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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第参章 ~戦ウ聖女~

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第33話 零ノ|運命《デスティニー》

アンハルトからの依頼。

そして、サーミャ失踪事件。


その全ては――ようやく終わりを迎えた。


だが。

ルティーナ達は知ってしまった。


父・バルスト暗殺の裏側。

盗賊団を裏で操っていた『何者か』の存在。

そして――勇者という言葉。


まだ終わっていない。

むしろ、ここからが始まりなのだと。



左から シャルレシカ/ルティーナ/サーミャ

挿絵(By みてみん)

宴会は朝まで続いた。

ギルドの鑑定室は宴会場と化し、笑い声が途切れることはなかった。


失ったと思っていた仲間が戻ってきた。

その事実だけで、十分だった。


サーミャは真っ先に酒に呑まれ、

シャルレシカは大量の料理を抱え込み、

アンハルト達は泣きながら酒を飲み、

酔いが回ったオリハーデは、ルティーナに孫の話ばかり繰り返し語り続ける。


その光景を、レミーナだけが呆れ顔で見守っていた。


一度は全てを失ったと思っていた。

だからこそ――。

今、この場所に居られる事が、

サーミャにはたまらなく嬉しかった。


そして――。

サーミャがルティーナに抱きつく。


「ルナぁぁ~! ういっ……お前も飲めぇぇ~っ!」


「だから私は――っ!」


「十九にもなって細けぇこと言うなぁ!」


(飲ますな!)





翌日。昼を過ぎた頃――。

三人はカルアの宿で完全に潰れていた。


「ぅぅ……頭いてぇ……」


サーミャはベッドの上で悶える。


「ルナぁ~……水ぅ~……」


シャルレシカは布団に埋まりながら寝言を漏らしていた。


「もう食べられませぇ~ん……むにゃむにゃ……」


「……いや絶対まだ食べるでしょ、あなた」


ルティーナは布団の中で、耳を必死に押さえる。


(お前が煽ったんだろ……)


「(うるさいわね……)」



だが。

夕方になると、サーミャだけは起き上がった。


「……あぁ、くそ」


頭を抱えながら立ち上がる。


「やっぱ、今日中にギルド行ってくるわ」


「ん?」


「再登録だよ」


そうだった。


サーミャは二年間、失踪扱い。

冒険者証も失効している。


再発行と再登録が必要なのだ。


「明日でもいいじゃない?」


「いいや、あたいの気がすまねぇからな……」


そして彼女は、ふらふらと宿を出ていった。



――静かになった宿部屋。


やっと眠れる。

ルティーナは安堵した。


再び眠りにつこうとした頃。


バタンッ!!


扉が勢いよく開かれた。


「な、なんでだぁぁぁぁっ!!」


サーミャが絶叫しながら飛び込んできた。


「えっ、なにっ!?」


「なんで『銀』なんだよぉぉぉっ!!」


机に突っ伏し、ばんばん叩く。


「『金』だろ!?」

「あたいは最強の魔法使いなんだぞ!?」


「……あ~」


ルティーナは察した。


実績消滅。


ギルド規約上、再スタート扱いになったのだろう。


「うぅぅ……」


サーミャは半泣きだった。


「せっかくルナの役に立てると思ったのにぃ……」


(お前ら、意外と似た者同士だよな)


「(……否定できない)」


ルティーナは苦笑した。


「気持ちだけでうれしいよ」

「大丈夫だから――」


「へ?」


「ミヤを探し出した報酬で、『碧き閃光』の後ろ盾が使えるようになったのよ」


「……は?」


サーミャが固まる。


「え、それ先に言えよぉぉぉぉっ!!」


「タイミングなかったし……」


「うわぁぁぁぁっ!」


ベッドに顔を埋めて暴れる。


「知ってたら落ち込まなかったのにぃぃ!」


「はいはい」


ルティーナは笑った。


すると。

サーミャが、ふっと真顔になる。


「なぁ、ルナ」


「ん?」


「パーティ名、どうする?」


空気が少し変わった。

シャルレシカも布団から顔を出す。


「そこは(かしら)に任せるぜっ!」


(かしら)って言うな!」

「丸投げしないでよ……」


ルティーナは少しだけ目を伏せた。


失ったもの。

奪われたもの。

もう戻らないものもある。


それでも。

前には進むしかない。


(それなら……)


馬琴(まこと)はひらめく。


(――いいわね、それ)



「決められた運命を、零から塗り替える」


ルティーナは静かに笑った。


「――『零ノ運命(デスティニー)』」


数秒の沈黙。

そして。


「いいじゃんっ!」


サーミャが真っ先に食い付く。


「めっちゃ好きだわ、そういうの!」


シャルレシカも嬉しそうだった。


「かっこいいですぅ~!」


「ほんと?」


「おう!」

「はぃ!」


サーミャはルティーナの肩に手を回しながら、笑う。


「これからよろしくな、『零の運命』の(かしら)


照れくさそうにルティーナは、サーミャの手をつねる。


「だから(かしら)って言うなぁっ!」


宿部屋に笑い声が響いた。





ふと、シャルレシカが思い出したように口を開く。


「ところでぇ、ヘレンのお姉さんの件はどうしますかぁ?」




話は昨夜、宴会の最中に戻る――。


ヘレンは、生き別れた姉――カレンを探していると話していた。

だが。


シャルレシカの占いですら、水晶には何も映らなかった。


「同い年らしいじゃん?」


「姉なのに?」


「双子ってことじゃねぇか?」


サーミャが腕を組む。


「でも、『十七年前に生き別れた』って情報だけじゃなぁ……」


「同じ顔なら、見つけやすそうだけど……」


ルティーナは呟く。


すると。

シャルレシカが少し不安そうに口を開いた。


「でもぉ……」


「ん?」


「水晶に映ったお母さん……嫌そうな顔してましたぁ……」


「嫌そう?」


「はぁい……」


その一言が、妙に引っかかった。


だが。

今は情報が足りない。


ルティーナは考えるのをやめた。


「ま、その内なにか分かるでしょ」




そして立ち上がる。


「明日からは、『零の運命』としての初仕事を獲るわよ!」


「おぉ~っ!」

「がんばりますぅ~!」





翌日。

三人は、ギルドの依頼掲示板の前に立っていた。


以前とは違う。


今の彼女達は――もう『選ばれる側』ではない。

自分達で道を選ぶ側だ。



「なぁなぁルナ!」


サーミャが一枚の依頼書を剥がす。


「これ、どうだ?」


「護衛依頼?」


「報酬、一人金貨十枚!」


「高っ!?」


ルティーナは目を見開いた。

通常依頼とは桁が違う。




――任務の内容――


[依頼主:アバダルト商会]

・ブクレイン公国の貴族エルバルクの屋敷まで、商品の運搬に伴う護衛。

 帰りは護衛は不要。

・街道では、盗賊に襲撃される事例が増加しているため、最大五人で、特に戦闘系の職業を希望。

・一泊二日での馬車移動、宿泊は野営の予定


[報酬]

・護衛一人につき金貨十枚




ルティーナの胸が高鳴る。


今度は違う。

ただの立ち寄りではない。


まだ見ぬ街。

未知の世界。


――旅だ。


「いいわね」


ルティーナは笑う。


「決まり!」


「わぁ~い!」


三人は受付へ向かった。


「レミーナさん、この依頼お願いします!」


依頼書を見たレミーナは少し驚いた。


「いきなり大きいの狙うわね」


「駄目ですか?」


「ううん、全く問題ないわよ」

「例の肩書もあるしね」


『碧き閃光』の紹介状。

それは、ギルドでも破格の信用だった。


「ただし」


レミーナが指を立てる。


「依頼主には必ず紹介状を見せること」


「はーい」


「常連だから、粗相しないようにね」


「「はーい!」」

「あぁ」


「(ガイゼルさん、受け入れてくれるかしら……)」



そして、アバダルト商会へ向かう。




――アバダルト商会。


ノスガルド最大規模の商会。

近隣諸国への物流を支えている。


特に今回の輸送先であるブクレイン公国へ向かうには、

『バリア・ストーン』の恩恵が薄い危険地帯を越える必要がある。


そのため、護衛依頼の報酬はいつも高額だった。





「おっ、ルナリカじゃねぇか?」


大男が声をかけてきた。

筋骨隆々。

大柄な体。


『碧き閃光』の金級格闘家――グルバスだ。


「いい任務は見つかったかい?」


「おっ! 暇人が居るじゃねぇか」


サーミャが指をさす。


「面貸せ!」


「はぁ?」


サーミャは、グルバスの肩に腕を回しながら話しかける。


「今回だけでいいからさ!」


グルバスは事情を聞き、呆れ顔になる。


「さすがに、うちらだけじゃ心配でさ」

「あたいも勝手がわからねぇし……一緒に来てくれよ」

「あの件、チャラにしてやるからさ」


グルバスは、ルティーナ達を見て半ば納得する。


「……まだ根にもってたのかよ」


「当たり前だろ」


「ったく……」


だが。

彼はルティーナ達を見て、少し考え込んだ。


「……まぁ、確かに」

「この面子だけだと、おっさんは絶対ごねるな」


「だろ?」


「……あぁ分かったよ……今回だけだぞ」


ルティーナは首をかしげていた。


「俺も同行させてもらうぜ」


(……)


馬琴(まこと)は、少し不安を感じていた。

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