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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第77話 準決勝

ルティーナとサーミャが向き合った瞬間、空気が変わった。


――仲間同士の闘いが始まる。


闘技場の整備が終わり、ついに準決勝開始の宣言がされる。


挿絵(By みてみん)


二人はこの日を待っていたかのように、笑顔で向き合いながら壇上に登る。

エリアルも控室ではなく、闘技場付近へ用意された椅子に座り、二人の試合を観戦することとなった。



「では準決勝っ! 試合開始っ!」



――にもかかわらず、すぐに闘いは始まらなかった。


互いに視線を交わし、どこか楽しげに笑う。


「ミヤ、あなたと本気で戦う日が来るなんて、思ってもみなかったわ」


「そうだな。あたいはずっとやりたかったぜ」

「戦いで語ろうじゃねぇか、ルナっ」


「あははっ」

「相変わらず戦闘狂ね」



だが、その笑みの裏では、互いに相手を警戒していた。


(ルナ、本当に任せて大丈夫か?)

(相手はミヤだぞ)


「(もちろん)」

「(……この試合、私にやらせてよ)」


馬琴(まこと)は短く息を吐いた。


ルティーナとサーミャ。

互いに手の内を知り尽くした者同士。


――だからこそ厄介だった。


(ミヤは、お前の『能力』の弱点を知ってる)

(しかも、次の相手――エリアルにも、なるべく手の内は見せたくない)


「(うん、わかってる)」


ルティーナは静かに頷く。

そして同時に、二回戦でドルントと戦った時のことを思い出していた。


罠。

誘導。

相手に『考えさせる』怖さ。


あの戦いで、ルティーナは理解したのだ。

真正面から押し切るだけが戦いではない……と。


相手の思考を縛ることもまた、立派な攻撃なのだと――。



「だが悪ぃな、今日は優勝させてもらうぜ」


「あら? シャルから杖を返してもらった方が良かったんじゃない?」


「言うじゃねぇか」


サーミャが口角を吊り上げる。

だがその視線の先はルティーナでなく、主賓席を見つめていた。


「(くそっ……あの野郎、高みの見物して笑ってるに違いねぇ)」

「(絶対見返してやるっ!)」

「さぁ、いくよっ、ルナ!」


二人は動き始める。


「『フレイム・ランス――炎の槍――』っ!」


(いきなりかっ!?)


轟音と共に、炎の槍が一直線にルティーナへ襲いかかる。


ルティーナは動じない。


(みず)


手のひらを突き出し、水を噴射する。


炎と水がぶつかり合い、白い蒸気が爆ぜた。


「「「「お、おいっ! あのお嬢ちゃん、手から水を出したぞっ!」」」」

「「「「水魔法かっ!? いや、そんな魔法はねぇぞ!」」」」


観客席がざわめく――。

しかし、サーミャは止まらない。


「さすがに詠唱速度なら、あたいの方が上だよなぁっ!」


複数の『ライトニング・アロー』が空中に展開される。


次々と放たれる雷矢。


サーミャは理解していた。

ルティーナの『能力』は強力だが、大技ほど準備に時間がかかる。

だからこそ、息をつかせず攻め続ける。


――それが正解だと。



(ちゃんと対策してきてる……)


「(でも、それはこっちも同じよ)」


ルティーナは避けない。

代わりに、数本のクナイを放つ。

クナイへ吸われた雷が、軌道を乱され四方へ散った。


「なっ!?」


「その程度、力を使うほどでもないわ!」


サーミャは舌打ちしながら回避する。



「ねぇシェシカお姉ちゃん」

「ミヤお姉ちゃん、すごく楽しそう……」


「そりゃそうだよ」

「ルナリカのこと、本気で認めてるからね」


「ルナお姉ちゃんも?」


「きっとね」


カルラは、小さく胸元を握りしめながら二人を見つめていた。



一方、闘技場では――。


「そろそろ手探りは終わりにしない?」


ルティーナが静かに言う。


「そうだな、なら仕掛けて来なっ」


ルティーナは手裏剣を四枚取り出した。


一枚ずつ、間隔を空けて投げる。


(……ハッタリか?)


サーミャは眉をひそめる。


ルティーナの得意な、仕込み。


爆発か。

罠か。

それとも――。


考えるより先に、サーミャは氷魔法を放った。


「『フリーズ・ゲージ――冷凍――』っ!」


飛来した手裏剣は瞬時に凍りつき、甲高い音を立てて地面へ砕け散る。


その瞬間。

ルティーナが地面に触れた。


(とげ)


地面から無数の棘が噴き出す。


「読めてんだよっ!」


サーミャは即座に『アース・クエイク――地震――』を発動する。

地面ごと棘を砕きながら、『フレイム・ランス――炎の槍――』を構え――放つ。


その瞬間だった。


(かがやき)


「っ!?」


閃光――。

視界を奪われたサーミャの炎槍が逸れる。


だが、その隙こそが本命だった。

ルティーナは既に地面へ、新たな文字を描いていた。


(きり)


次の瞬間、濃霧が闘技場全体を包み込む。



「「「「なんだあの霧はっ!?」」」」

「「「「見えねぇっ!? 何が起こってるんだ!」」」



「罠師の真似かよっ!」


サーミャは『ストーム・サイクロン――旋風――』を放ち、霧を吹き飛ばそうとする。

だが、ルティーナの周りには次々と霧が湧き上がる。


「しまった……!」

「ルナが止めない限り、その場所から無限に発生するんだった」


サーミャは地面を睨みつけた。


再び『アース・クエイク』で霧が発生する地面を破壊しようとする。


だが、霧は止まらない。

闘技場を呑み込み、場外へまで溢れ始めていた。


「(起動前なら、文字を壊せたけど……発動してるから無理よ、ミヤ)」


霧の中にルティーナは静かに息を潜める。


そして思い出していた。


二回戦。

ドルントの罠。

見えない脅威が、人をどれほど迷わせるのか。


今、自分はそれをやっている。

相手の思考を縛り、自由を奪う戦いを――。


(なるほどな……)

(だから、何も仕込んでない手裏剣を投げたのか)


「(うん)」

「(疑い始めた時点で、人は自由に動けなくなるからね)」


(お前……罠師の才能があるんじゃないか?)


「(えへへ)」



霧はサーミャの腰辺りまで達し、闘技場を完全に覆い尽くしていた。


「(くそっ、さっきの手裏剣……絶対、何かある)」

「(下手に動けば、誘導される……!)」

「ルナっ! どこに隠れた!」


サーミャは火魔法を無差別に乱射する。


「こうなったら、全部吹き飛ばしてやるっ!」


爆風。

轟音。

炎。


霧を吹き飛ばしながら、ルティーナの位置を暴こうとする。


「どこだっ!?」

「出て来いルナぁぁっ!!」


場外まで溢れた霧は、ルティーナの姿を完全に隠していた。

そして霧に紛れ、闘技場から場外へ降りていた。


そして狙いは、サーミャの背後へ回り込むこと。


――ルティーナは静かに闘技場に触れる。


(こおる)


大きくなる文字が、サーミャの足元へ到達した瞬間――。


(――起動っ)


サーミャの足元が一気に凍りつく。


「しまっ――!」


慌てて『フレイム・インボルブ――火炎包囲――』を発動し、炎で溶かそうとする。


しかし一手遅かった。

霧が晴れ始める。


そこには。

背後にしゃがみ込んでいるルティーナの姿が現れる。


「いつの間に!」


「都合よく、自分の周囲だけ溶かす魔法なんて無いわよねっ!」


凍りついた脚が邪魔をし、後ろへ身体を向けられない。


「くそ――っ!」


「ミヤ、これで終わりよ」


ルティーナは、【(かみなり)】を描き込んだクナイを、サーミャの足元へ突き刺す。


「氷を溶かした時点で――詰みだったのよ」


(起動っ)


雷撃が溶かされた水を伝い、サーミャの全身を貫いた。


「――ぁぁぁぁっ!」


サーミャの体が大きく震える。

次の瞬間、その場に崩れ落ちたのであった。


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