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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第弐章 ~魔法使イ~

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第30話 魔石使イ

水晶へ映し出される記憶。

暴かれていく秘密。


暗殺。

奴隷。

黒幕。


ドグルスは理解していた。

このまま情報を吐き続ければ――自分は消される。


だからこそ。

必死に時間を稼いでいた。


「――ところでよぉ」


にたり、と口角が吊り上がる。


「闇女は、ちゃんと始末したのかぁ?」


その瞬間。

サーミャの顔色が変わった。


「……何よ!」


「いやいや」

「あいつが、ただ監視していただけだとでも?」


ドグルスは、わざとらしく肩をすくめる。


「『碧き閃光』の連中が、今頃どうなってるか――」

「俺様にも分からねぇけどなぁ?」


ルティーナの目が細くなる。


「……はっきりいなさいよ!」


「俺を調べるより」

「先に、あいつを調べた方がいいんじゃねぇか?」


ドグルスが嗤う。

次の瞬間だった。


 ――ドォンッ!!


「「「――えっ!?」」」


倒れていた盗賊の一人が。

突然、背中から爆発した。


肉片。

血煙。

赤黒い飛沫が、洞窟の壁へ叩きつけられる。


ドォン!!

ドォォンッ!!


連続する爆音。

盗賊達が、次々と爆散していく。


「ちょっと!」


ルティーナ達が息を呑む中。

ドグルスだけが、笑っていた。


「分かるかぁ?」


ぎらついた瞳。


「俺の意思ひとつで、殺せるって事だよぉ!!」


サーミャが睨みつける。


「てめぇ……!」


「『碧き閃光』の連中が、罠にかかってなければいいがな?」


下卑た笑み。


「そうさ、これは交渉だ」

「俺を見逃せば、助けてやる」


サーミャへ視線を向ける。


「急がねぇと――」

「また仲間を見殺しにする事になるぜぇ?」


その言葉。

それは明らかに。

サーミャの傷を抉るためのものだった。


「ひゃはははははっ!!」


だが。


馬琴(まこと)だけは、違和感しか覚えなかった。


(……こいつ)

(喋りすぎだ)


ルティーナも、同じ結論へ辿り着いていた。


「あなた――」


静かな声。


「きゃんきゃん、うるさいわね」

「小物って、よく喋るのかしら?」


「……あぁん?」


ドグルスの顔が引きつる。


「だとぉ! ガキが――!」


さらに。


ドォォンッ!!


また一人、盗賊が爆散した。

しかし。

ルティーナは、そちらを見ない。


真っ直ぐ。

ドグルスだけを見ていた。


「あなた、『自分の意思で爆破できる』って言ったわよね?」

「だったら――」


にこり、と笑う。


「さっきから、戦える奴らばかり爆発しているようにしか見えないんだけど?」


「……っ!」


サーミャも気付いた。


爆発しているのは。

瓦礫に埋もれていた瀕死の連中じゃない。

生き残っていた盗賊ばかりだった。


「ねぇミヤ」


ルティーナが振り返る。


「そこに積んである鎧、持ってきてくれる?」


「……? お、おう」


サーミャは、未装着の鎧を抱えて戻る。


そして、気づく。


「あっ……!」


内側を見た瞬間、顔色が変わった。


「この石……まさかっ!」


黒紫色の鉱石。

不気味な脈動。


ルティーナが、にやりと笑う。


「やっぱりね」

「これ、『魔法を弾く鎧』なんでしょ?」


その瞬間。

ドグルスの顔から血の気が引いた。


「魔法結界が通用しないなら、慌てて装着せざるを得ないものね」


「な、何が言いたい!」


「『カース・ストーン』は、複雑な条件設定ができない」


ルティーナが断言する。

サーミャが食いつく。


「どういうことだ! ルナ」


「『自由に殺せる』なんて、そんな都合のいい条件つけられるわけないじゃない」


鎧を見つめる。


「これって、装着から一定時間経ったら爆発――」

「それだけでしょ?」

「鎧ごとに、時間を細かく変えてるみたいだけど……」


バルスト暗殺。

実行犯の首輪。

ヴァイスの死。


全部。


『時間差起爆』で説明がつく。


「……っ!」


サーミャは爆散した盗賊達を見渡す。


「鎧を着てる奴だけ……!」


完全に沈黙するドグルス。

それが答えだった。


ドォォンッ!!


無常にも。

最後の一人が爆散する。



「そういうこと……か」


怒りに震えるサーミャが一歩近付く。


「じゃあ、てめぇが着てみろよ」


「や、やめ――」


「ほら」


「やめろぉぉぉぉぉっ!!」


身動きできないドグルスに、鎧が被せられる。


瞬間。

黒い石が脈打った。

鎧が、生き物のように身体へ密着する。


「うわぁぁぁぁぁっ!!」


その姿を見ながら。

サーミャは、小刻みに震えていた。


ルティーナは静かに問いかける。


「最後に確認したいの」

「……ヴァイスさんの首輪」

「その条件は――」


ドグルスは黙る。


ルティーナは続けた。


「『数分後に締まる』だったんでしょ?」


サーミャの息が乱れる。


「ミヤが魔法を使うタイミングへ誘導した」

「そうすれば、自分が殺してしまったって思い込むものね?」


「……っ」


長い沈黙。


やがて。

ドグルスは、歪んだ笑みを浮かべた。


「あぁ……そうさ」


サーミャの心臓の鼓動が激しくなる。


「時間調整してやったのさ」

「入口から追い払ってよぉ」

「焦って魔法を使うように仕向けたのさぁ!」

「――まんまと、自分が殺したって信じ込みやがってよぉ!」

「傑作だったぜぇ~」


その瞬間。

サーミャの中で。

何かが切れた。


「……わ、たし……」


震える声。


「ヴァイスを……っ」


ぽろり。

涙が落ちる。


次の瞬間。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」


堰を切ったように、泣き崩れた。


長年抱えていた罪悪感。

呪い。

後悔。


全部が、一気に崩れ落ちていく。


ルティーナは、そんなサーミャを優しく抱き寄せた。


「もう大丈夫」

「ミヤは悪くない」


サーミャは泣き続ける。


子供みたいに。

ずっと。

ずっと。


馬琴(まこと)は、静かに目を閉じた。


(……よかったな、サーミャ)



ルティーナは、ドグルスから杖を取り上げた。


「これは、ミヤ達の大切なものよ」

「返してもらうわ」


そして――。

冷たい目を向ける。


「さよなら、魔石使い」

「自分の呪いで――闇に消えなさい」




だが、シャルレシカは完全に限界だった。


「ね、眠いですぅ……」


「ごくろうさま」


ルティーナは苦笑しながら【(かすか)】を描く。


ぽつん、と小さくなるシャルレシカ。


「ふみゅぅ……」


そのまま抱きかかえ、その場を後にした。




背後から、情けない声だけがこだまする。


誰も振り返らなかった。


「ま、待てっ!!」

「誰と話してたか知りてぇだろ?」

「助け――」


――ドォォォォンッ!!


爆音。

断末魔。

崩落音。


そして。

静寂。





ルティーナ達は、ヘレンを回収しに向かっていた。

サーミャは、まだ涙を拭っている。


「……ありがとう」


小さな声。


「これで……ヴァイスの墓参りに行ける」

「堂々と……」


ルティーナは笑う。


「当たり前でしょ?」

「私達は仲間なんだから」


その言葉に。

サーミャは、少しだけ照れ臭そうに笑った。




その後。

二人は、横たわるヘレンを発見した。

彼女も小さくして回収し、無事に洞窟を脱出した。



外には――朝陽。


まるで。

長い悪夢の終わりを祝福するように。


優しくルティーナ達を照らしていた。


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