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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第63話 強者《ツワモノ》達

ルティーナ達がデータ―ゲリアを氷漬けにしたことで、周囲の冒険者達は我先にと群がり始めていた。


当然、現場は混乱する。


牙の奪い合い。

横取り。

反則寸前の押し合い。


監視している近衛兵団や魔導師団も、違反者を見逃すまいと神経を尖らせていた。


――そして、その混乱を利用する者が一人。

木陰に身を潜める弓使い、ウェハルンである。


その実力を買われ、以前のヘルグレン討伐に諜報活動員として参加し、偶然、彼女達の闘いを目の当たりにした。


「(あいつらの強さは本物だ)」


だからこそ狙う――。

『力』ではなく『隙』を。


「(やっぱり四人で行動してやがる……)」

「(あのフワフワした女……戦闘には参加してねぇ)」


ウェハルンは気配を殺したまま、静かに笑った。



ルティーナ達は最後の獲物――デアボと遭遇していた。


「ミヤっ、右お願い!」


「任せろっ!」


サーミャが魔法を放ち、ルティーナが側面へ回る。

残る二人は後方待機していた。



――その瞬間だった。


「(……今だ)」


ウェハルンの指が、小型の弓を引き絞る。

放たれた矢は、一直線にシャルレシカの腰袋へ。


――ビリッ。


わずかな音。

だが、戦闘で盛り上がる状況では全く響かない。


袋の底が裂け、牙が草むらへ転がった。



ルティーナはなんとかデボアを倒す。


「ちょこまかと! 二人がかりでやっとかよ!」


「やったぁ! これで四本ですねぇ~!」


異変に気づく者はいなかった。


戦闘の興奮。

予選突破目前という高揚感。

それが油断を生んでいた。



すぐに、西門側の空へ二発目の『フレイム・ボム』が打ち上がる。


「こうしちゃいられないわね。急ぐわよっ!」



――そしてルティーナ達はその場を後にした。

一方、ウェハルンは周囲に監視がいないことを確認すると、静かに牙を拾い上げる。


「ふふっ……楽勝だったな」


疑われぬように反対側――東門へ向かって走り出す。


「これで、あの三人と当たらなけりゃ……二回戦までは見えたな」




そんなこととは露知らず。

ルティーナ達は西門付近まで戻ってきていた。


「よしっ! あとは『牙』を見せれば――」


「あれれぇ……?」


シャルレシカが首を傾げる。


「鞄がぁ……」


「どうした?」


「や、破れてますぅ……」


嫌な沈黙が落ちた。


「……え?」


シャルレシカが青ざめながら袋を覗き込む。


「な、ないですぅぅぅ……!」


「はぁぁぁっ!?」


サーミャが叫ぶ。


「マジかよっ!? どっかで落としたのか!?」


「ど、どうしようぅ……ふぇぇーん」


「シャル、探せないの?」


「無理ですぅ……物があれば痕跡を追えるんですけどぉ……」

「それ自体が無いんですもぉん……」



――その隙だった。


一人の冒険者が、西門へ駆け込んでいく。


残り枠が少なくなる。

そんな状況で、ルティーナは即座に決断した。


「シャル、これ使って」


「えっ?」


自分の牙を、シャルレシカへ押しつける。


「ルナっ!?」


「私はもう一匹探してくる!」


「いや待てっ!」


「大丈夫! 私が一番早く戻れるから!」


それだけ言い残し、ルティーナは森へ駆け戻っていった。




――十分後。


西門はサーミャ達三人が通過し七人目までが決定する。

残り枠――あと一つ。



(くそっ……魔物が見つからない!)


「シャルが居れば……」


森を駆けながら、ルティーナは歯を食いしばる。


「マコトぉ……どうしよう」


(こうなったら……呼び寄せる!)


「へっ?」


馬琴は手裏剣に【()】を描き、周囲の木々へ打ち込む。


(――起動っ)


次の瞬間。

木々から血が噴き出す。

そして返り血がルティーナを濡らした。


しばらくすると、鉄臭い匂いが森の中へ広がる。


(これって……)


「グルルルルッ!!」


茂みが揺れ、デボアが現れる――。


(やっぱり血の匂いに釣られたな)


さらに馬琴は、ルティーナの両足へ【(はやい)】、身体へ【(かるい)】を書き込む。


(起動っ、起動っ)


ルティーナの身体が一気に軽くなる。


「マコトっ、倒さないの!?」


(いや、こいつに一対一は不利だ――時間が足りない! こいつをこのまま門前まで連れて行く!)


「え? ミヤたちはもう外に居ないわよ?」


(いいから、西門へ走れっ!)


そして、ルティーナは全速力で駆け出した。

後方では、デアボが咆哮を上げながら追ってくる。





一方、西門前。


「ミヤぁ~! ルナがこっち来てますぅ!」


「――速ぇっ!?」


サーミャが目を見開く。


「って、おい!? あいつ、血まみれじゃねぇか?」


さらに――。


「デアボに追われてませんか?」


「あたいら、外には行けねぇぞ!」


さらにその後方。

西門へ入ろうとする別の冒険者も迫っていた。


「ルナぁぁぁっ! 後ろ後ろぉぉ!!」


その瞬間。

ルティーナは振り返りざま、地面へ手を叩きつけた。


(とげ)


(起動っ!)

(デアボが『猪』の魔物っていうなら……簡単には止まれないはず! ――そこを狙う)


地面から巨大な棘が突き出す。

デアボは、追走する勢いが殺せずそのまま串刺しになる。


「今っ!」


ルティーナは飛び込み、短剣を一閃。

牙を叩き折る。


そのすきに、冒険者に追い抜かれてしまう。


だが――そのまま再加速。

軽量化されたルティーナは、一気に追いつく。



そして――。

二人同時に、西門へ飛び込んだ。


「同着です! 牙の大きさを確認させてください!」


ルティーナは鞄から取り出すふりをしつつ、指先へ【(おおきい)】を描き込んでいた。


(起動っ)


牙が、わずかに大きくなった。



「……こちらの方が大きいですね」


判定。

勝者――ルティーナ。


八人目の予選通過者が確定した瞬間、西門側の空へ『フレイム・ボム』が連続で打ち上がった。


「(くすっ……マコト、それズルいんだぁ)」


(聞こえません……)



敗北した冒険者は慌てて東門へ向かう。

だが。

十分後。


無情にも東門側からも終了の花火が打ち上がった。


(あちゃぁ……)


「(さっきの人には悪いことしちゃったね)」





全通過者が決定し、本戦の説明が始まる。


「当日は、この番号札で抽選を行います。紛失には十分ご注意ください」

「また、本戦開始五分前までに集合されない場合、不戦敗となりますのでご了承ください」

「それでは五日後、皆様の武運をお祈りしております」


解散の声が響く中。

ルティーナは、一人の男を見つめていた。


「(……あの人)」


予選が始まる前にサーミャを睨んでいた剣士。

その手には――『1』の番号札。


「(一番目に通過したんだ……)」



サーミャは全員の肩に腕を回し、帰路につく。


「それじゃ、これから予選通過の祝賀会やろうぜ」


(嫌な予感しかしない……)


「(あははは)」

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