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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第肆章 ~武闘会~

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第59話 後日談

ルティーナは新しく魔法使いのサーミャを仲間に加え『零の運命』を結成する。

初の任務でブクレイン公国を訪れた彼女達は、街道を騒がせる『赤い悪魔』と呼ばれていた少女――ロザリナと出会う。


ロザリナは、父親の不審死を単身で調べていた。

そこに絡むのは、『痣』の男の存在。

それはルティーナ達も探していた、謎の刻印だった。


ロザリナは仮加入という形でパーティーに加わり、共に『魔物事件』と『領主エレヴァルクの不正』を追う事になる。


調査の末、事件の裏で糸を引いていたのは、魔物化の薬を研究していたゲレンガだった。


薬によって異形の魔物『デルグーイ』へ変貌したゲレンガに対し、ルティーナは死闘の末に勝利する。

しかし、その勝利はルティーナの心へ『命を奪った重み』を深く刻み込む。


ロザリナは魔物となった父親の魂を救い、事件は解決する。

そして彼女は『ルティーナの父親を助けたい』という願いを胸に、『零の運命』への正式加入を決意した。


だが――。

ゲレンガ達は『組織』の末端に過ぎなかった。

ルティーナ達へ、再び魔の手が伸び始める。


エレヴァルク領での事件から一週間――。


ルティーナ達は、ロザリナの家財整理を手伝っていた。

これから、彼女も共に旅をするためだ。


そして――。

四人は共同墓地へ来ていた。

みんなで、ロザリナの両親の墓の前で手を合わせる。


「お父さん……お母さん……行ってきます」

「また、戻ってくるから待っててね」


四人は立ち上がり、ノスガルドへの帰路につく。




――その頃。


「(スレイナ……聞こえるか?)」


不気味な念話が、静かな部屋へ響く。


女は、すぐに膝をついた。


「はい……ナガアキ様」

「ご無沙汰しております」


「(ドグルスは、本来の任務に巻き込まれた可能性もある)」

「(だが――ゲレンガまでも疎通不能になった)」


低く、苛立ちを滲ませた声。


「(一体、何が起きている?)」


「っ……申し訳ございません」

「私の弟ともあろう者が……不甲斐ない」


スレイナは唇を噛む。


「疎通不能ということは……」

「二人とも始末されたとでも?」


「(まだ断定はできん)」


だが、声には焦りがあった。


「(直ちにブクレインとノモナーガを調べろ)」

「(嫌な予感がする)」


「……例の案件は?」


「(『狂暴化』の実験は、一旦中断しろ――)」


一拍。


「(原因調査が最優先だ)」


「かしこまりました」

「原因に関わった者は、すべて始末しても?」


「(当然だ)」


声色が冷たく沈む。


「(計画の障害になるものは、全て消せ!)」

「(――アレが復活するまで、誰にも悟らせるわけにはいかん)」


スレイナは深く頭を下げた。


「承知しました」


「(もう、お前しか……有能な部下がおらんのだ)」


焦燥。

そして執着。


「(期待しているぞ)」

「(……また一週間後、こちらから念話する)」


念話が途切れる。

静寂の中、スレイナはゆっくり目を閉じた。


「ゲレンガ……」

「魔物化の薬は、ほぼ完成したと聞いていたのですが……」


そして、小さく呟く。


「ここからなら……ブクレインの方が近いか」







ルティーナ達は、そんな陰謀が裏で動き始めていることなど知る由もなく――。

ノスガルドへ帰還していた。


夜更けの街。

しかし、繁華街からは賑やかな声が響き渡る。


たった数日離れていただけ。

それなのに、妙に懐かしく感じる。


――やっと、この街へ帰って来た。



後日――。

三人は『碧き閃光』の拠点へ。


ルティーナは一人、アバダルト商会へ向かう。

魔物化の件だけは伏せたまま、今回の顛末を報告し、護衛費を受け取った。


「そうか……エレヴァルク、自首したのか」


ガイゼルは頭を掻いた。


「まぁ、お得意様は減っちまったが……変な事件に巻き込まれるよりマシか」


「割り切り早いですね」


「商人なんて、そんなもんだ」


「あはは……確かに」


ルティーナが苦笑した。


ガイゼルも笑いながら、仕事の話を始める。


「早速で悪いんだが」

「来週、4日くらいの遠征になる仕事の護衛を頼み……」

「まてよ……来週は――」


バタンッ!


「ガイゼルさんっ?」


慌てた様子の店員が駆け込んでくる。


「至急、受付へお願いします!」

「商品の苦情が入ってしまって……!」


「あー……わかったわかった」


ガイゼルは大きく肩を落とした。


「悪ぃな、ルナリカ」

「また今度な」


「あ……はい」


ルティーナは軽く頭を下げる。

だが、商会を出た後も、ルティーナは小さく首を傾げていた。


(……来週がどうとか言いかけてた?)


少しだけ引っかかったが、深くは考えなかった。




一方、『碧き閃光』では――。


ロザリナは、シェシカとグルバスに連れられ、早速修行へ放り込まれていた。

そしてサーミャは、アンハルト達と『ヘルグレンの森』の件で話をしていた。


「で?」

「ルナリカじゃなく、お前が代理か?」


「あたいじゃ不満かい?」


「いや……そういう意味じゃない」

「お前が補佐側なのが意外でな」


「これでも、あたいのこと、結構信頼してくれてるんだぜ?」


サーミャは得意げに笑う。

そんな二人の横で、ヘレンはシャルレシカへ魔法の事を教育していた。


もちろん、『エクソシズム・ケーン』は貸すわけがない。


「いきなり何があった?」

「シャルレシカに魔法の講義なんて?」

「魔法なら、お前が教えればいいだろ?」


「無理無理~」


サーミャは、笑いながら即答した。


「あたいが『教える』姿……想像できるのかい?」

「ヘレンなら、生真面目だから理論で教えられるだろ?」


「あははっ」

「たしかに『感覚派』のお前には向いてないかもな」


「悪かったわねぇ~」


そんな軽口を交わした後、アンハルトは真顔へ戻る。


「それより、例の森だが――」


空気が変わった。


アンハルトは森での討伐の翌日、他の冒険者の担当区域の情報を集めていた。


「あの一件以降、妙なくらい魔物は減った」

「まだ多少は残っているがな」


「……減ったって事かい?」

「(……ゲレンガを止めたからな))」


「あぁ」


アンハルトは頷く。


「他の地区の冒険者にも話を聞いたが、異常だったのはギルド上位組の担当区域ばかりだったらしい」

「まぁ、今は『バリア・ストーン』も修復されたし、魔物も落ち着くだろ」


事実を知っているサーミャは苦笑いをする。


「そういや、お前らブクレイン行ってたんだよな?」

「向こうの魔物はどうだった?」


一瞬だけ、サーミャの目が細くなる。


「(巻き込まないほうがいいな)」


そう判断した。


「確かに、動きがおかしい魔物は居たぜ」

「ヘルグレンほどじゃねぇけどな」


「まさか……」

「ヘルグレンとブクレインの街道は山を越えればすぐだからな」


アンハルトは不安になっていた。


「だが、シャルの索敵でずーっと街道を見てたが」

「あたいらが倒した数匹だけだったみたいだぜ」


もちろん嘘だ。

人間を魔物化する実験。

そんな話を広めるわけにはいかなかった。


「……それならいいんだ」


アンハルトは腕を組む。


「最近、冒険者や民間人の行方不明が増えてるらしい」

「ギルドでも、魔物との関連を調べ始めているそうだ」


「!」


「(失踪者? ……実験体に?)」


一瞬、最悪の想像が脳裏をよぎる。


「そ、そうなのか……」

「物騒な話だねぇ……」


「ん?」

「お前、何か知ってるのか?」


サーミャは慌てて笑った。


「いや、人間食った魔物って頭良くなんのかなーって」


「そうか……一理あるな」


アンハルトは頷く。


「……なるほど。捕食の可能性か」

「ありがとう。ギルドにも共有しておく」


「(適当だったんだが……)」


「サーミャもルナリカに負けず、頭回るじゃないか?」


「あたい、結構できる女なんだぜ?」

「(……あっぶねぇ。危うく全部バレるとこだった)」


サーミャは内心で冷や汗を流した。


その時だった。


「ミヤー!」

「終わったよー!」


ロザリナ達が戻ってくる。


「おいサーミャ! ロザリナ、武闘家に育てねぇか?」


グルバスは豪快に笑う。


「やめなさい。これ以上脳筋を増やさないで」


シェシカが呆れ顔でため息をつく。


「光魔法の才能もそうだけど……」

「あんまり力を見せすぎると、昔の私やサーミャみたいに国に目を付けられるわよ?」


「あー……思い出したくねぇ」

「(あいつの下に行くのは御免だ)」


サーミャが遠い目をした。


「ん? なんか言った?」


「なんでもねぇよ」

「ところでヘレン」

「シャルはどうだった?」


「えーっと……実際シャルちゃん自身は魔法が使えないから、たぶん大丈夫?」


「たぶんってなんだよ!?」


「ちゃんとぉ、理解しましたよぉ~」


「まぁ、魔法はこの杖がねぇと使えねぇから安全か」


サーミャがツッコんだ、その時だった。



「――そういや、そろそろじゃなかったか?」


アンハルトの一言に、シェシカとグルバスが反応する。


「……もうそんな時期ね」


「早ぇな」

「あれから一年経つのか」


「「「?」」」


三人は、意味も分からず顔を見合わせていた――。

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