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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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第38話 父ノ日記

ロザリナから依頼を持ちかけられたルティーナたち。

だが彼女たちは、それをそのまま受けるのではなく――逆に『協力関係』を提案した。


理由は単純だった。

ロザリナは、自分たちより遥かに真相へ近い場所にいた。


だからこそ、放ってはおけなかった。


「私が……強い?」


ロザリナがきょとんと目を瞬かせる。


「うん」


ルティーナは素直に頷いた。


「あなた、格闘家なんだよね?」

「私たち、そういう前衛タイプがいないの」

「だから、すごく助かるなぁって」


だが、ロザリナは小さく首を横に振る。


「違いますよ」

「……ただ、殴り合いの方が得意なだけです」


「いやいや、それだけで大男を吹っ飛ばせねぇだろ……」


サーミャが呆れたようにツッコむ。


「う~ん……怒った時だけ、急に身体が熱くなるんです」

「力が湧いてくるって感じっていうか」


「……なるほどね」


ルティーナが目を細めた、その時だった。


「そうそう、喧嘩の最中はリーナの魔力が凄まじく上がってましたぁ~」


「……え?」


ロザリナが目を瞬かせる。


「リーナ? 私の事?」


「あぁ~、シャルのあだ名病だから気にすんな」


サーミャが笑いながら肩をすくめた。


「嫌だったら、全力で否定しないと、ずーっと言われるぜ?」


ロザリナは恥ずかしそうに。


「ううん、嫌じゃないよ。なんか嬉しい」

「……このオッドアイのせいで、友達なんていなかったから……あだ名なんて言われたことないし」


サーミャが話を戻す。


「じゃぁ決まりだ」

「ところでリーナってさ……光魔法使いの素質があるんじゃないか?」


「はぁ!?」


ロザリナが素っ頓狂な声を上げる。


「わ、私、生まれて一度も魔法なんて使ったことありませんよ!?」


「いや、無意識なんだと思うぜ」


サーミャは腕を組む。


「光魔法には『身体強化』や『自己治癒』を扱えるやつがいるらしい」

「あんな喧嘩してて、怪我ひとつ無いのが、その証拠さ」


ロザリナは、自分の拳を見つめる。


あれだけ暴れたのに――傷ひとつ無い。


「……そういえば」



彼女の脳裏に、ある日の記憶が蘇る。


父の死を知らされた日。

怒りで頭が真っ白になった瞬間――気付けば、自宅の壁を殴り壊していた。

本来なら拳は血だらけになっていたはずなのに。

傷は、ひとつも残っていなかった。


「つまり――」


ルティーナが整理するように言う。


「リーナは、怒りで興奮状態になると、無意識に光魔法を発動してるのね」


男たちを吹き飛ばす腕力。

獣みたいな瞬発力。

常識外れの耐久力。


そして――怪我をしても勝手に治る身体。


ロザリナは呆然としていた。


だが同時に、今までの異常な力にも説明がつく。


「(あれは……魔法だったの?)」


背筋にぞわりとした感覚が走る。



「多分な」


サーミャは軽く肩をすくめた。


「かなり厄介……いや、すげぇ能力だと思うぜ?」


「わ、私が……そんな……」


ロザリナは戸惑いを隠せなかった。


そんな彼女に、ルティーナが優しく声をかける。


「……ねぇリーナ」

「さっき依頼を受けてほしいって言ったけど」

「本当は限界だったんじゃない?」


「――っ」


図星だった。

ロザリナは視線を落とし、ぽつりと呟く。


「……半月よ」

「お父さんが死んでから……何も掴めてない」


「この街で『模様』について聞き回ってたんだろ?」

「なら、もう相手も警戒してるかもな」


サーミャの言葉に、重苦しい空気が流れる。


そんな中。

ぽんっ、と手を叩いたのはシャルレシカだった。


「ならぁ協力関係でなくぅ、いっそリーナもぉ『零の運命』になっちゃえばいいですよぉ」


「……でも私、誰かと一緒に行動なんて」


ロザリナは不安そうに視線を揺らす。


「リーナは、あたいたちに頼るだけで終わる気なのか?」


言葉がでないロザリナ。


「うんっ、それいいわね!」


ルティーナは乗ってくる。


「リーナは魔法のことを知らなすぎる」

「冒険者になっちゃえば、光魔法の修行もできるし、私達との活動で情報も集めやすくなる」


「わ、私が冒険者ですか?」


「お父さんの疑いを晴らすまでの間だけ! ねっねっ」

「一緒に行動しましょ?」


「……いいんですか?」


「決まりだな!」


サーミャが笑いながら立ち上がる。


「なら、一度、ノスガルドに戻ろうぜ!」

「光魔法ならシェシカに教わればいい」



(なぁルナ、ひとつだけ確認しておきたいことがあるんだ)


 突然、馬琴(まこと)の声が頭に響く。


(ロザリナの父親の日記だ)

(例の痣の事以外に、まだ何か隠してる可能性がありそうで……)


その言葉を聞いたルティーナは、皆を一度、制止する。


「待ってミヤ」

「ノスガルドに戻るのは明日にしましょ」


「え?」


「リーナ、今晩、あなたの家に泊めてもらえる?」


「「「?」」」


ロザリナは目を丸くした。


「別にかまいませんけど……」


結局、四人はロザリナの家へ向かうことになった。





食後――。

ルティーナは、ロザリナの父の日記を見せてほしいと頼んだ。

しかしロザリナは、あまり乗り気ではない。


「読んでも、たぶん私が話した以上のことは書いてないと思うけど……」


「ふっふっふ~」

「なるほどぉ~そういうことですかぁ、私の出番ですねぇ~」


シャルレシカの胸が揺れる。


「シャルはね、持ち物から『思念』を読み取れるのよ」


「えっ、そんなこと出来るの!?」



シャルレシカは日記と水晶に両手を添えると、ゆっくりと瞳を閉じた。

いつものようにふわふわした空気が消えていく。

それに合わせるように、室内の空気まで静まり返っていく。


「えっ……別人みたい……」


「これからがシャルの本領発揮よ」

「こういう占いをさせると、大抵寝落ちしちゃうけどね」


「……何なのそれ」


ロザリナが圧倒されている間にも、シャルレシカは深く集中していく。


やがて。

ぽつり、と呟いた。


「……左腕ですぅ」


「え?」


「リーナのお父さんはぁ、左腕に入れ墨のある男を見てぇ……それを描き残したみたいですぅ」


「そんなこと、日記には……」


「あとぉ……部屋を覗いてぇ、困った顔をしてる景色が見えましたぁ」


サーミャが眉をひそめる。


「何かを見ちまった……って感じか?」


「かもしれませんねぇ~」


さらにシャルレシカは、小さく微笑んだ。


「それとぉ……リーナのお父さん、とっても暖かかったですぅ」

「リーナのことを、本当に大好きだったんですねぇ」


「――っ」


ロザリナの瞳が揺れる。


(お父さん……)


「それ以上はぁ……むにゃぁ……」


限界だった。

シャルレシカはその場で意識を失い、サーミャに抱えられて寝床へ運ばれていった。



その後。

三人は改めて日記を読み返していた。


馬琴(まこと)は、一文一句見逃さぬようルティーナに確認させる。


そして――。

ある文章で、彼は反応した。


 ――もし私の身に何かあったら、この日記を読んでくれるだろうか。

 ――その時は、ロザリナに妻の墓を見てほしい。


「これ?」

「お母さんのお墓の管理を頼んでるだけじゃ……」


(違う)


「ち、違うと思うわ」


 ルティーナが即答する。


(これは『遺言』……)

(何かの『隠し場所』を伝えようとしているのかも)

(この日記が、他の誰かの目に入ってもリーナみたいに誤解するように書いてる……)


「(そっか!)」


「え……? ルナ、何かひっかかるの?」


「秘密を知って……自分も消されるって悟ったのよ」

「だから、墓に何かを残しているかも」


ロザリナは息を呑んだ。


「お母さんのお墓なら……裏山の共同墓地にあるわ」


「決まりね」

「明日の朝、一番で向かうわよ」


そして、その夜。

それぞれ不安と期待を胸に眠りにつくのだった。


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