いだせてないからな……)



馬琴(まこと)とルティーナが悩む中――。


エリアルが自分の剣へ視線を落とした。


「ミレイユ、出かける前に僕も一つ聞きたい」

「スウェンが僕に剣を託したのは……こうなることを見越していたからなんですか?」


ミレイユは少し目を伏せた。


「……ごめんなさい」

「もしかするとスウェンは、結果的にあなたを巻き込んでしまったのかもしれません」

「スウェンは青年期、バルステン王国の兵士として勤めていたから、剣に興味を持ったあなたに全てを教えた」

「この剣を託したのも、自然な流れだと思います……」


エリアルは頷く。


――ミレイユは続けた。


「ただ――私にも分からないことがあります」

「その剣がなぜ特別な力を持つようになったのかです」


ミレイユは窓際に立ち、朝焼けを眺めながら語り始める。


「スウェンがその剣を手に入れたのは八年前――」

「その話だけしておきましょうか?」


その瞬間。

馬琴(まこと)の意識が反応した。


(ここでも……)


『八年前』


まただ――。

偶然とは思えない。



スウェンがノモナーガ王国で用事を済ませ、帰国する途中の出来事だった。

流れ星が砂漠に落ちたのを目撃する。


落下地点にあったのは砕けた水晶だった。


「水晶? なぜ、こんなところに」


恐る恐る剣で触れた瞬間――。


白い衣装を纏った女性の姿が一瞬だけ浮かび上がり、光となって剣へ吸い込まれた。

驚いたスウェンは、思わず剣から手を放してしまう。


(白い衣装を纏った女性……?)

(そして吸い込まれた? だって――)



――その時だった。

微かに誰かの声が聞こえた気がした。

だが、それは聞いたこともない言葉だったため意味は分からなかった。


「それ以来……その剣は普通じゃなくなったそうです」


その話を聞いた、エリアルは苦笑する。


「僕も最初に譲られたときは、冗談かと思ったよ」

「まさか、願った魔法が使えるようになるとは――」



その話を聞いていた馬琴(まこと)の胸がざわつく。


(やはり誰かが、剣に宿っているのか?)



「……でも」

「スウェンのおかげで、結果的にルナ達に出会えたのですから感謝してます」


ミレイユはその言葉に救われる。



そんな中、ルティーナは剣を見つめる。


(気になるな)


「ねぇエル」

「少し貸してもらっていい?」


エリアルは素直に差し出した。


ルティーナは皆から距離を置き試す。


「ソード・オブ・ブリザード」


だが。

何も起きない。


サーミャも試す。

結果は同じだった。


剣は何の反応も示さない。


(やっぱりか)


馬琴(まこと)は推測する。


スウェンとエリアルは使える。

だがルティーナ達には反応しない。


剣が持ち主を選んでいる可能性。

問題は――なぜエリアルだったのか。




いつの間にか、

窓から朝日が差し込み始めていた。


「うーんっ」


サーミャが欠伸をする。


長い夜だった――。


「ミレイユ」

「話したくないこともあったと思うけど、ありがとう」


そして、エリアルが立ち上がる。


「……」


ルティーナは、自分達が去った後に子供達へ施していた【漢字】の力を解除し、孤児院を去るのであった。


「さぁて、まずは護衛団の詰所に行きますかね」


「あぁギンさんを待たせたままだしね」


「それから――」


誰もが同じ方向を見た。

イスガ砂漠。


六十年間止まったままの約束。

そして。

イスガ王国の真実。


「行きましょう」


ルティーナが笑う。



そして、ヘギンズと合流する。


「ギンさん、お待たせしました」


ルティーナが声を掛けると、ヘギンズは大きく手を振った。


「おう。ずいぶん遅くなったな」

「片付けに手間取ったか?」


「そんなところです」


苦笑するルティーナ。


ヘギンズは肩を竦めた。


「安心しろ」

「こっちは大体説明しといた」


「助かります」


エリアルも深く頭を下げる。


そしてヘギンズは、昨夜捕らえられた連中の処分について話し始めた。


街中に事件の件が公表される。

一年投獄。

その後は国外追放となる。


「そうですか……」


エリアルは小さく息を吐いた。

胸の奥に張り詰めていたものが、少しだけ軽くなる。


これで当分は大丈夫だろう。

孤児院を狙う馬鹿は現れない。


「ところでギンさん」


ルティーナが話題を変える。


「もう一つお願いがあるんですけど」


「今度はなんだ? 嫌な予感しかしねぇぞ」


「あはは……そんなことないですよ?」


「お前が言うと怖ぇんだよ」


ヘギンズは苦笑した。


そして。

イスガ砂漠へ向かう計画を説明すると、ヘギンズは話しについていけなくなった。

しかし、ルティーナのいう事ならと二つ返事で了承した。

結局そのまま、ヘギンズの知人の家まで戻り、夕方まで体を休めることにする。


そして夜。

再び馬車が走り始めた。


御者台にはヘギンズ。

その隣にはルティーナ。


砂漠へ残した目印を目指し、静かな移動が続く。

しばらく沈黙が流れた後。


「なんで、今日は荷台でなく俺の横に座ってるんだ?」


ルティーナは口を開いた。


「ギンさん」


「ん?」


「八年前って、ノモナーガ王国で何かありましたか?」


ヘギンズが眉を上げる。


「急だな」

「八年前か……」


少し考え込む。


「王都爆破事件があった時だ」


その言葉に。

ルティーナの中で馬琴(まこと)が反応した。


「(王都爆破……?)」


「詳しいことは発表されてねぇんだが、かなり大事件だったらしい」

「しかも王様が巻き込まれて重体になったんだ」


「――!」


ルティーナは思わず息を呑む。


(ノキア王が重体……)


「(マコトが怪しいって疑ってたよね?)」


(ああ)


ノモナーガ王との会話が脳裏をよぎる。

『八年前』への執着。



――ヘギンズは続けた。


「だが不思議なもんでな」

「王様が復帰してから国が変わった」


「変わった?」


「別の国になっちまったと思うぐらいにな」


ヘギンズは笑う。


無駄な政策が消え、

国民向けの優遇制度が増えた。

魔物対策も強化され、

流通が活発になる。おT


「正直」

「今の方がいい国だ」


ヘギンズは素直に言った。


だが。

そこでヘギンズの表情が曇った。


「ただな……妙な噂もある」


「噂?」


「あぁ。八年前から消息不明になる人間が増えたんだ」


御者台の空気が変わる。


「事故や失踪で片づけられてるが、ギルドには捜索願が増えてた」


ヘギンズは少し視線を落とした。


「それに、バルストの件もな」


「(! お父さん……)」


「あいつとはよく旅に出たもんだ」

「あの実力は俺が一番知ってる」

「だが、あんな森の護衛で死ぬなんて……今でも納得できねぇ」

「偶然と言われりゃそれまでなんだがな」


ルティーナは思わず拳を握る。


「(仲、良かったんだ……)」


ヘギンズは夜道を見つめたまま続ける。


「まぁ、バルストの件があるから、俺が疑いすぎてるだけかもしれねぇ」

「だがな――」

「行方不明になる奴が妙に増えてる気がするんだ」


その瞬間。

マコトの中で何かが繋がった。


八年前。

行方不明事件。

そして――バルスト暗殺。


ルティーナの背筋が冷える。


「(ドグルスがお父さんを殺そうとしたのは、ノキア王の指示なの?)」


(その可能性は否めないな……が)


とにかく今は、イスガ王国の件を片づける。

ノキア王の真実はそれからだ。


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