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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました  作者: うにかいな
序章 ~召喚~

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第3話 漢字

「……喉、渇いた」


ルティーナはそれだけを考えていた。

意識のすべてが、水差しへと向いている。


動かない体を無理やり動かし、どうにかベッドから降りようとする。


(無理するなよ)


「ちょっとくらい平気よ」


(その状態でか?)


「いけるってば」


腕に力を込める。

体が、わずかに浮いた――その瞬間。


ベチンッ!!


「痛っっっぁぁぁぁ!!?」


顔面から、豪快に落ちた。


(派手にいったな!?)


「笑ってないで助けなさいよぉ!!」


(俺、触れないんだけど……)


床に転がったまま、ルティーナは悶える。


「……痛いよぉ……」


(大丈夫かい?)


「大丈夫じゃない……」


その時だった。

さりげなく映った目線の先――。


(……ん?)


違和感。

床に――何かがある。


(なんだあれ……)


「なに? 何もないじゃない」


だが、確かに見える。

不自然に見える模様。


――【水】


(これ、『水』って書いてあるよな?)


「……は?」


ルティーナの声が一段低くなる。


「マコト、頭、大丈夫?」


(いやいや――そうか、この世界に漢字はないんだ)


もう一度見る。


――やはり【水】にしか見えない。


(なんでこんなものが……)


「何? ただの模様じゃない!」


(違う、あるんだって!)


「ないってば!」


(正直、どう見ても――)


――その瞬間。


ドバァァァァッ!!


「ぎゃあああああああああああああ!?」


床から水が容赦なく噴き出した。


(はあぁぁぁぁ!?)


一瞬で床が濡れ、勢いは止まらない。


「ちょっと待ってなにこれ!?」


(知らん!!)


「マコトの仕業でしょ!!」


(違うわ!!)


水は増え続ける。

部屋が、みるみる水浸しになっていく。


「やばいやばいやばい!!」


(落ち着け!!)


「無理ぃぃぃぃ!!」


ルティーナは必死に、噴き出す場所へ覆いかぶさった。

動かない体で、無理やり押さえ込もうとする。


「止まれぇぇぇぇ!!」


(気合でどうにかなるか!!)


「どうしろっていうのよ」

「マコト、なんとかしなさいよっ!! お目付け役なんでしょ?」


(それは関係ないだろ! そんなこと言ったって、意識なんだぞ俺は――)


――その時。

ピタリ、と。

水か嘘のように止まった。


「……え?」


静寂。


「……止まった?」


(ああ……)


再び、床を見る。

水面の下には、【水】はなかった。


(文字が消えてる……?)


「マコト……」


ルティーナのびしょ濡れのまま、震えていた。


「現実、私は最悪なんだけ……ど……へっくしゅん」



そして部屋に近づく、慌ただしい足音が二つ。


バンッ!!


「ルティーナ!?」


扉が開き、両親が飛び込んでくる。

そして、固まった。


「な……なんだこれは!?」


水没した部屋。

中央でずぶ濡れの娘。


「ルナ!? 何が起こったの!」


「ち、違うの……そこから……水が……」


「無理に喋らなくていいっ!」


アンナは天井を見る。

そこには水が噴き出した時の、痕跡が残っていた。


「あっ!」


「あなた、この前の大雨で屋根裏に水が溜まってたんじゃない!?」


「……それが洩れたっていうのか!」


(いやいや奥さん……理解が雑すぎるだろ……)


「きっとそうよ!」


「うむ!」


納得した。


「(それでいいんだ……でも一体)」


(考えるのは後だな)


小声で同意する二人。



ルティーナはバルストに助けられ、抱きかかえられる。

部屋を後にし、アンナの部屋まで運ばれる。




――着替えの時間。


「(ちょっと待って!)」


一瞬、思考が止まる。

ルティーナは不自然に天井を見つめた。


(なんで上見てるんだ?)


恥ずかしそうに必死に言いわけをする。


「(……絶対、見ないでよ!)」


(はぁ?)


ルティーナは懸念していた。

馬琴(まこと)が視界を共有していることを。

そして理解した。


(あっ……そういうこと。安心しろ、俺にはそんな興味はない)


「(はぁ?? それがレディに言う言葉?)」


――その後。

二人は盛大に言い争いになった。


そんな状況も知らないまま、アンナは着替えを淡々としていた。



食事を終え、ルティーナはアンナのベッドで横になる。

アンナは部屋から去っていく。



そして、馬琴(まこと)の考察が始まる――。


(さっきのは、魔法かやつかい?)


「違うわ」


即答だった。


「この世界の魔法は詠唱とか、媒介が必要なの」

「そもそも、私に魔力はなし」


水魔法は存在している。。

だが発生させるものではなく、操る能力。


(……じゃぁ、あの現象は)


沈黙。

やがて。


「ねぇマコト、さっき言ってたよね? 『ミズ』がなんたらって?」


床にあった違和感……【水】という漢字。

最初から部屋にあったのか?

それとも――。


「私が描いたってこと? 転落しただけなのに?」

「あの場所って、ベッドから落ちた時に、手を突いたような……」


(! まさか)

(そうだよな……『水』が飲みたいって欲してたただけだもんな)


【水】――


再びの沈黙。


「!」


そこに。

今度は、手のひらに【水】が浮かび上がる。


「こ、これじゃない?」


(これだ……これが床に触れて、転写されたのかも?)

(このままでは布団に転写されてしまうのでは――消さないと)


しばらくすると、文字は消えた。


(もしかして、俺の意識で出し入れができるのか?)


「……そ、そうみたいね」

「私、それが『ミズ』って文字なんて知らなないもん」」


(ヤバくないかこれ)


「ヤバいね」


でも――

ここでは試せない。

2人は好奇心を抑え込む。


(ルナが動けるようになってからだね)


「う、うん……」





悶々とする二人。

だが、ルティーナは睡魔に襲われ眠ることにする。


「マコト、独り言やめてよね」


(えっ?)


「寝れないから」


(……善処します)


少しだけ笑う。

そして――静寂。


(……そういえば)


馬琴(まこと)は、ふと気づく。


(俺……どうやって寝ればいいんだ?)


答えは――ない。

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