第61話 予選会
ルティーナ達は無事に参加票を手に入れる。
そのままカルラの宿へ戻って作戦会議を開くことになる。
「予選会は、『生国祭』の前日に『アレクザードの森』でやるのね……」
ルティーナ達は配布された資料へ目を落とす。
「で、アレクザードの森ってどこ?」
サーミャはニヤリと口角を上げる。
「あたいが知ってるから問題ねぇよ」
「それより、そこで十六人まで絞るって話だ」
「みんな、ここ見てっ!」
ロザリナが紙を指差す。
「「「?」」」
そこには、本戦の組み合わせについて書かれていた。
――本戦進出者は、東門と西門、それぞれ八名。
本戦では、『東門通過者』と『西門通過者』が一回戦で対戦する。
つまり――。
「これって……」
ルティーナが顔を上げる。
「同じ門で通過すれば、一回戦で当たらないってことよね?」
(おぉ、よく気付いたなルナ)
「(えへへっ)」
「ほんとだ!」
サーミャが軽快に机を叩き立ち上がる。
「なら話は早ぇ」
「四人とも同じ門から突破すればいいんだろ?」
「そうすれば、一回戦で潰し合わなくて済む!」
ロザリナが目を輝かせる。
「あとは本戦で、全員ぶっ飛ばせば――」
「リーナっ!?」
「『半殺し前提』の考え方やめなさいっ!」
ルティーナは呆れ顔になる。
「えっ?」
「だって、私には再生魔法あるんですよ?」
ロザリナの真顔だった。
ルティーナが頭を抱える。
「それより、どこまでならセーフなのかしら……この大会」
四人は改めて大会ルールへ目を通す。
使用武器・特殊装備は許可。
回復魔法で治療可能な負傷は有効打。
ただし――。
致命傷。
部位欠損。
再起不能。
それらを与えた場合は即失格。
場合によっては冒険者資格剥奪。
判断は審判へ委ねられる。
「ある程度、手加減しないとダメなんですね……」
ロザリナは真剣に頷く。
「危なくなったら再生魔法で治しながら――」
「だから、やめなさい『半殺し前提』!」
「だめなの……?」
本人が本気で言っているのが、一番怖かった。
馬琴も呆れる。
「それよりぃ、私はぁ、どうすればいいですかぁ~?」
シャルレシカが、恐る恐る話に割り込む。
「あ、それな」
「『エクソシズム・ケーン』貸してやるよ」
「今日、ヘレンから魔法の事、いろいろ教わったんだろ?」
「わぁ~い♪」
シャルレシカは嬉しそうに杖を抱きしめた。
「この杖ぉ、大好きぃ~♪」
「って、おいっ!」
サーミャが叫ぶ。
「胸に挟むなっ! 卑怯者っ」
「ヴァイスの杖を変な使い方すんなっ!」
「えぇ~、いいじゃないですかぁ~」
「返せぇぇぇっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人。
ロザリナは腹を抱えて笑った。
「あははっ!」
「ルナ達って、ほんと面白いですねっ!」
そんな光景を見ながら、馬琴は静かに考えていた。
手裏剣とクナイ。
そして、漢字の能力。
――使い方次第では致命傷になりかねない。
(……漢字は極力、攻撃系でなく補助系をメインで使うしかないな)
そう結論付ける。
そして今回は、あえてルティーナへ判断を委ねることにした。
「(――マコト、本当にいいの?)」
(あぁ)
(大会ってのは経験積むには最高だ)
「(やったぁ!)」
ルティーナの声が弾む。
「(……でも、本当に決勝まで行ったら丸投げするからよろしく)」
(そこは頼るのかよ……)
思わず苦笑した。
「よーしっ!」
サーミャが拳を突き上げる。
「改めて」
「目指せ上位独占っ!」
「「「おーっ!」」」
「む、無理ぃ~っ!」
シャルレシカだけは、やっぱり悲鳴だった。
――そして。
『生国祭』前日。
まだ陽も昇り切らない早朝。
『アレクザードの森』周辺には、既に大量の冒険者達が集まっていた。
参加者は、およそ二百人。
熱気と殺気が入り混じり、会場は異様な空気に包まれていた。
ルティーナ達が選んだ西会場には、およそ百人。
東会場には八十人ほどが集まっているらしい。
つまり、まだ会場の選択を悩んでいる参加者が二十人ほどいる、ということだった。
サーミャが周囲を見回す。
「しまったなぁ、こっちの方が競争率高けぇじゃねぇか!」
「いいんじゃない?」
ルティーナは落ち着いていた。
「今さら、移動したって変わらないわ」
「八人に入れば問題なし」
そしてシャルレシカに付近の冒険者の強さを探らせる。
「ん~っとぉ……」
シャルレシカは、ぼんやり周囲を見渡した。
サーミャが声を潜める。
「この中で強そうなの、いるのか?」
「ルナ達ほどではないですけどぉ……」
「強そうなのは一人だけいますねぇ」
「えっ?」
ロザリナが目を丸くする。
「私達って、そんな強いんですか?」
「シャルは魔力とか力量まで見れるんだぜ」
サーミャが笑う。
しかし、ルティーナは油断していない。
「こっちに強い人が少ないとは限らないんだからね」
「リーナみたいに、『怒り』で化けるタイプも居るんだから」
サーミャは我に返り、シャルレシカに確認する。
「で、その強そうな奴ってどいつだよ?」
「ん~……」
シャルレシカが、こっそり指を差す。
「あそこにいる剣士さんですねぇ」
「……あ?」
サーミャの目が細くなる。
「あいつ、あたいのこと睨んでねぇか?」
「一発ぶん殴ってきていいか?」
「やめなさい!」
即却下だった。
「そういえば、ヘレンの姿がないですね……」
ロザリナは周囲を見回す。
「東会場に行ったのですかね?」
「でも、一回戦で当たりたくないですね」
さらにシャルレシカは索敵を続ける。
「ん~、西側で厄介そうなのは五、六人ですねぇ」
「だと言っても、みんな油断しないでね」
「どんな予選をさせられるか分からない以上、油断したら普通に落ちるわよ」
ルティーナは気を緩めない。
そして――、一時間後。
予選会の開会式が始まった。
最終的な西会場参加者は百十名。
――その中から八人。
かなりの狭き門だった。
「皆さん、お待たせしましたっ!」
壇上へ現れたのは――レミーナだった。
「本日、西会場の進行を担当させていただきます」
「受付嬢と言えば! そう、レミーナ=オズールです!」
「よろしくお願いしまーすっ!」
(……レミーナさん、めちゃくちゃ生き生きしてないか?)
(うん、楽しそう)
ルティーナも苦笑する。
「それでは、これより皆さんには――」
レミーナは大きく手を広げた。
「この『アレクザードの森』西部へ向かい――」
「魔物を討伐してもらいまーすっ!」
(……魔物狩り?)
馬琴は眉をひそめた。
(国内って、『バリア・ストーン』の影響で魔物少ないんじゃないのか?)




