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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第72話 二回戦 ~中編~

……勝った。

そう理解するまでに、少し時間がかかった。


ルティーナの完勝という予想外の展開に、闘技場は大きく沸き上がっていた。


「おいおいっ、あのお嬢ちゃん勝っちまったぞ!」


「いや、ドルントが勝手に自爆しただけだろ!」

「あの子、なんか投げてただけじゃねぇか!」


観客席では、未だ半信半疑の声が飛び交っている。


だが――。


「ど~だっ! 見たかぁ~っ! ルナお姉ちゃんは強いんだからぁ~っ!」


カルラは満面の笑みで飛び跳ねていた。


「そうじゃそうじゃっ!」

「鑑定士のわしが太鼓判を押しとるんじゃ! ルナリカを舐めるでないわっ!」


「「「(いや、『職業無し』って鑑定したのお前だろ……)」」」



そんな空気をよそに、武器屋タリスが商売を始めていた。


「ところで、あの嬢ちゃんが使ってた武器、気にならねぇか?」


「なんだありゃ?」


「手裏剣とクナイって武器だ」

「興味ある奴ぁ、あとで店に来てくれ!」


ちゃっかり宣伝するタリスを見て、オリハーデは豪快に笑った。


「はっはっは! おぬし、しっかり商売しとるのぉ!」

「お前さんさもルナリカを応援せんか?」



(なんか変な応援団が出来上がってるんだけど……)


ルティーナは若干引き気味だった。


「ではっ! 勝者ルナリカ=リターナさんっ、一言お願いしますっ!」



ブランデァに促され、ルティーナは東門へ視線を向ける。


「――サーミャ=キャスティルっ!」


東門へ向けられたその叫びに、観客席がざわつく。


「いつまで一人でウジウジしてんのよっ!」

「過去の因縁なんて、とっとと清算してきなさいっ!」


一瞬だけ、東門でサーミャの表情が止まる。


「先に待ってるわよ!」


その一言で、サーミャの顔から険しさが消えた。


「(ふん……言ってくれるじゃないか、ルナ)」

「(そうだよな。悩んでても仕方ないか)」


パチーンっ!


両手で顔をひっぱたく。

控室に響き渡る音に、他の冒険者は驚く。


「(ルナありがとよ! 目が覚めたぜ)」




一方、貴賓席ではノキア王が不満げに腕を組んでいた。

ドルントの煙幕によって、肝心のルティーナの『力』を見切れなかったからだ。


「(くそ……全く、見えなかった)」

「(だが、準決勝まで行けば、さすがに隠しきれまい)」


ノキア王は、静かにルティーナを見つめる。



(おいルナ、あれが王様みたいだな)


「(そうね。でも、なんか凄い見られてない?)」

「(目ぇ合った気がするんだけど……)」





そして――。

第二回戦、第二試合。

サーミャとブライアンが闘技場へ上がる。


空気が変わった。

互いの視線がぶつかり、殺気が走る。


挿絵(By みてみん)


「よぉ、ブライアン」


サーミャが低く笑う。


「やっと戦えるな」


ブライアンは剣を構えたまま、鋭く睨みつける。


「ふん……やっと仇が討てる」

「兄貴を殺したてめぇだけは、絶対に許さねぇ」


サーミャは、その言葉に目を細めた。


「……やっぱり、そういうことか」

「誰に吹き込まれ――」


ブライアンはサーミャの言葉を遮るかのように怒りをあらわにする。


「シラ切ってんじゃねぇぞ!」


ブライアンの怒号が響く。



「いきなり物騒な空気ですがっ! 第二試合――開始っ!」



開始と同時に、サーミャは魔法を放った。


「『ライトニング・アロー』っ!」


複数の雷矢が一直線に駆ける。


「ちっ!」

「無詠唱で大量の――化け物め!」


だがブライアンは即座に小剣を目の前に投げ捨て、避雷針代わりにする。

そして雷が逸れ一気に踏み込む。


「魔法使いはこういう速攻が一番面倒なんだよなっ!」


鋭い突き。

しかし、サーミャは落ち着いている。


「『ロック・ウォール――岩壁――』っ!」


轟音と共に岩壁が隆起し、突撃を阻む。


「あたいが喋ってる最中に!」

「落ち着きがねぇぞ! 人の話を聞けって言ってんだろっ!」


「うるさい!」


サーミャは風魔法と土魔法を織り交ぜながら距離を維持する。

だが、ブライアンの剣の技術は明らかに高かった。


高速。

正確。

迷いがない。


(……ほんと、ヴァイスそっくりだな)


サーミャは苦笑する。


「見れば見るほど、あいつを思い出すよ」


「黙れっ!」



ブライアンの斬撃がさらに激しくなる。


「その剣で殺されるなら本望だろっ!」


「はぁ?」


サーミャの眉が跳ねた。


「あんた、あたいとヴァイスが付き合ってたの知らないのか?」


「……はぁ?」


一瞬だけ、ブライアンの動きが止まる。


「ふざけんなっ! 兄貴がお前みたいなズボラ女を選ぶかよ!」


「……ズボラか――」


馬鹿にされたはずのサーミャだったが、なぜか笑っていた。


「(ほんと兄弟だな、こいつら……)」


「名前は知らねぇが、あいつが言ってたんだ!」

「てめぇが、兄貴の首を吹き飛ばしたってな!」


――その瞬間。


サーミャの表情が凍りついた。


「……首を?」


それを知っているのは、あの場所にいた者だけ――。

脳裏にドグルスの顔が浮かぶ。



「俺はずっと、お前を探してた!」

「兄貴の仇を取るためにな!」


怒号と共に斬撃が襲う。

だがサーミャは冷静に魔法で対処する。


それでもブライアンの怒りを利用するように言葉を重ねていく。


「なら、なんで闇討ちしなかった?」

「武闘大会なら、あたいを『殺』しても罪にならない――そう思ったんだろ?」


「っ!」


ブライアンの表情が歪む。


図星だった。


「黙れぇぇっ! 黙れぇぇっ!」


感情に任せた剣が乱れる。

その隙を、サーミャは見逃さなかった。


「『ライトニング・ニードル――雷針――』っ!」


ゼロ距離の超高速の雷針が炸裂する。


「ぐぁっ!?」


ブライアンの腕に刺さり痺れる。

それでも耐える――。

信念で剣を離さない。


「ちっ、根性あるじゃねぇか」


サーミャは即座に距離を取り、複数の『ロック・バスター――岩砕螺旋撃――』を展開する。

さらに、氷魔法の詠唱を開始した。


「な、なんだその魔法構成……!」


「同時に別系統だと!?」


「『フリーズ・ブリッド――氷の弾丸――』っ!」


岩弾が氷を纏って放たれる。

ブライアンは咄嗟に盾を構えた。


だが次の瞬間。

盾ごと腕が凍りつき、思わず手を放してしまう。


「しまっ――!」


気付いた時には、サーミャの周囲に再び『ライトニング・アロー――雷の矢――』が広域に展開されていた。


――完全な詰み。


「……負けだ」


ブライアンは力なく呟いた。



「ブライアン=クレッサ降参っ! 第2試合勝者っ! サーミャ=キャスティルっ!」


歓声が爆発する。

だがブライアンは、うつむいたままだった。



「……殺せよ」

「兄貴みたいに」



サーミャは呆れたように息を吐く。


「あたいは、あんたに怨みはないんだが?」

「そ、それによ……弟になってたかもしれないんだしな」


「……は?」


「それにさ――」


サーミャは真っ直ぐブライアンを見た。


「本当に口封じしたいなら、この試合で確実にあんたを葬ってる」

「それをしなかった理由、自分で考えればいいさ」


ブライアンは何も返せなかった。


「……わかったよ」

「話を聞かせてくれ――」


その言葉に、サーミャはニヤリと笑う。


「よぉ~し、素直な子はお姉さん大好きだぞっ」


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