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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第73話 二回戦 ~後編~

サーミャの勝利が告げられた瞬間、ルティーナは静かに息を吐いた。


ブライアンは、サーミャに本気の殺意がないことに違和感を覚え、冷静さを取り戻し始めていた。



「では、勝者のサーミャさんっ! 一言お願いしますっ!」


「おぉーいっ! アンハルトぉ~っ!」


サーミャは観客席へ向かって大声を張り上げる。


「こいつに事情説明してやってくれよ~っ!」

「あたい、これからルナと大事な試合があるからさっ!」


「(さっきから伝言みたいになってきてないかっ……?)」


ブランデァは苦笑しながら頭をかく。


「あ、ありがとうございましたっ!」

「では続いて、第三試合へ移りますっ!」



サーミャはブライアンへ歩み寄ると、小さく息を吐いた。


「ヴァイスが、あたいの目の前で死んだのは事実だ」


「……」


「でも、殺したのはあたいじゃない」


ブライアンは唇を噛みしめる。

その表情には、怒りだけではない迷いが滲んでいた。


「さっきも言ったけど、あたいには用事がある」

「続きは、あそこの観客席にいるアンハルト達に聞け」


「……」


「あたいの言葉よりは信用できるだろ? 口裏合わせする時間もない」

「話を聞いて、それでも許せないなら――そん時だ」


しばらく沈黙した後、ブライアンは視線を逸らしたまま呟いた。


「……準決勝、負けんなよ」


「あぁ」


サーミャはニッと笑う。


「ありがとな」


ブライアンは、もう剣を向けていなかった。





「続いて第三試合っ! 選手前へっ」



ロザリナ対ワイズ



闘技場へ姿を現した瞬間、ロザリナはワイズを真っ直ぐ睨みつけた。


「さぁて――!」

「よくもヘレンを滅多打ちにしてくれましたね……!」


ロザリナの声には、怒りが滲んでいた。


「仇討ちさせてもらいます!」



「ロザリナぁ~、勝手に殺さないでよぉ~」


観客席にはヘレンの姿があった。


「あっ! ヘレンお姉ちゃん!」

「もう体は大丈夫なんですか!?」


「うんっ! ロザリナのおかげで元気になったよ!」


「でも試合前に余計な魔力使わせちゃった……」


「大丈夫よ」


シェシカが腕を組みながら笑う。


「あれぐらいでロザリナの魔力は尽きなやしないわ」




ロザリナの中に怒りが充満し、魔力がどんどん上がっている。


脳裏に焼き付いている。

血塗れで倒れたヘレンの姿が。

彼女をそうさせる。


「……絶対に許しません」


ワイズは肩をすくめた。


「おぉ~怖い怖い」



「では第3試合――開始っ!」


ワイズは、ヘレンに壊された人形の代わりを用意し、二体の人形を前に立たせる。

しかし、動きはゆっくりしているが怪しい動きをしていた。


「さぁて、さっきの女みたいにならないように注意するんだな」


ロザリナは慎重に人形の動きを警戒する。


「(動きが……)」


人形は両手を剣にしフラフラと動きながら、ロザリナの両脇に移動する。

歩いているというより、地面を滑っているような動きに違和感を覚える。


しかし、ロザリナは我慢ができなかった――。


「何よ! じれったい!」


ロザリナは身体強化された脚力で、一体の人形の後ろに回り込む。

そのまま回し蹴りを叩き込み、そのまま場外まで蹴り飛ばした。



「「「「おおおおっ!!」」」」



観客席がどよめく。


「すげぇっ! 回復師の動きじゃねぇぞっ!」



「こりゃ驚いた」


ワイズは口元を歪めた。


「二体同時でも軽々と捌くか――」


「こんな鈍い動き、あなたの盾替わりじゃない!」

「壊さなければ、ヘレンみたいにされないんでしょっ!」


その瞬間――。


吹き飛ばされた人形の腹部から、猫型の人形が飛び出した。


計四体。


新たに現れた猫型人形は、先ほどと違う。

飛び回るような軽やかな動きと鋭利な爪でロザリナに襲いかかる。


「っ!」


ロザリナは回避を続けながら眉をひそめた。


(小さいのが邪魔っ……!)


剣を持つ人形は牽制。

本命は素早い猫型の人形。


ワイズへ近付く隙を作らせない。


「どうした?」


ワイズが笑う。


「さっきの女みたいになるのが怖いか?」


「……っ!」


ロザリナの脳裏に、倒れ込むヘレンの姿が蘇る。

身体の自由を奪われ、一方的に切り刻まれていたあの光景。


(回復魔法じゃ、血は作れない)

(ヘレンは貧血みたいな症状だった……)


だからこそ。

ロザリナは人形は『壊せない』と考えていた。


「どうした? 近付いてこないのか?」


「小さいのが邪魔なんですよっ!」


ロザリナは剣型人形の腕を掴み、そのまま場外へ投げ飛ばす。


だが、その直後。


「っ……!?」


左腕から急に力が抜けた。


「な、に……これ……?」


感覚はある。

なのに、腕が思うように動かない。


しかも。


(自動治癒が発動しない!? 状態異常じゃない?)


初めて、ロザリナの顔に焦りが浮かぶ。

ワイズは、その表情を見て嗤った。


「ようやく効いてきたか」


「……何をしたの?」


「簡単な話さ」


パチーン!


ワイズが指を鳴らす。


その瞬間。

ロザリナの身体に、うっすらと何かが絡み付いているのが見えた。


「……糸?」


いや、違う。

よく見ると、その『糸』の上で小さな何かが蠢いている。


「まさか……」


「そう」

「『蚊』だよ」


「――っ!」


ロザリナの背筋に悪寒が走る。


「人形を壊した時、中から大量の『蚊』を撒いておいたのさ」


「……!」


「お前、薬が効かないタイプだろ?」


「だから最初から別の手を考えてた」


ワイズは愉快そうに続ける。


「闇魔法『ダーク・マニピュレート』は、生物を操る魔法――」


「そして、生き物が『小さい』ほど大量に操作できる」


その瞬間。

ロザリナの脳裏で、過去に聞いた闇魔法の説明が繋がった。


(小さい生き物ほど……大量に……!)


つまり、この男は。

『無数の蚊』を、一斉に操作している。


「さらに『ダーク・インビジブル――透明化――』が仕掛けられていた」

「だから、お前には見えなかった」


ロザリナの身体に巻き付いた透明な糸。


「人形は囮。本命はこっちだ」


ワイズが笑う。


「お前が人形に意識を割いてる間に、身体に巻き付かせてもらった」


「外道……!」


「褒め言葉として受け取っとくよ」


その瞬間。

猫型人形が一斉にロザリナへ飛び掛かる。


「これで終わりだ」


人形が膨れ上がる。


(爆発――!?)


直後。

轟音。

爆炎が闘技場を包み込んだ。


「いやぁぁぁっ! ロザリナぁぁぁっ!!」


「ロザリナお姉ちゃぁ~んっ!」


悲鳴が響く。


だが。

ワイズは勝利を確信したように笑った。


「安心しろ」

「死なない程度に火薬は調整してある」



ブランデァは煙が晴れるのを待つ。


「ぼけっとしてねぇで、勝どきを――」


「まだ試合は終わってないぞ、ワイズ」


「……っ!?」


爆煙の中から、声が響いた。


次の瞬間。

光が弾ける。


「『シャイン・ウォール』……!」


爆炎を押し返すように、黄金色の障壁が展開されていた。


その中心に。

ロザリナが立っている。


「ふぅ~……危なかったぁ」


彼女を包み込んでいた高密度の防御壁が、ゆっくりと消えていく。

そして――やけど傷は完全に癒えていた。


身体に絡み付いていた蚊の糸も、爆発によって焼き切れていた。


「そして――」


ロザリナが顔を上げる。


「あなたを守るものは、もうないわ!」


「なっ――」


一瞬だった。

ロザリナは爆煙を蹴り裂き、一気にワイズの眼前へ踏み込む。


呆然とするワイズ。

その顔面へ――。


「あなたに確認しません!」

「これは、ヘレンからですっ!! 受け取って下さい!」


渾身の拳が叩き込まれた。


凄まじい衝撃音。


ワイズの身体が宙を舞い、そのまま場外まで吹き飛ばされる。


「ワイズ戦闘不能っ!! 第3試合勝者、ロザリナ=ノザラぁぁぁっ!!」


「「「「「「おおおおおおおっ!!」」」」」」


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