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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第79話 決勝戦 ~後編~

試合が中盤へ差しかかる頃には、闘技場の熱気は最高潮へ達していた。

観客席では誰もが立ち上がり、視線を中央へ釘付けにしている。


「おお、すげぇ盛り上がってんじゃねぇか」


ルティーナの応援にサーミャたち三人は観客席に顔を出す。


「ルナ、剣で戦ってますよ?」


「あいつ……だましだまし戦ってやがるな」


サーミャは片脚を引きずりながらも、アンハルトたちの席を目指す。


「笑い事じゃないわよ、ミヤ」

「結構危ないと思うんだけど……」




「シャルお姉ちゃ~ん!」


シャルレシカの存在に気付いたカルラが声をかける。


「あぁ~っ、カルラちゃ~んっ! 今そっち行くよぉ~!」


元気に手を振るシャルレシカの姿に、観客席の空気も少しだけ和らぐ。


「サーミャ。脚は大丈夫なのか?」


「あぁ、これぐらい屁でもねぇ! それより――」


「問題ない! ブライアンは理解してくれたさ」


「ありがとな――」


そこへブライアンが椅子をもって飛び込んでくる。


「サ、サーミャ姉さんっ!」

「ここ座ってください! 無理すると傷に響きますからっ!」

「あと、試合での暴言の数々――本当に申し訳ありませんでした」


「気にしてねぇよ、わかってくれりゃ……――?」

「ん? ね、ねぇさぁん?」


サーミャは固まった――。


「ちょっと待てい! なんだぁこの展開はー!」


「……まぁまぁミヤ」

「許してくれたってことでいいんじゃないの?」


シェシカがくすりと笑う。


「今笑ったよな、お前?」


試合中とは正反対に、ブライアンは妙に紳士的になっていた。

サーミャの体を気遣い、椅子を引き、水を差し出し、必要以上に頭を下げている。


「あぁ、もう分かったから……」

「あと『姉さん』はやめろ!」


「だ、駄目ですか?」


「そんなことより、ルナの応援をするぞっ!」


「はいっ!」


「「「「はははっ!」」」」


重苦しかった空気が、ようやく少しだけ戻っていた。





一方その頃――。

闘技場では、なおも激しい攻防が続いていた。


エリアルの魔剣にまとわりつく雷は、剣を振るたび鞭のように軌道を変え、ルティーナへ襲いかかる。

短剣を手放してしまったルティーナは、必死に手裏剣を投げては雷の流れを逸らし、紙一重で回避していた。


「その回避、いつまでも続けられるかな?」


エリアルが静かに笑う。

手持ちの手裏剣やクナイの数に限界があることは分かっていたからだ。


「そっちは魔法じゃないから、魔力切れを気にせず攻撃できるのね」


ルティーナは、とにかく短剣を拾い闘技場へ突き刺す。


(かみなり)


(起動っ)


短剣は雷を帯び、エリアルの雷撃をそこへ吸収させる。


「なっ! そんな方法が――」


ルティーナは素早く後退し、クナイを投擲し反撃を開始する。


それに対して、エリアルは剣で叩き落そうとする。


――その瞬間。


(かがやき)


クナイは飛来しながら閃光を放つ。


「っ!?」


視界が白く弾ける。


「しまった……!」


エリアルはルティーナの常とう手段に引っかかる。


「くそっ! 警戒していたのに……ここで使うのか!」


完全な死角。

だがルティーナは追撃しない。

地面へ突き立てていた短剣を引き抜き、鞘へ納める。


そして今度は、残っていた手裏剣をエリアルの周囲へ次々と撒いていく。


まるで囲うように。


「……これは」


エリアルの目が細まる。


「サーミャさんに使ったやつかい?」


「……」


返事はない。

ルティーナは鞘を両手で構えた。


(うつ)


鞘には既に漢字が書かれていた。


次の瞬間――。

納めていた短剣が発射される。


「!?」


予想外の攻撃――。

だがエリアルは動けない。

周囲に撒かれた手裏剣が脳裏をよぎったからだ。


――不用意に踏み込めば、何かが起こる。

『罠』だと。


そう判断した。

エリアルは剣で、迫りくる短剣を弾き飛ばす。


「大事な武器を捨てていいのかい?」


「捨ててないわ」


ルティーナは二つのクナイを取り出す。


糸が結んであるクナイ

普通のクナイ


「糸付き……(今度は透明にしていない?)」


エリアルの視線が細くなる。


「罠師を倒した時にも使ってたやつだよね?」

「その糸も、簡単には剣で切れなさそうだ……」


ルティーナは答えない。

糸付きクナイを頭上で回転させ始めた。


輪を描くように。


牽制。

威圧。

そして――誘導。


エリアルは剣で迎撃する。


次の瞬間、糸は剣へ巻き付いた。


「これが狙いかっ!」


ルティーナは一気に糸を引く。


だがエリアルも即座に魔剣を発動させた。


「『ソード・オブ・ヴォルケーノ』――!」

(【(ほのお)】)


爆ぜる炎。

糸は焼き切れ、クナイが落ちる。


そのまま炎をまとった剣が、ルティーナへ振り下ろされる。


「熱っ――!」


だが。

その瞬間。


エリアルの足元で爆発が起こる。


「なっ!?」


先ほど撒かれた手裏剣の一枚。


(ばく)】。


その起動だった。

爆風に、エリアルの動きが一瞬止まる。


そして再び。

視線が周囲の手裏剣へ向いてしまった。


(また……読まれてる……!)


ルティーナは新たなクナイを取り出す。

切れた糸を結び直すと、再び頭上で回し始めた。


今度のクナイには【(みず)】が描かれていた。


(起動っ)


水が周囲へ散る。

だがエリアルの炎剣が即座に蒸発させる。


水蒸気が広がり、視界が白く霞む。


「霧……!」


ルティーナはそのままクナイを放った。

エリアルは横へ回避しようとする。


ルティーナは短剣へ視線を向ける。

――その瞬間だった。


エリアルの背後から、弾き飛ばしたはずの短剣が襲い掛かる。


「っ!?」


気づくのが、一瞬遅れた。


霧。

視界。

そして意識が前へ向いていた。


短剣はエリアルの魔剣を持つ手へ直撃する。


「ぐっ!」


魔剣がエリアルの手から離れた。

その隙を、ルティーナは逃さない。


一気に懐へ飛び込む。


左掌へ描かれた【(はじく)】――。

試合開始当初からすでに描かれていた【(ちから)】で強化された肩。


「――っ!」


掌底がエリアルの腹部へ叩き込まれる。


衝撃。

エリアルの身体が宙を舞う。


――そのまま場外へ弾き飛ばされ、城壁に激突する。


「がはっ……!」


崩れ落ちる。


「な……」


ルティーナは静かに息を吐いた。

短剣には、見えなくした別の糸巻きクナイの糸が結び直されていた。


そして糸全体へ幾重にも描かれた【(ちぢむ)】――。


起動することで、糸を強制収縮した。

つまり弾かれた短剣を、背後から高速で引き戻したのだ。



エリアルは場外で膝をついたまま、立ち上がれない。


「まさか……格闘もできるとはね……くっ」


そしてその場に倒れこむ。

しかし苦痛の表情はなく、晴れ渡ったような笑顔だった。


「――次は負けないよ……」




ブランデァが高らかに叫ぶ。


「エリアル選手、戦闘不能とみなしっ――」

「武闘大会優勝はっ! ルナリカ=リターナぁぁぁっ!!」


「「「「「「おおおおおおおおっ!!」」」」」」


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