表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/168

第45話 迫ル決断

その頃、戦闘地点から数百メートル後方では――。

ルティーナはシャルレシカを守りながら、全体の戦況を俯瞰していた。


「グルバスさん、左三百先から五体来ますっ!」


「了解っ!」


「アンハルトさん、右から二体!」


「見えてるっ!」


索敵。

伝達。

指揮。

それだけで、戦況は圧倒的優勢だった。


シャルレシカの索敵があるだけで、敵の奇襲は成立しない。


――だが。


「ルナぁ~……」


シャルレシカの声色が変わった。

ルティーナの表情が即座に引き締まる。


「どうしたの?」


「アンハルトさん達の近くにぃ……」

「さっきまで居なかった大型反応が三つぅ……」


「……っ!」


(シャルの広範囲索敵にかからずに――)

(突然、現れた……!?)


嫌な汗が背中を伝う。


「種類は?」


「これはぁデーアベ……ぇ? 何か変ですぅ」


(まずいっ!)


ルティーナは即座に叫んだ。


「アンハルトさんっ! 下がってっ!!」


アンハルトは即座に撤退へ切り替える。


だが――遅かった。


森を割るように現れた巨体。

通常種とは比較にならない。

三メートル級。

しかも、速い。


「なっ……!?」


ロザリナが息を飲む。


次の瞬間。

一体のデーアベが地面を抉りながら突進してくる。


「『シャイン・ウォール』っ!!」


障壁が展開された直後――轟音。


「くっ……!」


衝撃で周囲の木々が激しく揺れる。

壁が軋む。

だが、辛うじて耐え切る。


「ロザリナっ! 維持しろっ!」


「は、はいっ!」


アンハルトは即座に前へ出た。

鋭い剣閃がデーアベの肩口を切り裂く。


しかし。

残る二体が左右へ回り込んでいた。


アンハルトの背筋に冷たいものが走る。

囲まれた――。


普通の魔物ではあり得ない。

明らかに、『連携』している。


「っ……!」


ヘレンが土魔法を放つ。

地面が盛り上がり、デーアベの足を取る。

だが、一瞬止まっただけ。


「くっ……!」


アンハルトの剣閃が森を走る。

だが、ロザリナとヘレンを守りながらでは、本来の速度が出せない。


苦戦するアンハルトを見て、ロザリナの心が揺らぎ始める。

――完璧な防御壁に、小さなヒビが入る。


(こ……怖い……)



状況は最悪だった。

ルティーナは歯を食いしばる。


(ここを離れればシャルが危険……!)

(このままだと、アンハルトさん達が持たないっ!)


一瞬の判断。

そして――決断した。


「グルバスさんっ!!」


「っ……!」


「シャルをお願いしますっ!!」


「わかった! 二分で片付けるっ!」


「十分です!」


ルティーナはシャルレシカの肩を掴み、いつものように体を硬化させる。


「ひぃぃぃぃ~っ! もしかしてぇ~」

「ルナぁ~! 置いてかないでくださいぃ~」


「大丈夫」


ルティーナは真っ直ぐ笑った。


「私を信じて」


その言葉を残し――全速力で駆け出す。



その頃。

アンハルト達は限界寸前だった。


ロザリナの防御壁は、何度も砕かれている。

その度に再展開――。


だが恐怖で、徐々に魔力制御が乱れ展開できなくなる。


「っ……!」


その一瞬を――デーアベは見逃さなかった。


「ヘレンっ!!」


鋭い爪が振り下ろされる。


鮮血。


「きゃぁぁぁぁぁっ!!」


ヘレンの左足が深く抉り取られた。


「ヘレンっ!!」


ロザリナの顔が青ざめる。


動揺。

恐怖。

罪悪感。


全てが一気に押し寄せる。


「わ、私のせいで……!」


魔力が乱れる。

もう、防御壁を展開できない。


そこへ二体目が突っ込んでくる。


ロザリナを庇うように、アンハルトが割り込んだ。


「ぐぁぁぁっ!!」


鋭い爪は、アンハルトの右肩を深く抉る。


「もう……やめて……」


呼吸。

視界。

音。

何もわからなくなる。


(もう……駄目……)

(誰か……助けてっ……!)



――その時だった。


「諦めちゃ駄目っ!!」


三枚の手裏剣が飛来する。

デーアベ達に突き刺さった刃には――【(かみなり)】の文字。


次の瞬間。

激しい雷撃がデーアベを包み込む。


「皆っ! 目を閉じてっ!!」


ルティーナの掌に【(かがやき)】の文字が浮かぶ。


直後――閃光。

視界を灼くほどの白光で、デーアベ達の視界を奪う。


さらに【(こおる)】を地面に展開。

地面が一瞬で凍結。

デーアベ達の足が凍り付き、動きを止める。


「ロザリナっ! 早く、再生魔法よっ!!」


だが――。

後方からシャルレシカの悲鳴が響いた。


手薄になった隙を狙い、数匹の魔物が襲い掛かっていたのだ。


しかし。

ルティーナは動じない。


(読んでた)


「(まさか、シャルを囮にしたの?)」


(頭使う魔物なら、『一番弱い場所』を狙う)

(すでに仕込みはしてある)


次の瞬間。

シャルレシカの周囲の地面が爆ぜた。


無数の岩刃が地中から突き出し、魔物達を串刺しにする。


「ふぇぇぇぇ~ん……助かったぁ……」



「――『信じて』って言ったでしょ?」



だが。

こちらの状況は、まだ終わっていなかった。


ロザリナは動いていなかった。


「ルナ……わ、私……魔法が使えない……っ」


「ロザリナっ!!」


ルティーナが叫ぶ。


「リーナしか居ないのよっ!!」


「無理っ! 無理だよぉっ!! 怖いよぉ~」


「お願いっ!! このままだと、二人が死んじゃうっ!!」


だが、追い詰めるほどロザリナの心は崩れていく。


(やめろルナ……逆効果だっ!)


馬琴(まこと)が焦る。


その時だった。


「ろ……ロザリナ……」


血を吐きながら、アンハルトが口を開く。


「俺の事は……気に……するな」


「アンハルトさんっ!?」


「ヘレンを……助けてやって……くれ……」


ヘレンも言い返す。


「あなたの身に何かあったら、私たちどうすれば――」


アンハルトは叫ぶ。


「姉ちゃんを探すんだろっ!!」

「そんな足で……どうやって探すんだっ!!」


ヘレンの瞳から涙が零れる。


その姿を見た瞬間――。

ロザリナの中で、何かが変わった。


(……私しか……いない……)

(助けるんだ……!)


ドクン――。

心臓が激しく脈打つ。


熱い。

全身が熱い。

溢れるように魔力が巡っていく。


「わ、私が助けるんだぁぁぁぁぁぁっ!!!」


黄金色の光が爆発した。

ロザリナの身体が黄金色に輝き始める。


そして――。

「《シャイン・レストレーション》――!!」


優しい光がアンハルトとヘレンを包み込む。

傷口が閉じていく。


それだけではない。

失われた肉片までもが、ゆっくりと再生していく。


「なっ……!?」


遠目で光景を見ていたシェシカが息を呑む。


(二人同時再生……!?)


本来ならあり得ない。

再生魔法は、それだけで高位術式。


しかも同時治療など、常識外れだった。

だがロザリナは、涙を流しながら必死に魔力を注ぎ続ける。


「お願い……二人を助けて!」


その姿を見たルティーナは、小さく笑った。


「よく頑張ったね、リーナ」


そして前へ出る。


「後は私がやるから、休んでて」


デーアベは氷の拘束を破り始めていた――。


地面へ【(こおる)】【(ざん)】を追加で展開する。


「させない!」


氷は鋭い刃へと変わり、

デーアベ達を容赦なく切り刻んだ。


断末魔が森へ響き渡った。



その頃。

グルバス達は、既にシャルレシカの周囲を制圧していた。


戦闘は終わっていたのだ。



張り詰めていた森の空気が、ようやく静かに緩む。

ロザリナは、その場へ崩れ落ちた。


魔力を使い果たし、身体から力が抜ける。

だが、その顔には涙と安堵が浮かんでいる。


「二人は助かったんだよね……?」


「えぇ」


ルティーナは優しく微笑む。


「貴方が助けたのよ」


アンハルトも。

ヘレンも。


二人は穏やかな寝息を立てていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ