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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第伍章 ~砂漠ノ王国~

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第87話 奇妙ナ砂漠

――その頃。

ルティーナ達は、シャルレシカが反応を捉えた場所の上空へ到達していた。


眼下に広がるのは、どこまでも続く黄金色の砂。

空から見下ろしても異常らしい異常は見当たらない。


「本当に居たんだよね?」


ルティーナが尋ねる。


「はいぃ」


シャルレシカは迷うことなく頷いた。


「絶対ですぅ」


その言葉に揺らぎはない。

だからこそ不気味だった。


(反応があった場所とは思えねぇ……)


ルティーナは眼下を見渡した。

もちろん、その光景は馬琴も共有している。


砂。

砂。

砂。

見えるのはそれだけだ。

どこを見渡しても生き物の影すら存在しない。


(つまり……砂の下か?)


馬琴の脳裏にそんな考えが浮かぶ。

だが、砂の中を移動しているとしても痕跡くらい残る。


――それすらない。


(ルナ)


「(うん)」


(手裏剣を出してくれ)


ルティーナは素直に従う。

すぐさま、馬琴(まこと)はその手裏剣へ巨大な文字を描いた。


(ばく)


三十メートル級まで拡張された文字。

さすがに異様な存在感を放つ。


「シャル、しっかりつかまっててね」


「ひぃぃぃ」


手裏剣を投下する。


そして――砂漠に着弾した瞬間。


(起動っ)


轟音。

そして、砂煙が空高く舞い上がる。


爆発が砂漠を抉る。

――やがて巨大な穴が姿を現した。


「うわ……」


ルティーナが思わず声を漏らす。


だが異変は、その直後だった。


穴の底で砂が動いた。

最初は風だと思った。


しかし違う――。


渦だ。

大量の砂が穴へ向かって流れ込んでいる。

まるで巨大な口が飲み込んでいるかのように。


そして数秒後――。


巨大な穴は跡形もなく消えた。

平坦な砂漠だけが残る。


「……え?」


ルティーナは絶句した。


信じられなかった。


場所を変えて何度も爆破を繰り返す。


右。

左。

少し離れた場所。


――だが結果は変わらない。


穴は生まれ、そして砂に飲み込まれる。

どれほど巨大な穴を開けても、砂は瞬く間に元へ戻ってしまう。


「普通じゃないわ……」


背筋を冷たいものが走る。


馬琴(まこと)も同じだった。


(こんなの見たことねぇ……まるで蟻地獄)


砂漠とは思えない。


むしろ――。


「(生きてるみたいで、気持ち悪い――)」


ルティーナは、その言葉が自然と浮かんだ。


行方不明者の噂。

魔物が存在しない理由。

シャルレシカが捉えた巨大反応。


すべてが少しずつ繋がり始めていた。


(この砂漠には、やはり何か秘密がある……)


それからもしばらく調査を続けた。

場所を変え、何度爆破しても結果は同じ。


(もし、何かが潜んでいるなら、反応してもおかしくないと思うんだが)


馬琴(まこと)の目的は、途中から変わっていた。

砂漠の状態の調査から謎の巨大な反応の炙り出しへと――。


(本当に砂の中を高速移動して、どっかに去ってしまったのか?)


そんな中、ルティーナの高度が徐々に下がり始めていることに馬琴(まこと)が気づく。


(ルナ、大丈夫か?)


「(あ、うん……さすがに疲れてきちゃった)」


馬琴(まこと)は、砂上の爆破に夢中になりすぎルティーナの疲労を失念していた。


さすがに長時間飛行などした経験はない。

小さな体で必死に羽ばたいているのだから、体力に限界がくるのは当然の結果だった。


「(心配しなくていいよ。あと十分ぐらいなら飛べるから)」


(それじゃ、そろそろ戻るか……)


その時、シャルレシカが叫びだす――。


「ねぇねぇっルナぁ~」

「ルナったらぁ~聞いてますかぁ~?」


「あっごめんごめんっ」


「ぶぅ~っ、いつものぼぉ~っとさんですぅ」


「どうしたの急に?」


「かなり先なんですけどぉ」

「何か見えた気がするんですがぁ~」


「ん?」


ルティーナは、一度高く飛翔しなおす。

そして目を凝らした。

確かに、砂漠の遥か彼方に何かある。


――だが遠過ぎる。


施設なのか。

岩なのか。

判断できない。


「索敵してみたんですけどぉ~……十キロ先なんでしょうかぁ?」

「反応がわからないんですぅ」


「……」


馬琴(まこと)は、ルティーナの状態を考えた。


このまま調査を進めると、ルティーナの体力が尽きる――。

砂漠に降り立てば……溺れて全滅してしまう。


(ここに目印を置いて戻るのが正解か……)


馬琴(まこと)はそう判断した。


本来なら、それが一番安全だ。

ルティーナは手裏剣を取り出し文字を大きく描く。


(かたまる)


再び手裏剣を投下し、砂を固めようとする。

目印となる人工地盤を作るため。


それだけではない、うまくいけばルティーナが休める足場が作れる。


そのはずだった――。


「えっ?」


固まった地面が沈んでいく。


ゆっくりと。

だが確実に。

まるで何かに呑み込まれるように。


砂の中へ消えていった。


「ルナぁ~」


「地面が沈んでますぅ」


シャルレシカの声が遠く聞こえる。


馬琴(まこと)は言葉を失っていた。


(なんだよ……これ)


砂漠。

そう思っていた。

だが今は別のものに見える。


「(目印まで沈むの!?)」

「も、もうちょっと考えるから、シャルはそのまま索敵を続けててね」


「わかったぁ~」


馬琴(まこと)は試したい事があると、手裏剣に違う文字を大きく描く。


(こおる)


そして同じように投下し、砂漠の一部を凍結させる。


そして生まれた巨大な氷塊は――。

沈まなかった。


「(浮いてる……?)」


ルティーナが呟く。


(やっぱりだ)


馬琴の確信は強まる。

少なくとも普通の砂ではない。

液体に近い砂の可能性を――。


(つまり、海と考えればこの下に王国が沈んだっていう話も……不思議じゃない)


「(え? マコトさっぱりわからないんだけどぉ)」


ルティーナが首を傾げた。


(ルナは、そもそも海ってどんな物か知ってるかい?)


「(子供の頃に、浜辺ってところになら連れて行ってもらった記憶しかないわ)」

「(ただただでかい水の塊が広がってるって印象しか)」


馬琴(まこと)は身近なたとえを考える。


(じゃあお風呂に入った時を思い出してみてくれ)

(お風呂に入ったら、一瞬、水面が乱れるけど、すぐもとに戻るだろ?)


ルティーナは説明の意図を理解する。


「(ほんとだ、ここと同じ……)」

「(氷……あれは桶が浮いてると同じ事?)」


(そう、まさに海なんだ)


その発想が脳裏をよぎる。

それなら、巨大な魔力はこの大海を泳ぎ、行方不明者の話も説明がつく。



「(ねぇマコト)」


ルティーナが何かに気付く。


(ん?)


「(さっきの氷……ぷかぷか流されて、さっきより遠くに流されていってない?)」


(!)


「(そしたらさ、あの見えている物って……動いてなくない?)」


少し考える。

そして。


(やっぱり島とか、下にある何かが顔を出してるということか?)


馬琴(まこと)の思考が止まった。


十分あり得る。

いや――むしろ、その方が自然だった。


――その時だった。


「ルナぁっ!」


シャルレシカが叫ぶ。


「またですぅ!」


二人の表情が変わる。


「さっきの巨大反応ですぅ!」


「一瞬だけ出てぇ――」


息を呑む。


「また消えましたぁ!」


静寂。


偶然ではない。

巨大な反応が現れ、消える。


それを繰り返している。


まるで――。


(やはりな……まるで海を泳ぐ魚みたいだ)


馬琴(まこと)が呟く。


砂の海。

その下を移動する何か。

なぜ、地上に姿を現さない……。


――まだ確証はない。


その時、ルティーナが肩で辛そうに息をしていることに馬琴(まこと)は気づく。


(すまない……時間をかけすぎた)


「(ううん、いいよ。これぐらい……)」


(いったん、街道まで戻ろう)



そして何より――。

その正体は未だ分からない。


眼下では今日も砂漠が静かに波打っている。


まるで何事もなかったかのように。

何かが息を潜めているかのように。


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