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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第64話 生国祭

無事に予選を突破したルティーナ達は、その夜、カルラの宿で盛大な祝勝会を開いていた。


料理を山ほど並べ、酒を飲み、騒ぎ、笑い。

気づけば深夜を大きく回っていた。


そして翌日――。

ノモナーガ王国では、一年で最も賑わう祭典――『生国祭』が幕を開けようとしていた。




――ノモナーガ王国・王城。


「ノキア王、おはようございます」


朝の静かな王室へ、老齢の執事が恭しく頭を下げる。


「あと二時間ほどで開会式の儀となります」

「事前に資料へ目を通していただいてもよろしいでしょうか?」


「うむ、ご苦労」


王――ノキアは椅子へ深く腰掛けながら、ゆったりと頷いた。


「ところでデーハイグよ」

「今年の武闘大会は面白い戦いになりそうだと、昨夜、耳にしたのだが?」


「ははっ」

「耳がお早いことで」


デーハイグは(うやうや)しく資料を差し出す。


「こちらが本戦参加者の名簿となります」

「ご覧いただければ、理由もお分かりになるかと」


「ふむ……」


ノキア王は資料へ目を通す。


「……昨年と変わらぬではないか」

「上位通過者は剣士、魔法使いばかり――」


「いえ、下位通過者をご覧くださいませ」


「ん?」


次の瞬間。

ノキア王の目が、わずかに見開かれた。


「回復師……占い師……だと?」


さらに視線が止まる。


「……職業無し?」


「女性……だと?」


数秒の沈黙。

そして――。


「ふっ……くくっ」


肩が震える。


「ふははははははっ!」


突如として響く高笑い。


デーハイグは目を丸くした。


「ノ、ノキア王!? いかがなされましたか?」


「ああぁ、すまぬ」


ノキア王は口元を押さえながら笑みを浮かべる。


「『職業無し』の者が、どうやって『牙狩り』の予選を突破したのか? 想像すると面白くてな」


「左様でございましたか」


だが――。

その瞳だけは、異様なほど真剣だった。


「今年は……楽しめそうだなデーハイグよ」



デーハイグは安堵したように一礼する。


「では、二時間後にお迎えに参ります」


「うむ」


部屋に静寂が戻る。


その瞬間。

ノキア王の表情から笑みが消えた。


「職業無し――か」


静かな声。


「いた……ついに見つけたぞ!」


その目に宿るのは、期待。

いや――執着に近い熱だった。


「その者が、『誉美ともみ』の器であってくれ」


それは――ノキア王が、長年追い求め続けていた女性。





一方その頃。

昼近くになってようやく、ルティーナとロザリナは目を覚ましていた。


「んぅ……」


窓から差し込む陽光。

外からは祭りの喧騒が微かに聞こえてくる。


すでに『生国祭』は始まっていた。


「やばっ! ミヤ、もう昼だよっ!」


ルティーナは呆れながらベッドを覗き込む。


「あぁ~……頭いてぇ……」


サーミャは毛布へ顔を埋めたまま呻いた。


「気持ち悪ぃ……」


「うぅ~……もう食べられませぇ……」


隣ではシャルレシカまで、完全に沈没している。



「……この前の護衛の朝と全く同じじゃない」


ルティーナは額を押さえた。


「もぉ~! 私の回復魔法は二日酔い治療用じゃないんですからねっ!」


「まぁまぁ、リーナ」


ロザリナも苦笑する。


「どうせ初日は王様の挨拶とかだ……話、長げぇーだけだし」

「興味ねぇわぁ」


「しょうがないわね」

「リーナ、今日はカルラちゃん連れて三人で回ろっか?」



そして。

ルティーナ達は『生国祭』で賑わう街へ繰り出した。



挿絵(By みてみん)



「ルナお姉ちゃんっ!」


カルラは目を輝かせながらルティーナの手を握る。


「シャルお姉ちゃんとサーミャお姉ちゃんは?」


「うーん、大会に向けて大事な準備をしているのよ」


(二日酔いと食べ過ぎがねぇ)


「(うるさいっ。カルラの夢を壊さないで!)」



「そっかぁ~」


カルラは無邪気に笑った。


「私、絶対応援行くからねっ!」


「ふふんっ、お姉ちゃんが優勝するから楽しみにしてなさい!」


「うん!」


嬉しそうにはしゃぐカルラ。

その隣を歩くルティーナも、どこか楽しそうだった。


「(ほんと……姉妹にしか見えない)」

「(しかもカルラちゃんの方が年上っぽい……)」


ロザリナは必死に笑いを堪えた。


「リーナ? なんか言った?」


「な、なんでもないわよ!」



祭りの大通りは、既に大勢の人で埋め尽くされていた。


色鮮やかな旗。

香ばしい屋台の匂い。

異国の衣装を纏った商人達。


まるで世界中の賑わいが、一箇所へ集められたようだった。


「すごぉ~いっ!」


カルラは目を輝かせる。


「最近の『生国祭』は他国の行商人が集まるって、お父さんが言ってたけど……」

「こんなお店見たことないよっ!」


ロザリナが感心したように辺りを見回す。


「ブクレインも結構、お店あるけど……これはすごいわ」


ルティーナも、どこか懐かしそうに周囲を眺めていた。

昔、バルストに連れ回された記憶が微かに蘇る。


「(ねぇマコト)」


(ん?)


「(これって情報収集し放題じゃない?)」


(おっ、ルナさん冴えてるねぇ)


「(えへへ)」


(でも今日は遊べ。情報収集は明日だ!)


「(うんっ!)」



――その時だった。


「おーいっ!」


聞き覚えのある声が飛んでくる。


「ルナリカちゃん達じゃない!」


「あっ、シェシカさん!」


そこにはシェシカとヘレンの姿があった。


「二人でお出かけですか?」


「うちの男共は、こういう祭りごとには全く興味がなくってねぇ」


シェシカは肩を竦める。


「だから女二人で回ってたのよ」


そして、ちらりと周囲を見回した。


「ところで? サーミャは?」


「えーと……そのぉ」


「(さすがにカルラに、『明日の準備してる』って言っちゃった手前――)」


「あー……大体わかったわ」


シェシカはあきれ顔でくすりと笑う。


「しょうがない、私が皆を案内してあげるわ」



露店を巡り。

食べ歩きをして。

珍しい小物を見つけては盛り上がる。


戦い続きだった日々を忘れるほど、穏やかな時間だった。



「これ美味しぃ~!」


「カルラちゃん、それ私の分っ!」


「あはははっ!」


楽しそうに笑う少女達。

その光景を見ながら、ルティーナはふと空を見上げた。


晴天。

祭りの熱気。

笑い声。

平和そのものの景色。


だが――。


「(……なんか、嵐の前みたい)」


胸の奥が、微かにざわついた。

理由はわからない。


それでも。

この穏やかな時間を大切にしたいと思っていた。



そして夕方。

宿へ戻る道中で、ルティーナはぽつりと呟く。


「そういえば……結局、城に行くの忘れてた」


「肩苦しい話を聞くより、こっちの方が楽しかったから、いいじゃない」


「まぁ……それもそっか」


ルティーナは苦笑した。


「(でも王様を一度、見てみたかったなぁ)」


(どうせ武闘会で見かけるだろ?)


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