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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第65話 異国感

『生国祭』の一日目を満喫したルティーナ達は、日が沈む頃になって宿へと戻ってきた。


すると、部屋の扉を開けた瞬間――。


「あぁぁ~……ルナぁ~……おかえりぃ~……」


ベッドに転がるシャルレシカが、ぐったりと手を伸ばしてきた。


「シャル、少しは楽になったの?」


「ふぁ~い……でもぉ、お腹ペコペコですぅ……」


「あははっ、懲りないなぁ~」

「そう思って、お土産買ってきたわよ」


「わぁ~いっ! ルナぁ大好きぃ~っ」


途端に元気になるシャルレシカ。


だが、その横では――。


「……よぉ、ルナぁ……」


まるで数日寝込んだ病人のような顔色のサーミャが、壁にもたれかかっていた。


「やつれた、おばさんがいる……」


「魔法ぶち込むぞっ!」


サーミャは即座に怒鳴り返す元気だけはある。

――しかし実際、サーミャはまだ二日酔いから完全には復活できていなかった。


「もぉ~……だから言ったじゃないですかぁ」

「食べ過ぎ飲み過ぎなんですよっ!」


呆れながらも、ロザリナは回復魔法をかけていく。


淡い光に包まれると、サーミャの青白い顔色が少しずつ戻っていった。


「ふぃ~……生き返ったぜ……」


「おばさんが若返った!」


「しばくぞ!」



そんなやり取りをしながら、ルティーナは今日の祭りの様子を話し始めた。



各国の行商人。見たことのない食べ物。珍しい露店。

そして、祭りの規模が想像以上だったこと。



「へぇ~……今の『生国祭』って、そんなことになってんのか」


サーミャは少し驚いたように目を細めた。


「あたいの知ってた二年前は、ここまで他国の商人なんて来てなかったぜ?」


「やっぱり『武闘会』の影響かな?」



そこで馬琴(まこと)が小さく呟く。


(……例の情報収集の件)


ルティーナもすぐに意図を察した。


未知の国。

各地の文化。

今の祭りは、まさに情報の宝庫だった。


そして、痣の情報。



「ミヤ、明日さ。一緒に祭り回ってくれない?」


「あん? いいけど?」


だがその瞬間――。


「えぇ~っ!? じゃあ私はお留守番ですかぁ~?」


シャルレシカが不満そうに頬を膨らませる。


すると、ロザリナはシャルレシカの肩を叩く。


「私達はアンハルトさんのところで、本戦に向けて対人戦の練習よ」


「ひぃぃ~っ」


サーミャは笑いながら納得した。


「そうだな今回は試合なんだから、ちゃんと致命傷にならない魔法の使い方とか勉強してきな」


「ひぃぃ~」


「「「あははは」」」





そして翌朝――。

ルティーナとサーミャは祭りへ。

ロザリナとシャルレシカは『碧き閃光』の拠点へ向かうことになった。


「でもよぉ、あたいを同行させるなんて……考えたなぁ」

「確かに、あたいの知らねぇ店や物があれば、そこに情報が転がってるかもな」


「よろしくね、ミヤ」


「おうっ!」


そう言った直後だった。

サーミャは目を輝かせながら店を指定する。


「ルナ。まずはあそこだ」


「……え? いきなり?」


サーミャが指差した先。

そこにあったのは――明らかに酒の露店だった。


「ゲッ!? 朝っぱらからぁ!?」



「さぁさぁそこの色っぽいお姉さんっ! 一杯どうだいっ!」


「おっちゃん! その紫……酒なのかい!?」


サーミャは興味津々で木杯を受け取る。


「これは葡萄酒ってやつさ」


「ぶどう……酒?」


「果実から作る酒だよ」


(あれは、ワインじゃないか!)


「(マコトの世界にもあるの?)」


(普通にあるぞ)

(そういえば――誉美(ともみ)も好きだったなぁ~)


「(はいはい、のろけは後で聞くわ)」


ルティーナ達が会話している間――。

サーミャは、すでに三杯目を一気に飲み干していた。


「ぷは――っ!? なんだこれ、うめぇぞっ!!」


一瞬で目が輝く。


「甘ぇのに酸味もあって、ごくごく飲める!」


(どこの食レポだよ……)


「いい飲みっぷりだな姉ちゃん! 気に入ったかい?」


「おうっ! 樽でくれっ!」


「買うの早っ!? しかも樽って――」


「ルナ、運ぶのは例のやつで頼むぞ」


(便利屋だな……ルナ)


店主は嬉しそうに笑った。


「実はこれ、うちの果樹園で採れた初物なんだ」

「どうしても『生国祭』で出したくてなぁ」


「へぇ~?」


「この祭りなら、いろんな国の人が集まるだろ?」

「だったら、一番最初に飲んでもらう場所はここしかねぇって思ったのさ」


男は誇らしげに胸を張る。


「この酒、どこの国の物なんですか?」


ルティーナの問いに、男は答えた。


「バルステン王国さ」


「バルステン……?」


サーミャが小さく反応する。


「それ、聞いたことあるぜ」

「砂漠街道がある国だろ?」


「おっ、知ってるのかい」


「噂だけな」

「あたいは、まだ西側は行ったことねぇんだ」


店主は話を続ける。


「ノモナーガとの間にな、でっけぇ砂漠があるんだよ」

「通過するだけで丸一日かかる」


「そんな広いんですか?」


「しかも不思議なことに、魔物が出ねぇ」


「えっ?」


ルティーナが驚く。


「その昔は砂の下に王国が沈んだとか、色々噂はあるけどな」

「それが原因じゃないかとか言われちゃいるが、本当かどうかは誰も知らねぇ」


男は葡萄酒を軽く揺らした。


「ともかくだ、そのおかげで街道は安全」

「そこにノモナーガの『バリア・ストーン』の加護も重なって、最近は行商も盛んなのさ。


店主は満面の笑みを浮かべる。


「せっかく世界中から人が来るんだ」

「なら、うちの葡萄酒を知ってもらいてぇだろ?」


「素敵ですね」


ルティーナが微笑むと、男は照れくさそうに鼻を掻いた。


「よしっ、お嬢ちゃんには葡萄をサービスだ!」


渡された実を口にした瞬間、ルティーナの顔がぱっと明るくなる。


「お、おいしいっ!」

「これ、止まらないんだけど!?」


「だろぉ?」


「もっと下さい! 樽で!」


(お前もミヤと同じじゃん……)



その様子を見て、サーミャがニヤリと笑った。


「でさ、おっちゃん」

「ちょっと聞きたいことあるんだけどよ――」


サーミャは例の模様を描いて見せる。


すると店主の表情が少し変わった。


「……ん?」

「なんだっけな、それ……」


記憶を探るように眉を寄せる。


「どっかの祭りで見た気がするんだよなぁ」

「確か……女だった」


「女?」


「あぁ」

「姉ちゃんみたいに色っぽくて……そうだ! こめかみに入ってたな――」


その瞬間。

ルティーナとサーミャの表情が変わった。


(こめかみに痣が?)



それ以上、店主も詳しくは覚えていないようだった。


「(シャルを呼ぶか?)」


「(んん、もし記憶違いで全く関係なかったら、おじさんに失礼だから)」


だが――収穫は十分だった。


「おっちゃん!」

「酒、うまかったぜ! また来るからなっ!」




露店を離れた後、サーミャが得意げに笑う。


「で、どうだいルナ、ちゃんと仕事しただろ?」


「……うん」

「まさか一件目で、かなりの情報を集められるとは思わなかった――」


しかし――。

次の瞬間には、サーミャの姿が消えていた。


「……あれ?」


振り返ると。


「おぉっ! 今度は白い酒だとっ!」


すでに別の露店へ突撃していた。


(だめだこりゃ)


結局その日、ルティーナは終始サーミャの酒屋巡りに付き合わされることになる。


……そして。

再び二日酔いで倒れたのは言うまでもない。






そして数日が過ぎ――ついに、本戦当日がやってきた。


「さぁ、みんな体調は万全だよね?」


ルティーナがじっとサーミャを見る。


「あ、あ~……」


視線を逸らすサーミャ。


「ごめん」


「「「あはははっ!」」」



そして、仲間達を見渡し――。


「『零の運命』の拠点建築を目指して――出陣っ!」


「「「「お~っ!!」」」」


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