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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第伍章 ~砂漠ノ王国~

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第100話 守護ノ機械

ヘギンズからの話を聞き、馬琴(まこと)の中で一つの仮説が形になり始めていた。


(ルナ)

(森で見つけた光る物……)

(それって、水晶だったんじゃないのか?)


ルティーナは息を呑んだ。


「(……!)」

「(わからない……でも)」


記憶の断片。


森。

花摘み。

光。

そして。


ズキッ――。


激しい頭痛が走った。


「っ……!」


ルティーナが頭を押さえる。


「お、おい!?」


ヘギンズが慌てる。


「大丈夫か!?」


「う、うん……大丈夫」


額に汗が浮かんでいた。

だが痛みは徐々に引いていく。


(もしかして、思い出したのかい?)


「(す、少しだけ……)」


光る物を見つけた。

手を伸ばした。

そこから先だけが思い出せない。


「(私が見つけた物は、光ってた……水晶だったのかもしれない)」


(もしそうなら……)


(魔剣に起きた現象と同じことがルナに起きた可能性がある)


(だとすれば……)


ルティーナが目を見開く。


「(それじゃ……)」

「(マコトが私の中に宿ったのは……)」


馬琴(まこと)は静かに答えた。


(そう――半年前じゃない……)


そして。

ずっと胸に引っ掛かっていた違和感が、

ようやく形になった。


(だとすれば――)

(俺達は、ルナが転落事件に遇った時……俺たちは一つになったんだ)


ルティーナが目を覚ますまでの七年間。

同じ身体の中で……眠っていた事になる。


――『王都爆破事件』。


あの出来事を起点に、すべての繋がりが生まれていたのだと。


この件が片付いたら、皆に全てを話す。

そしてシャルレシカに、ルティーナの記憶を探ってもらう。


ノキア王の件を追うにも、これから先も皆の力が必要だった。


(……いずれ、隠し通せるものではなくなる)


「(……そうね)」


その思考を振り払うように、ルティーナは視線を前へ向ける。


――その時には、目的の地点へ到着していた。




「みんな、無事に帰ってこいよ」


ヘギンズは不安そうな顔で、五人を見送る。

しかし、みんなが帰ってくることを心から願っていた。


「そうだ! サーミャっ! 帰ってきたら葡萄酒の約束――忘れんじゃねぇぞ」


「ははっ、覚えてるよ!」


サーミャは肩をすくめる。


「帰ってきたら、この美女が朝までサシで付き合ってやるよ」


「だから色気がねぇんだよ」


「「「あははっ」」」


緊張をわずかに緩める笑いが落ちる。


ルティーナは四人を集める。


「さぁ、行くわよ」


ルティーナは四人へ【(かるい)】を二回重ね、さらに【(かすか)】を付与し、自らの背に【(つばさ)】を描く。


「皆、振り落とされないでね」


「「「「大丈夫」」」」


四人を懐に入れ、ルティーナは空へ舞い上がった。


目指すは、以前確認した『謎の建造物』。


上空へ上がるにつれ、異様さが際立っていく。

地平線の一点だけが、不自然に『歪んで見える』。

まるで世界そのものが、その場所を拒んでいるかのように――。


(……あそこだ)


ミレイユから聞いていた情報――。


イスガ王国の眠る場所の上には、『楔のような物体』が存在するという。

そして『鍵』を持っていれば『五キロ圏内で自動的に誘導される』と。


その瞬間だった――。

『鍵』が淡く発光する。


「っ……!」


光が一気に広がり、五人の視界を包み込む。




眩い光が消える。



「……ここは?」


気が付けば、石造りの広い空間だった。


冷たく、湿った空気。

外界とは完全に切り離された『地下』の気配。


「ルナ、着いたのか?」


「――みたい」


ルティーナは四人をそっと床へ降ろし、漢字を解除する。



「どうやら……イスガ王国の地下に着いたようですね」


サーミャが周囲を見回す。


中央には巨大な銅像があった。

その腹部には鍵穴らしきものが見える。


「話通りなら、帰還する時に指せってことか」


「とりあえず帰り道は確保できましたね」


「なら早速、封印の部屋を探しに行きましょう」



ルティーナは皆に最終確認をする。


「この『鍵』は私が持っておくわ」

「そして予定通り、みんなで行動するのよ!」

「はぐれたら帰れなくなっちゃうからね」


五人は手を合わせる。


「「「「「皆で必ず帰るっ!」」」」



早速、ルティーナはシャルレシカに索敵を展開させる。

例の魔物の事もあるが、それ以前にフレーディルが戻って来れなかった理由が知りたかった。


「この前の巨大な反応はないんですがぁ……」

「……嫌な気配はするんですぅ」


シャルレシカが眉をひそめる。


「魔物じゃなぃ?……悪意もなぃ?」

「でも……何かが居るんですぅ」

「二キロメートル範囲に大量にぃ……」


シャルレシカの曖昧な答えに、空気が重くなる。


そんな中、シャルレシカも顔色が変わる。


「……え?」


「どうした?」


「この部屋の周囲……数十個、微妙な反応があります」


「数十?」



そして調べるために、その部屋から繋がる階段を降りることにした。

その先には重厚な扉があった。


シャルレシカの表情が強張る。


「その向こうにぃ……やっぱり何かがいます」


「危険は?」


「うーん……なんでわからないのでしょう?……」


(シャルレシカらしくないな)


ルティーナが目を細める。


「とりあえず、この扉の先に行かないと話は進まないわね」


ルティーナは指を立てながら皆に注意する。


「土系や爆発系の攻撃はしないこと! ここは地下――施設崩壊の危険があるわ」


「じゃぁ、氷と風と雷しか使えねぇのか……」


サーミャが舌打ちする。


「それじゃ、開けるから皆構えて!」


「シャル、僕の後ろに――」


「はいぃ」


そして、ルティーナは扉に手をかけた。


扉を開く。

その先には――。


一本の通路。

その両脇には、兵士の鎧が整然と並んでいた。

まるで何百年も命令を待ち続けているかのように――。


「なんだ、これ……」


エリアルが息を呑む。


「気配って……何もいねぇじゃねぇか」


その瞬間だった。


――カタッ。


一体が動いた。

続いて、周囲の鎧が一斉に動きだす。


「いや、こいつらだ! シャルが索敵したのは!」


サーミャが構える。


氷が放たれる。

「『フリーズ・ゲージ――氷塊――』!」


鎧の人形は凍結した。

――しかし、内部から砕けるように氷を破壊する。


「なっ……効かねぇ」


ロザリナが前に出る。


「なら、直接っ!」


拳が叩き込まれる。

だが鎧はへこむだけでびくともしない。


「か……硬すぎっ!」


エリアルが剣を振るう。


「なら、僕が」

「ソード・オブ・スラッシュ」

(【(ざん)】)


人形の腕は容易に切断することができた。

その瞬間――内部が見えた。


(……機械じゃないか!)


「(きかい?)」


金属骨格。

歯車のような構造。


明らかに生物ではない。


(機械兵器……?)

(無機物だから、シャルは意識を感じとれなかったのか)


馬琴(まこと)が即座に判断し、ルティーナに指示をさせる。


「ミヤ、雷よ! エルも、私の攻撃に合わせて!」


「「?」」

「わ、わかった!」


ルティーナは手のひらに【(みず)】を浮かばせ、人形たちに向けて放水する。

それに合わせて、サーミャは雷撃を、エリアルも雷の剣で攻撃をする。


濡れた地面と連鎖し、電流が全体へ広がり人形たちを次々と沈黙させていく。


「水で導電させたのか……!」

「あたいはトラウマでしかねぇ」


「あははは……」


サーミャ達は互いに視線を交わした。

誰もこんな敵は見たことがない。

それなのにルティーナは、まるで仕組みを知っているかのように弱点を見抜いていた。



ルティーナが呟く。


「……やっぱり、ただの遺跡じゃないわね」


その声は、わずかに緊張を含んでいた。


そこにあったのは――沈黙する機械兵の群れだった。


「「「「……」」」」



しかし、まだ誰も知らない。

この先にある『本当のイスガ王国の姿』を。


この時、ルティーナは気づいていなかった。

仲間たちとの間に、小さなひずみが生まれ始めていたことを――。


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