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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第66話 一回戦 ~其ノ壱~

空へ向けて、幾重もの花火が打ち上がる。

轟音と歓声が重なり合い、ノモナーガ王国最大の祭典――『武闘大会』が、ついに幕を開けた。


闘技場を埋め尽くす観客たちは、すでに熱狂の渦の中にいた。


「いよいよ始まったわね」


「しかしよぉどいつもこいつも、殺伐としてんな」

「まだ当たるとしても二回戦目だってのに、ガン飛ばしやがって!」


サーミャは選手たちを睨み返す。


国王の開会宣言が始まる中、本戦出場者たちは東西それぞれの控室へ集められ、試合開始を待っていた。


「最後まで対戦相手がわからない仕組みってわけですね」


控室の壁にもたれながら、ロザリナが小さく呟く。



――そこへ、西門担当の受付嬢レミーナが現れる。


「皆様、本戦出場おめでとうございます」

「西門担当、ギルドの受付嬢と言えば! そう、レミーナ=オズールです」


(その言い回し、かなり気に入ってるな……)


「――本日はよろしくお願いいたします」



柔らかな笑みを浮かべながら、レミーナは説明を始めた。



一つ。予選通過時に配布された番号札を元に、東西それぞれ抽選された番号同士で対戦。



「私は最後に通過したから『8』なのね」


「私はぁ〜『6』ですぅ」



二つ。呼ばれた選手は闘技場へ上がり、名前と職業を叫びながら入場。



「(名前叫びながら登場って何それぇぇぇぇっ!?)」

「一番目は死んでもなりたくないね」


「だな」



三つ。偶数試合の勝者は東門へ移動。



「もし一回戦がみんな奇数か偶数試合なら……」


「なるほど! 二回戦でも当たらないってことね!」


(ないない! 絶対ありえない!)



四つ。他選手の試合は小窓から観戦可能。



「情報収集は自由なんですね」


「観察されながら戦うっうのは、あんま気分はよくねぇな」



「以上です!」

「皆様のご武運をお祈りしております」





そして会場では――。

国王の挨拶が終わろうとしていた。


同時に、ひときわ大きな歓声が闘技場を揺らした。



そこには一人の男が立っていた。


「さぁぁぁっ! 皆様、お待たせしましたぁぁぁぁっ!!」


無駄に通る声が会場へ響いた。


「本大会の進行および主審を務めますっ!」

「ギルド長、ブランデァ=イーグランでございますっ!!」


「(えっ、あの人ギルド長なの!?)」


立派な体格に、どこか怪しい髭。

それだけではない。

なぜか喋る時、妙に語尾を強調する癖があった。


(なんかテンションおかしくない!?)



「では早速ぅっ! 一回戦第一試合の抽選を行いますっ!!」


ブランデァは勢いよく西門の抽選箱へ手を突っ込んだ。


「西門――八番っ!! 闘技場へっ!!」


「っ!?」


控室の冒険者が一斉にルティーナを見つめる。


「ぷっ……いきなりルナじゃないですか!」

「一番目は嫌っていってたのに……ぷっ」


ロザリナが吹き出した。

ルティーナは怒る以前に、『もう帰りたい』という思いで頭がいっぱいになる――。



「八番っ! どうしましたかぁ!?」

「早く闘技場へどうぞぉっ!」



「ほらほら、ルナ、失格になっちまうぞ」


「(む、無理無理無理っ!)」

「(マコトぉぉぉぉっ!!)」


(拠点……ほしいんだろ?)



ルティーナは渋々、西門から姿を現す。

だが――無情にも、観客の大歓声がルティーナを包み込む。


「おっとぉぉっ!? 西門から小柄な選手が登場ですっ!!」


「「「「「子供じゃねぇかぁぁぁっ!!」」」」」


観客席から、どよめきと爆笑が湧き起こる。



ルティーナは、こめかみに青筋を浮かべながら自己紹介を始める。


「わ、私はっ!! ルナリカ=リターナっ!!」


「(うぅぅぅぅ……っ!!)」

「(もうヤケよっ!!)」


「こ、これでも十九歳なんだからねっ!!」

「職業無しっ!! 白の冒険者よっ!!」


会場がざわついた。


「(マコト、なんて言えばいいのよー)」


(……)


「その笑い……後悔させてあげるわ!」

「私の無双を止められるもんなら――止めてみなっ!!」


一瞬の静寂。


――次の瞬間。


「「「「ぶはははははっ!!!」」」」


大爆笑が会場を埋め尽くす。


「(うわぁぁぁぁぁっ!!)」

「(絶対、ミヤ達……笑い転げてるに決まってるわっ!!)」


(ぷっ……よかったぞ、ルナ)


「(マコトぉ〜後で覚えてなさいっ!!)」




「『職業無し』で『白』とか一瞬で終わるだろぉぉぉっ!!」


その時。


「うるさぁぁぁいっ!!」

「ルナお姉ちゃんを馬鹿にするなぁぁぁっ!!」


観客席からカルラの声が響いた。


「お姉ちゃんは超超超〜っ強いんだからねぇぇぇっ!!」



「(カルラちゃん……っ)」


ルティーナは少しだけ救われた気持ちになった。



一方その頃、東門控室。

西門の選手情報を聞いた冒険者たちは色めき立っていた。


「職業無しだぁ? こりゃ大当たりじゃねぇか」


「俺の番号を引いてくれ! ギルド長っ!」


それを冷めた目で見る剣士。


「ふん、つまらん」


しかし、明らかに青ざめている男もいた。


――武闘家ブロンダル。


脳裏に蘇る。

あの悪夢。

小柄な少女に、一方的に叩き潰された記憶。

『8』番の札を持つ手が震える。



「では東門の抽選ですっ!」


ブランデァが玉を引く。


「東門も――八番ですっ!!」




「八番の方ぁ? どうしましたかぁ?」



「八番……って、ブロンダル」

「お前じゃねぇか?」


「ついてるなぁ!」


「え……あ、あぁ……その……」


ブロンダルの顔から血の気が引いていく。


「……持病が……っ」


「は?」


「急に……持病がぁぁぁっ!!」


そして彼は、その場を逃げだした。



――数分後。

ブランデァが困ったように宣言する。



「お待たせしましたっ。情報が入りましたっ」

「東門八番――ブロンダル選手、体調不良により棄権っ!!」

「よって――」



「ルナリカ=リターナっ!! 一回戦、不戦勝ですっ!!」



「「「「「うおおおおおおっ!!」」」」」


「戦わずに二回戦進出かよっ!!」

「ツイてやがるな」



だが、当の本人は――。


(……恥ずかしい思いしただけじゃん!)



結局、ぐったりした顔で西門の控室へ戻ってきた。


「ぷっ……おつかれルナ」


「まさか、相手が肉団子だったとはな?」

「そりゃ逃げるわ」


ロザリナは悔しそうな顔をする。


「私の相手だったら、次は地面に埋めてさし上げたのに」


(リーナ……怖いよ)




「さてっ! 気を取り直して第二試合ですっ!!」


ブランデァが再び抽選を行う。



西門七番――銀の武闘家ヘルディン。

東門六番――銀の罠師ドルント。



二人の自己紹介後、試合が開始される。



「へぇ……罠師なんて職業あるんだ」


ルティーナは、自分の次の対戦相手の観察を始める。


「魔物相手に罠張る……結構ずるがしこい奴が多いぜ」


「でも闘技場じゃ不利じゃない? 罠を準備する時間ないでしょ?」


ロザリナの言葉通り、試合開始直後から武闘家ヘルディンが猛攻を仕掛ける。



――ドルントは逃げるだけ。

まともに戦おうとしない。


「なんだありゃ」


「逃げ回ってるだけじゃん」


観客席から野次が飛び始める。


だが。

ドルントだけは、薄く笑っていた。


その瞬間。


――ドォンッ!!


闘技場の地面が爆発しはじめる。


「っ!?」


さらに。


ドゴォォォン!!


連鎖する爆発。

ヘルディンの周りが次々と吹き飛ぶ。


「なっ……!?」


武闘家は回避しきれず、爆煙に飲み込まれた。


歓声が止まる。

誰も状況を理解できていない。


煙が晴れる。

そこには、倒れ伏すヘルディンの姿。


「ヘルディン戦闘不能っ!!」

「第二試合――勝者ドルント=ブレバッハァァァッ!!」



「「「「「おおおおおおおーーーっ!!!」」」」」


会場が揺れた。

ルティーナは小窓の奥で目を細める。


「(罠……仕掛けてた?)」


(闘技場にすでに仕掛けられていたなんて――ありえない!)


単なる奇策ではない。

相手を誘導し、罠の上で踊らせる戦い方。


気づけば、武闘家は最初から罠の上で踊らされていた。


(次の相手か……厄介だな)

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