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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第弐章 ~魔法使イ~

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第28話 真打現ル

ドルグルの怒号が、洞窟内へ響き渡る。


「おいっ! 反対側の封印石を壊せ!!」


後方の部下達へ怒鳴り散らした。


同時に。

足元に置かれていた鉄箱を蹴り開く。


中から現れたのは――鈍い黒光りを放つ石。

禍々しい。

見ているだけで、空気が淀んで見える。


『マジックシール・ストーン』


魔法封印効果を持つ希少鉱石だった。

周囲の魔力が、吸い潰されるように霧散していく。


「急げっ!!」

「流されている奴は、見捨てろ!!」


「は、はいっ!!」


さらに。

土魔法使い達へ怒鳴る。


「土壁で押さえ込め!!」


『ロック・ウォール――土壁――!!』


ゴゴゴゴゴッ!!


二重。

三重。


分厚い土壁が、幾重にも築かれていく。

そして、激流が直撃する。


だが。


土壁は軋み。

水圧に押され、亀裂が走る。


「ぐっ……!?」


「お、押し切られるっ!!」


盗賊達が悲鳴を上げた。



その頃――。


「ミヤぁ~」


シャルレシカが、声を上げる。


「悪意が急に増えましたぁ~」

「二十ぐらい、反対側へ集まって来てますぅ」


「……やっぱりな」


サーミャが口元を吊り上げた。


「これで――魔法を使わないと困るのは、あいつらになったわけだ」


敵は、水攻めを止めるために封印石を解除した。

つまり――。


「二撃目いくぜぇっ!!」


サーミャの瞳へ雷光が宿る。


『スプラッシュ・バイパー――ッ!!』


湖面から水が噴き上がる。

巨大な水蛇が、再び洞窟へ突撃する。


そして今度は――。

入口側から、激流が逆流してきた。


サーミャは、ニヤリと笑う。

敵が防壁で押し返した証拠だった。



「シャル。ルナは?」


「もうすくそこまで来てますぅ~」


「なら攻め時だな」



戦闘になるため、サーミャは一人で洞窟入口へ向かう。


だが、その前に。


『スプラッシュ・バイパー』


再び魔法を放った。


しかし今度は、

湖からでなく、洞窟の水をつかって。


洞窟内へ溜まった水を、強引に排出し始めたのだ。


ゴォォォォォッ!!


「うわぁ~……力技ですぅ~」



数分後。

洞窟内の水位は大きく下がっていた。


サーミャは慎重に内部へ侵入する。


『ライトニング・ニードル』


一定間隔で、雷針を撃ち込んでいた。

魔法が消える場所が変わったことを、確認するために。


やがて――。


バチッ。


雷が途中で掻き消えた。


「……だいぶ、前に進んだな」


その先には。


分厚い土壁が築かれていた。


「なるほどね」


サーミャは目を細める。


「あの壁の向こうなら、魔法が使えるって事か」


その瞬間だった。


ドゴォッ!!


土壁が突然崩壊した。


「っ!?」


直後。

無数の矢が飛来する。


だが。


『ストーム・サイクロン』


旋風で矢を吹き飛ばす。


すると、瓦礫の向こうから――。

薄気味悪い笑い声が響く。


「ククク……」


ドグルスだった。


大柄な身体。

禿げ上がった頭。

左頬を斜めに走る古傷。


その顔を見た瞬間。

サーミャの表情が凍りつく。

次の瞬間には――怒りで歪んでいた。


「てめぇぇぇぇっ!!」


殺気。

空気が震える。


「てめぇだけは……っ!!」

「絶対に地獄へ送ってやるっ!!」


「ほぉ?」


ドルグルは、一歩も下がらなかった。


盗賊達だけが、

気圧されたように後退する。


だが。

ドルグルだけは笑っていた。


「……面白ぇ」


ギリッ――。


拳を鳴らす。


「久しぶりの強敵だな」


その目は、

まるで獲物を見つけた猛獣だった。


「しかし……」

「あの首輪を外せたとはな」


ニヤリと口角を吊り上げる。


「まぁいい。あれは実験だったからなぁ」


「……実験?」


サーミャの瞳が揺れる。


さらに。

ドルグルは嗤った。


サーミャの瞳が揺れる。


「闇女……所詮、出来損ないか」


(――っ!?)


サーミャが息を呑む。


「あの闇女みてぇに、お前も利用してやるよ」


ぞわり――。

嫌な寒気が背筋を走った。


「(闇女って……ヘレンの事か?)」

「(倒したのはルナなのに……ここにたどり着いたあたいが、やったと思ってやがる)」


「野郎ども!!」

「あの女を生け捕りにしろっ!!」


盗賊達が一斉に襲い掛かる。

サーミャは即座に火炎弾を放った。


『フレイム・ボム!!』


盗賊達が足を止める。


だが。

ドルグルは余裕の笑みを崩さない。


「魔法が使える範囲がわかってるのか?」

「――なら、これはどうだ?」


遠くに居る部下に黒い箱を、サーミャの足元へ投げ込ませる。


ガラーン――。


中に何かが入っている。

そう察した瞬間。


サーミャの魔力が霧散した。


「なっ!?」


魔法が発動しない。


(移動した……違う、あの箱だ!)


黒箱の周囲だけ、空気が淀んで見えた。

魔力そのものが、吸い潰されているように。


(壊す? 遠くに投げる?)

(でも、近づけば――あたいは無防備に)


迷った、その一瞬。


「撃てぇっ!!」


無数の矢が飛来した。


「くっ……!」


回避し切れない。

一本が、左太腿へ突き刺さる。


「ぁぐっ!?」


転倒。

そこへ盗賊達が殺到する。


その時だった。


「ミヤぁぁぁっ!!」


背後から、シャルレシカが駆け寄ってくる。


「な、あんた! 何で来たのよっ!!」


「だってぇ~!」


シャルレシカは肺いっぱいに息を吸い込んだ。


そして。

洞窟全体を震わせるほどの大声で叫ぶ。


「ルナぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

「ここですよぉぉぉぉぉぉっ!!」


直後――。

真横の岩壁が、どろりと溶けた。


「助かったわっ!! シャル!!」


そこから飛び出してきたのは――。

ルティーナだった。


「(何が、飛ぶより早いよ!)」

「(迷子になっちゃったじゃない!)」


(掘り進んでたら、本気で迷っちまった……)


だが。

ルティーナの視線が、サーミャの血を見た瞬間。

ルティーナの笑顔が消えた。


洞窟の空気が、一瞬で凍りついた。


余裕を見せていたドルグルの顔が、初めて引きつった。


「はぁ!?」

「てめぇ、どうやって岩壁から……!」

「魔法が使えねぇはずだろ!?」

「貴様、ただの怪力の小娘じゃ――」


「私のことぉ?」


ルティーナは、ドグルスを睨みつける。


「私は、『通りすがりの無職』っ!」

「――ルナリカ様よっ!!」

「あんたが――ミヤを泣かせたクソ野郎ね」


少女とは思えない殺気。

盗賊達すら一歩後ずさる。


「覚悟なさい!」


ドルグルは、さらに顔を歪めた。


矢の攻撃が再開される。


だが。

ルティーナは二人を庇うように前へ立った。


そして。

地面へ手をつく。


(かま)


ゴゴゴゴゴォッ!!


巨大な岩の半球が、三人を包み込む。

当然、矢は全て弾かれる。


盗賊達は目を見開いた。


「な、何だぁっ!?」


「土魔法か!」

「あの場所は、魔法が使えねぇはず!」


盗賊達は混乱しながらも、数の暴力で群がる。


剣。

斧。

槍。


必死に岩を砕き始める。


ガンッ!!

ガキッ!!


岩肌に亀裂が走るたび、

洞窟全体が揺れた。


「思ったより……数が多いわね」


ルティーナは舌打ちしながらも、すぐサーミャの太腿へ手を添える。


刺さった矢の周囲へ――。


(いやし)


淡い光が広がった。


「い、痛みが……!」


「シャル、ドリネさんから貰った上薬草あるわよね?」


「はぁ~い」


そして。

刺さった矢を一気に引き抜く。


「っぁぁぁ!!」


血が飛ぶ。

即座に、シャルレシカが薬草を傷口に擦り込んだ。


傷口が塞がっていく。


三人の反撃の準備は着々と進む――。


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