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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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第44話 守ル意思

明日に行われる『ヘルグレンの森』の魔物討伐。

その共同参加を依頼されたルティーナ達は、そのままアンハルト達の拠点へ案内されることになった。


「あたいが居た頃は宿暮らしだったじゃねぇか!?」


サーミャが目を丸くする。

アンハルトは肩を竦めた。


「お前らが抜けてから二年、必死に稼いだんだよ」


「まぁ、あたいが居なくてもギルド上位だもんな」


「そこは少しぐらい惜しめよ」


「あははっ」




そして到着した瞬間――ルティーナ達は思わず声を漏らした。


「うおぉぉ~……」


「すごぉ~い……」


二階建ての石造り。

広々とした共有スペースに、整然と並ぶ武器棚。

奥には簡易訓練場まで備えられている。


冒険者の拠点としては、かなり立派だった。


「(かっこいいですぅ……)」


「(私達も拠点欲しいな~)」


「(宿代も浮くしな)」


「(そこなの!?)」


ルティーナは内心だけでツッコむ。


だが実際、拠点があれば荷物管理もしやすい。

長く活動するなら、いずれ必要になるだろう。


「(……本気で考えてもいいかもしれないわね)」



軽く食事を済ませ、全員は作戦室に移動した。


途端に、場の空気が引き締まる。

すぐさま、アンハルトは机へ地図を広げた。


「今回の要はシャルレシカの驚異的な索敵精度だ」


「えへへぇ~♪」


シャルレシカは嬉しそうに笑う。


「これで、前回みたいな不意打ちは避けられる」

「位置さえ掴めば、こっちから仕掛けられるからな」


「つまり、『狩られる側』じゃなくなるってことね」


シェシカが頷いた。

アンハルトは地図を指でなぞる。


「編成は二組」

「グルバス、サーミャ、シェシカ」

「俺、ロザリナ、ヘレン」


「リーナは前衛?」


ロザリナが目を瞬かせる。

するとグルバスが豪快に笑った。


「回復だけやらせとくには勿体ねぇ!」

「それに、あの身体強化は反則だろ」


「ひえぇ……」


ロザリナは情けない声を漏らした。

アンハルトは苦笑しつつ、さらに続ける。


「後方はルナリカとシャルレシカ」

「ルナリカには全体指揮を頼みたい」


「私が?」


「お前、情報整理が早いだろ?」


(見抜かれてる……)


馬琴(まこと)が感心したように呟く。


(この人、俺達を任務に引き込むことで、適性を生かしている)


「(確かに、近接・支援・回復……組ごとに綺麗に噛み合ってる……そして私達の索敵支援)」


ルティーナは小さく頷いた。


「了解です」




そして最後に――。

アンハルトが拳を掲げる。


「明日は全員、生きて帰るぞ」

「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」




こうして四人は、そのまま客室へ泊めてもらうことになった。


意思を持つように動く魔物。

破壊される『バリア・ストーン』。

そして、その裏で蠢く何者か。


不穏な気配は、確実に彼女達へ近づいていた――。




――翌朝。

ルティーナ達『零の運命』は、『碧き閃光』と共に『ヘルグレンの森』の入口に到着していた。


森へ一歩近づいただけで空気が違う。


湿っている。

重い。

そして静かすぎた。


鳥の鳴き声すら聞こえない。

まるで森そのものが、侵入者を拒絶しているようだった。


理由は単純だ。

先日、アンハルト達を半壊状態へ追い込んだ魔物達が、『普通ではなかった』からだ。


「今回はシャルレシカが居るから奇襲は防げる」

「だが問題は――連中の知能が不気味だ」


アンハルトが低く呟く。


彼ほどの実力者が『不気味』と言う。

それだけで異常さは十分伝わった。


「それって……誰かが魔物を闇魔法で操ってる可能性はないの?」


ロザリナの問いに、ヘレンが静かに首を横へ振る。


「私達も考えたわ」

「でも、もし闇魔法なら、それこそ異常よ」


「?」


「複数の小動物を誘導する程度なら可能よ」

「でも、デーアベ級を複数同時制御なんて、普通は無理」


「あー……」


ルティーナは苦い顔をした。


(その線は薄いってことか……)


「とりあえず、今の森の状況を確認しましょ」

「シャルお願い!」


「はぁ~い♪」


間延びした返事。

だが次の瞬間――シャルレシカの瞳が淡く輝いた。


一行は、素早く陣形を整える。


数秒後――。


「……大体の位置を把握できましたぁ」


ふわふわした口調のまま。

だが、その声だけが妙に冷えていた。


「他の冒険者さん達の区域を除くとぉ~……」


「二キロ先から三十匹ほど接近中ですぅ」

「五百メートル先で、左右に五匹ずつぅ~」

「待ち伏せしてますねぇ」


「待ち伏せ……?」


アンハルトの眉が寄る。

普通の魔物なら、そんな行動はしない。


ルティーナは即座に判断した。


「アンハルトさん」

「群れが合流する前に左右を各個撃破しましょう」

「グルバスさん達は左。アンハルトさん達は右へ」

「私は中央でシャルと全体を掌握します」


「了解だ」


「その後の本隊は、状況を見て対応します」


「頼んだぞ」


そして――突入直前。

ルティーナは、緊張で震えるロザリナへ声を掛けた。


「リーナ」


「は、はいっ!」


「焦らなくていいわ」


ルティーナは優しく笑う。


「まずは攻撃じゃない」

「『守ること』だけ考えなさい」


「――っ」


ロザリナは目を見開いた。


喉が渇く。

指先が震える。

呼吸がうまく吸えない。


それでも。

誰かが傷つくのは嫌だった。


守りたい。

その気持ちだけは、もう迷わなかった。


「……うんっ!」


その返事を聞き、ルティーナは小さく頷く。


そして――。

「行動開始っ!」


一斉に、各部隊が森の中へ駆け出した。




最初に接敵したのはグルバス隊だった。


「うぉらぁぁぁっ!!」


巨大な戦斧が唸りを上げる。

直後――魔物の頭部が砕け飛んだ。


同時にサーミャの炎弾が木々の隙間を走り抜け、別個体の喉元を焼き抜く。


「右から来るわよっ!」


「わかってるっ!」


シェシカの障壁が魔物の突進を受け止めた瞬間、グルバスの戦斧が横薙ぎに振り抜かれた。


首が飛ぶ。

魔物達は、反撃する間もなく崩れ落ちた。


「俺らの連携、まだ鈍っちゃいねぇな!」




一方――。


「ロザリナっ! 後ろっ!」


「はいっ!」


アンハルト隊も戦闘へ突入していた。

アンハルトの剣閃が高速で走り、魔物を切り裂く。

ヘレンは土魔法で敵の足を止め、その隙を作る。


そしてロザリナは――震える手を押さえながら、二人を守る防御魔法を展開していた。


「《シャイン・ウォール》……っ!」


淡い黄金色の障壁が展開される。

直後、魔物の爪が激突した。

びくともしない光の壁。


「きゃっ……!」


障壁は砕けない。

だが、衝撃までは消せない。


怖い。

足が震える。

呼吸も浅い。


それでも――。


「(二人は私が守る……!)」


逃げない。

守るために、立つ。


その意思だけで、ロザリナは前を見据えていた。

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