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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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第41話 光ノ修行

ギルドを出ると、夕暮れ前の街は活気に満ちていた。


行き交う冒険者。

露店の呼び込み。

買い物帰りの家族。


その喧騒の中で、不意に聞き慣れた声が響いた。


「あ、ミヤ」


振り向けば、そこにはルティーナ達の姿。


「早くないか? 例の件はどうしたんだ?」


「あー……今日は納品で不在だった」

「明日の昼には戻るらしいから、出直しよ」


ルティーナは少し残念そうに肩を落とす。


しかし次の瞬間。

サーミャが勢いよく身を乗り出した。


「それより聞けよルナ!!」

「リーナ、やばいぞ!!」


「?」




カルアの宿へ戻るなり。

サーミャは興奮した様子で、今日の出来事を語り始めた。


「初級回復魔法で、ヘレンの重傷とグルバスの骨折治しやがった!!」

「しかも傷痕なし!!」


「……は?」


ルティーナの目が点になる。


「え、ちょっと待って」

「それ、普通に上級回復師レベルじゃない?」


「だから言ったろ?」

「化け物だって」


「誰が化け物ですかっ!!」


ロザリナが即座に抗議する。


その瞬間。


「あ、また魔力上がりましたぁ~」


シャルレシカが、のほほんと反応した。


「もうっ!!」


「「「あははははっ!!」」」


部屋に笑い声が広がる。


ロザリナは、その光景を見つめながら、小さく目を細めた。


父を失った悲しみは消えない。


自分の出生についても、まだ整理できていない。


けれど――。


一人じゃない。

そう思えるだけで。

胸の奥に溜まっていた重さが、少しだけ軽くなっていく。




その後。


ルティーナ達は昨日と同じ部屋割りで、それぞれ部屋へ戻ることになった。


夜も更け。

窓の外では、静かな風が吹いている。

ロザリナはベッドに腰掛けたまま、自分の両手をじっと見つめ、意識を集中していた。


すると――。

手のひらの間に、淡い金色の光が灯る。


「おっ、もう感覚掴み始めてんじゃね?」


「うん、なんとなく……光を集める感じ?」


「(光を集める? 見えねぇ~)」

「まぁ才能ある奴って、感覚で覚えるもんだよなぁ……」


サーミャは半ば呆れたように笑った。


「ほんと、末恐ろしいぜ」



初めて、自分の意思で回復魔法を使えた。

しかも、シェシカですら驚くほどの力を。


「ねぇミヤ……今日は色々ありがとう」


ベッドへ寝転がりながら、ロザリナがぽつりと呟く。


「あなたの元仲間の皆さん、本当に良い人達ばかり」

「私……シェシカさんからいつまで教われるか、わからないけど」

「回復師、頑張ってみるよ」


サーミャは椅子へ深く座りながら、ニヤリと笑った。


「だけどよぉ、どっちかっていうと、リーナは格闘家の方が向いてそうだけどな?」


「うっ……」


ロザリナの顔が引きつる。


「それは……自分でも思ってた」


「あははっ!」


サーミャは楽しそうに笑った。


「まぁ、グルバスなら喜んで相手になってくれるさ」


その言葉に、ロザリナは少しだけ笑う。

だが、すぐに視線を落とした。


「……本当に、何から何までありがとう」

「それに、あの件の事は任せっきりで――」


「大丈夫さ、ルナに任せとけば」


サーミャは即答した。


「それより、魔力操作の練習もほどほどにして寝ろよ?」


「うん……」


そうして二人は眠りについた。






翌朝。

朝食を済ませたルティーナ達は、再び二手に分かれて行動を開始した。


「ミヤっ、私達は昼から待ち合わせだから、そっちは任せるわね」


「おうよ」


サーミャとロザリナは、そのままギルド広場へ向かう。


朝のギルドは、すでに活気に満ちていた。


武器を背負った冒険者達が行き交い。

訓練場からは金属音が鳴り響く。


そんな中。


「サーミャ~っ! ロザリナぁ~っ!」


大きく手を振っていたのはシェシカだった。

その後ろはグルバスの姿もある。


「おう、シェシカ。体はもう大丈夫か?」

「馬鹿バスも居るじゃねぇか。ちょうどいいや」


「おいおい、ガイゼルの件で借りは返したはずだぞ?」

「(人前で馬鹿バスはやめろ!)」


「じゃあ、新しく貸しを作っとけ」


「……まったく、変わってねぇ」


そんなやり取りを見て。


ロザリナは思わず吹き出した。


「なんか、本当に仲がいいんですね」


「「腐れ縁ってやつさ」」


シェシカは苦笑しながら、ロザリナへ向き直る。


「ところで、魔力操作の練習はどうだった?」


「えっと……魔法が使える時みたいに、身体が熱くなる感覚を意識してたら……」

「少しだけ、普段でも感じ取れるようになりました」


「上出来よ」


シェシカは満足そうに頷いた。


「その感覚を、自分の意思で再現できるようになるのが第一歩だから」


そして、そのまま本日の訓練内容を説明し始める。


「今日は、防御魔法を覚えてもらうわ」


「防御魔法?」


「回復師は後衛だけど、狙われない保証なんてないもの」

「特に、あなたみたいな希少な回復師は真っ先に狙われるわ」


そう言って。


シェシカは隣のグルバスを指差した。


「実践相手は、この脳筋さんよ」


「誰が脳筋だっ……ったく、おまえもサーミャが戻って来てからというもの……」


「あはは、間違ってねぇじゃん」

「力で解決するから脳筋じゃん」


「否定できねぇ……」

「しかし、おまえら二人揃った時のノリ……久しぶりに心地いいわ」


ロザリナは苦笑しながら頭を下げた。


「グルバスさん、よろしくお願いします」


「おう、遠慮なく来い」




ギルドの練習場で早速、シェシカは詠唱を教える。

今回は、防御壁の展開である。



しかし――。


「(……あれ?)」


何も起きない。

ロザリナは困惑したように両手を見つめた。


「やっぱり、うまくできないか――」

「(グルバス、追い込んでみてちょうだい?)」


「あぁわかった」


グルバスが地面を蹴った。


「っ!?」


巨体が、一気に距離を詰める。


まるで不意打ちだった。

ロザリナの瞳が大きく見開かれる。


「ちょ、まだ準備がっ!」


「ほぉ~受け流せるじゃねぇか!」

「なら、もう少し速度上げるぞ!」


「おいグルバス、それ以上は――」


サーミャが止めるより早く。

ロザリナの身体から、淡い金色の光が溢れた。


瞬間――。

彼女は本能的に踏み込み。


「ふぎゃっ!?」


グルバスの顔面へ、渾身の拳を叩き込んでいた。


巨漢の身体が宙を舞う。

そのまま五メートルほど吹き飛び、壁にめり込む。


広場が静まり返る。


「…………」


「…………」


「きゃああああっ!! グルバスぅぅぅっ!?」


シェシカの悲鳴が響いた。


「ロザリナぁぁっ!!」


「面白れぇーリーナの奴、『身体強化』使いやがった!!」


「『防御壁』の練習でしょぉぉがっ!!」


「あっ……つい、癖で……」


「癖で人を吹っ飛ばさないでっ!!」


そんなやりとりを横目に、グルバスは白目を剥いていた。


「あ~……鼻の骨、完全に折れてるわね」


「ご、ごめんなさいぃぃぃっ!!」


ロザリナは半泣きで頭を下げ続ける。


しかし――。

シェシカは逆に、目を輝かせていた。


「(グルバスごめん、中級回復魔法の練習台になって……)」

「予定変更よロザリナ!!」

「今から回復魔法の実践やるわ!!」


「へ?」


そのままシェシカは、中級回復魔法の詠唱を教え始める。

ロザリナは必死に復唱した。


そして――。


淡い黄金色の光が、グルバスを包み込む。


ミシっ――。


骨が戻る音が響いた。

腫れ上がっていた鼻が、みるみる元へ戻っていく。


「……え? (この子、どんな魔法でも……再生魔法級じゃない)」


シェシカが固まる。


「うぅ……俺は……?」

「あっ、ロザリナに殴られて――ん? 治ってる?」


「無事じゃなかったわよ、今!!」


「ご、ごめんなさいぃぃっ!!」


ロザリナは再び謝り始める。


だが。

グルバスは鼻を触りながら、感心したように笑っていた。


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