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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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第43話 危イ依頼

ルティーナは、ガイゼルから『エレヴァルク領への定期納品』の話を聞いた瞬間、ぱちりと目を瞬かせた。


そして――。

その笑顔を見た瞬間。

ガイゼルは嫌な予感しかしなかった。


「……おい、まさかとは思うが」


「はいっ♪」


ルティーナは元気よく頷いた。


「その納品、私達も同行させてください」


「やっぱりかぁ」


「手裏剣の実演販売って名目で、領主屋敷へ入りたいんです」

「そもそも考案して、タリスさんのところへ持ち込んだの、私なんですから」


ガイゼルが固まる。

数秒遅れて、目を見開いた。


「お前だったのか、アレを考えたの!?」


「はい♪」


「マジかよ……」


ガイゼルは額を押さえた。


あの手裏剣は、今や一部の冒険者や護衛連中の間でも話題になっている。


軽い。

扱いやすい。

小型武器とは思えないほど殺傷力が高い。


特に、隠し武器としての性能が異様だった。


それを、目の前の少女が考案したという。


「……お前ら、ほんと何者なんだよ」


思わず本音が漏れる。


だが同時に、納得もしてしまった。


確かに、『発案者本人』という名目なら、納品へ同行させる理由としては十分通る。


「まぁ……それなら、一緒に連れて行けそうではあるな」


「本当ですか!?」


ルティーナの顔がぱっと明るくなる。


「ただし!」


ガイゼルは指を突きつけた。


「あくまで商売の延長だからな?」

「俺は潜入だの陰謀だの、そんな危ねぇ話は知らねぇ」


「十分です!」


ルティーナは満面の笑みで頷いた。


その横で。

シャルレシカが、ふわりと微笑む。


「それでぇ~、さっきも少し触れたんですがぁ」


「ん?」


「『零の運命』、四人組になりましたのでぇ~♪」


「…………はぁぁ~?」


ガイゼルの思考が止まる。


「さっき、ロザリナが仲間になったって言ったじゃないですかぁ」


「いや待て待て待て!!」


ガイゼルが机を叩いた。


「情報量が多いんだよ!!」


ルティーナ達はきょとんとしている。


「彼女はぁ『銀の回復師見習い』なんですよぉ~?」


「銀……?」


ガイゼルの顔が引きつった。


見習い職。

普通なら『一人前未満』の証だ。



「……いや、待て」

「見習いって、普通は下積み職だろ?」


「普通はそうですねぇ~」


シャルレシカは、にこにこしながら頷く。


だが次の瞬間。


「そうそう、グルバスさんを半殺しにしてぇ、完全回復させたそうですぅ~」


「だから、説明が全部ぶっ飛んでんだよ!!」


ガイゼルは頭を抱えた。


回復師。

格闘。

銀級。

グルバス半殺し。


単語が一切繋がらない。


「……なんなんだ、お前らは」


「えへへ♪」


「褒めてねぇ」


ガイゼルは深々とため息を吐いた。


だが。

その口元には、どこか笑みも浮かんでいた。


「……わかったよ。お前らは信用に値するからな」


「!」


「だから! 四人分の護衛依頼として通してやるっつってんだ」


「やったぁ~♪」


シャルレシカが、ぴょんぴょん飛び跳ねる。


「金貨四十枚ですぅ~♪」

「また、あのお肉料理食べたいですぅ~♪」


「お前の目的はそれかよ」


ガイゼルは呆れながら笑った。

そして――。

ふっと表情を引き締める。


「……エレヴァルクをどうする気かは知らねぇ」


低い声だった。


「だが、もし本当に何かあるなら――俺も協力する」


ルティーナは目を丸くした。


「ガイゼルさん……」


「勘違いすんな」


ガイゼルは鼻を鳴らす。


「商売相手が腐ってると、ろくな事にならねぇんだよ」


その言葉には、妙な重みがあった。


ルティーナは、小さく笑う。


「ありがとうございます」


こうして――。

五日後。

ルティーナ達は、再びエレヴァルク領へ向かう事となった。


ロザリナの父が遺した帳簿。

領地を覆う不自然な金の流れ。

そして、その先に存在する痣をもつ男。


全てへ近づくための、新たな護衛依頼。


それが今、静かに動き始める――。





ルティーナ達は、再び冒険者ギルドへ戻ってきていた。

既に辺りは茜色へ染まり始めている。

依頼帰りの冒険者達が次々と戻り、ギルド内は騒がしかった。


武器を担ぐ者。

酒を求める者。

血塗れのまま椅子へ倒れ込む者。

いつもの喧騒。


そんな中を、彼女達は軽い足取りで訓練場の方へ向かっていく。



訓練を終えたサーミャ達は帰宅の準備をしていた。


「ふぅ~……いや、末恐ろしいわ」


グルバスが拳をぶらぶら振りながら苦笑した。


「身体強化と防御壁だけで、もう十分戦力になってるぞ、ありゃ」


「ま、まだまだですよっ!」


ロザリナが慌てて否定する。

汗で髪が張り付き、息も少し上がっていた。


「グルバスさんみたいに、もっと格闘術覚えたいですし……」


「でも、防御魔法も相当なものだったわよ?」


シェシカが感心したように肩を竦める。


「自信持っていいわよ、ロザリナ」

「でもぉ――魔力制御の練習だけは、毎日欠かさないこと! いいわね」


「ひえぇ……」


「あなた、才能だけなら本当に規格外なんだから」

「努力は大事にね」


ロザリナは完全に引きつった笑みになっていた。


そこへ。


「おぉ~いっ! ミヤぁ~! リーナぁ~っ!」


シャルレシカが元気よく飛び込んでくる。


「おっ、シャルじゃねぇか」

「で?」

「首尾はどうだったんだ? ルナ」


「……思った以上に、面倒な話になったわ」


「?」


「戻ったら説明する」


「そんじゃ、帰るとするか――」


その時だった。


バンッ!!


ギルドの扉が勢いよく開かれる。


「アンハルト殿ぉぉぉっ!!」


飛び込んできたのは、王宮直属と思われる伝令兵だった。


肩で息をしている。


「た、大変です!!」


「どうした?」


アンハルトの声が鋭くなる。


「例の『ヘルグレンの森』です!!」

「また、調査隊が襲撃されました!!」


その一言で。

空気が凍りついた。


「被害は?」


「金級冒険者一名が重傷!!」

「他にも負傷者多数です!!」


「っ――」


シェシカの顔が曇る。


「また……?」


「しかも今回は、魔物の数が異常です!」

「まるで誰かが誘導しているみたい――」


その瞬間。

ルティーナ達は、無言で顔を見合わせた。


誰も口にはしない。


だが、考えている事は同じだった。


――偶然なはずがない。



アンハルトは即座に判断する。


「出発は?」


「明朝です!」


「わかった。俺達も参加する」


「助かります!!」


伝令兵は深々と頭を下げ、再び駆け出していった。


そして。


静寂が落ちる。


しばらくして。

アンハルトが、ルティーナ達を見た。


「……報酬は出ない」

「それでも、協力を頼めないか?」


ルティーナは即答だった。


「もちろんです」


迷いがない。


「リーナもお世話になってますし」

「それに――」


ルティーナは、少しだけ笑った。


「意思を持つ魔物……興味あります」


アンハルトがニヤリと笑う。


「そう言ってくれると思ってたよ」

「恩に着る」


「えへへ♪」


「あと、リーナの実戦経験にもなると思うんです」


「わ、私もですか!?」


ロザリナが目を丸くする。


「当然でしょ」

「実戦でしか分からない事もあるからね」


すると。


グルバスが豪快に笑った。


「ははっ!!」

「またサーミャと並んで戦えるとはな!!」


「足引っ張んなよ?」


「それはこっちの台詞だ!!」


二人は睨み合いながら笑う。


その様子を見ていたヘレンも、くすりと笑った。


「ほんと仲が良いんですね」


「「どこがだよっ!!」」


「息ぴったりじゃない」


そんな軽口の後。


アンハルトが提案する。


「ここじゃなんだ」

「うちの拠点で作戦会議するぞ」


「拠点? そんなのねぇだろ――」


「お前は知らないか」

「二ヶ月前に建てたばっかりだからな」


「「「えぇぇぇぇっ!?!?」」」


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