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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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第58話 輝ク道標

ルティーナは闘いを終え、静まり返ったエレヴァルク邸から去ろうとしていた。


「そういえば……エレヴァルクは?」


「あぁ、あいつなら――」


サーミャがニヤリと笑う。


「『聖女様』のありがたい導きで、自首したぜ」


「ちょっ、ミヤさんっ!?」


ロザリナが慌てて、サーミャの肩を叩く。


「その『聖女』って、やめてくださいよぉ……!」


「いやいや」

「エレヴァルクは完全に『聖女』へ祈る信者みたいだったぜ」


「もぉ~っ!」


そんなやり取りを見ながら、ルティーナは安堵の息を漏らした。


サーミャは、警備隊へどう説明したかをルティーナ達へ伝える。


「とりあえず、必要最低限な説明はしておいたぜ」


「サーミャ」


馬琴(まこと)はサーミャの対応に感心する。


自分達が、ノモナーガ王国所属の冒険者パーティ『零の運命』であること。

エレヴァルクの横領の不正を暴く目的で潜入したこと。

魔物を使役するゲレンガの存在――。


「とりあえず、夕方に出頭するって話になってるから」

「よろしくな」


「細かい辻褄合わせはルナに任せるわ」


馬琴(まこと)は、その大雑把な対応に少し呆れていた。


「あと一つ」


サーミャはエレヴァルクが拘束される前に、口裏を合わせていた。


「『飛んでた』話はするなって、釘は刺しといたぜ」

「護衛団の奴らは、騒いでも誰も信じてくれねぇだろうよ」


ルティーナは、ほっとしたように笑った。


「急いでたから、その辺のこと忘れてたよ」


サーミャはしたり顔で続ける。


「あと、薬の話もごまかしといたぜ」


ルティーナは目を見開く。


「魔物はゲレンガが使役してたってことにして」

「地下にあった薬の施設は――跡形もなく破壊しておいたぜ」


サーミャの判断は正しかった。

これ以上、今回の件で混乱を起こさないために。


「さすがぁ~」


馬琴(まこと)は、護衛団への言い訳材料が揃ったと判断する。



それをよそにサーミャが、思い出したように急に慌て始めた。


「そんなことより!」

「あたいの『エクソシズム・ケーン』壊れてねぇだろうな!?」


「大丈夫よ……たぶん」


(胸で挟んでるからな……)


「(どういう意味よ! マコト)」


サーミャはシャルレシカが抱えている杖を奪い取る。


「はいはい、スリスリしないっ」


ルティーナが呆れたように笑う。

そんな、どうでもいい会話。


けれど――。

だからこそ実感できた。


『終わったんだ』と。



「そうそう、シャルの水晶も回収してありますよ」


ロザリナはそれを見ながら顔をしかめた。


「しかし、この水晶ほんと凄いですよね……」

「どんな仕組みなんでしょうか?」


「シャルって、そもそも出生が謎なんだよね」


ルティーナは苦笑する。


「捨てられてた時、あの水晶と一緒に布へ包まれていたらしいの」


「「……」」



「いつか、シャルの出生も調べたいわね」

「興味はあるから」


ルティーナは疲れた顔をのぞかせつつ促す。


「とりあえず、夕方まで寝ない?」





――そして夕方。

ルティーナ達は警備隊へ正式に出頭する。


事情聴取の前にエレヴァルク達の処遇を聞く。


エレヴァルクは領主権限を剥奪。

ゲレンガに利用されていた事情も考慮され、一年の留置処分となった。


護衛団については、盗賊行為への関与が認められ、五年の留置後国外追放。


「(エレヴァルク……出所したら、今度はちゃんと家族を守るのよ)」



続けて、護衛団がルティーナに事情を確認される。

そこは、馬琴(まこと)が巧みな話術で、警備隊が納得するよう筋書きを組み立てて説明した。


中でもゲレンガについては――。


『森で、ゲレンガの使役するデルグーイとの戦闘』

『ゲレンガは、戦闘の過程でデルグーイに喰い殺された』


そう説明した。

もちろん、それは嘘だ。


「そして、私はデルグーイを焼き払い倒しました」


もし、『魔物化の薬』の存在が公になれば、国中が混乱する。

だからこそ、隠す必要があった。


ゲレンガの死体を焼いたのも、この布石だった。


(これでよかったんだ……)


馬琴(まこと)は、静かに目を伏せる。


すると、ルティーナが小さく頷いた。


「うん」

「ミヤの判断も正しかったと思う」


サーミャが肩を竦める。


「ま、これ以上面倒事増えるのは御免だからな」


「それは同感かも……」



そして四人は解放された。




――後日。

ルティーナの証言に基づき、警備隊は森でデルグーイの遺体を発見する。

そして、遺体の中からゲレンガらしき肉片が見つかる。


それにより、ルティーナ達の証言は正式に認められた。




「……これで、本当に終わりだな」


サーミャが呟く。

だがルティーナは、逆に目を輝かせていた。


「でも――」

「ドグルスとゲレンガが死んだ今」


その視線が遠くを見る。


「黒幕から接触してくるかもしれないわね」


「おいおい……」


サーミャが頭を抱える。


「もう誘拐されるとか、勘弁してくれよ」


「あはは……」

「さすがに今回は、結構やばかったかも」


ルティーナは素直に苦笑した。


「今さらだけど……」

「みんな、助けてくれてありがとね」


「「「あはははっ!」」」


宿へ笑い声が広がる。

その空気が、戦いの終わりを実感させた。



――けれど。

ルティーナは、ふと窓の外へ視線を向ける。


綺麗に広がる青空。

雲一つない。


その向こうには、まだ見えない敵がいる。


『魔物化の薬』。

そして『謎の組織』。


ゲレンガ達は、ただの末端に過ぎない。


(これからが本番だ)


馬琴(まこと)は、そう確信していた。


ルティーナは小さく笑う。

隣には、仲間達がいる。

今は、それだけで十分だった。



そして――。


「さーて、リーナ」

「これで目的が達成できたわね」


「そうだったな」

「じゃぁ、期間限定の四人パーティーも今日で解散――――」


すると。


ロザリナが、サーミャの言葉を遮る。


「あ、あのっ!」


三人が首をかしげる。

ロザリナは顔を真っ赤にしながら、それでも真っ直ぐ、全員の顔を見つめる。


「これで、お別れなんて!」

「私は嫌ですっ!」


「「「……?」」」


そして――。

彼女は、大きな声で宣言する。


「私は『零の運命』の回復師見習いロザリナ=ノザラ!」

「誰に何と言われても!」


その瞳は、まっすぐだった。

そこにあるのは感謝と信念。


「お礼じゃ返しきれない!」

「……今度は私が、ルナのお父さんを助ける番」

「だから――」

「私も一緒に行かせてくださいっ!」


一瞬の沈黙。


次の瞬間。

三人は、目を見合わせて同時に笑った。


「「「よろしくね、リーナ!」」」


「――はいっ!」


ロザリナの笑顔が弾ける。


その笑顔は。

闇へ踏み出す『零の運命』を照らす――。

新たな道標のように、輝いていた。


挿絵(By みてみん)


――第参章『戦ウ聖女』編 完


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