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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~訳あり少女の意識の中で生き抜く異世界旅~  作者: うにかいな
第弐章 ~魔法使イ~

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第25話 魔物使イ

ルティーナが尋問役に選んだのは――襲撃グループをまとめていた男だった。

男は縄で簀巻きにされ、床へ転がされている。

その顔には、先程までの余裕は欠片もなかった。


「お、おい……本当に殺さねぇんだろうな……?」


「さぁ~?」


シャルレシカが、ふにゃりと笑う。

だが、その笑顔が逆に怖い。


サーミャは男の腕を乱暴に掴み、シャルレシカが差し出した水晶へ両手を押し当てさせた。


「暴れんな」


「いっ、痛ぇっ!?」


さらにルティーナが、【(はる)】で水晶を固定する。

ぴたり、と張り付いた。


「それじゃあ質問しま~すぅ♪」


ふわふわした声。

なのに、妙に怖い。


「嘘をついてもぉ~、別に構いませんよぉ~」


「……は?」


「頭に浮かんだ情報、こっちに映るのでぇ♪」


「!?」


男の顔から、一瞬で血の気が引いた。


その横で――。

サーミャが真っ赤になる。


「ちょっといいか?」


「ん?」


「あたい、めちゃくちゃ真面目に答えてたじゃねぇか!!」


「あ」


ルティーナが固まる。


「説明してなかった」


「先に言えよぉぉぉぉぉっ!!」


宿中へ、サーミャの悲鳴が響き渡った。

男は一瞬だけ「助かった」と思った。


――だが。

三人が同時に振り返る。


「「「……」」」


「ひっ!?」


結局、男は泣きながら記憶をかき回される。



三時間後。

十分な仮眠を取ったルティーナとサーミャ。

その間、尋問はシャルレシカに任せていた。


「この人達を動かしてたのはぁ、『ドグルス』っていう男ですねぇ」


水晶へ、髭面の男が映る。

その瞬間。

サーミャの声に、怒気が混じる。


「あたいに首輪をはめたのは……こいつだ!」


シャルレシカは続けた。


「ドルグルは、盗賊団の頭じゃないようですぅ」

「でもぉ、盗賊団の首領が逆らえないくらい権力を持っているようですぅ~」


二年前。盗賊団の首領が『不審死』した。

それ以降、ドルグルが実質的な支配者として裏から盗賊達を操っていたらしい。


しかも。

それだけでは終わらない。


「いろんな国に潜む盗賊達を束ねてぇ~、勢力を広げてますぅ」

「そして、希少な『光魔法』の使い手を、密かに集めてるみたいですぅ」


「……っ!」


 サーミャが歯を食いしばる。


「あの時から、シェシカは狙われてたのか……!」


ルティーナも息を呑む。

王国魔導師団から勧誘されるほどの回復術師。

そんな存在を、裏組織が放置するはずがない。


「理由は分からねぇ……か」


サーミャは拳を握り締めた。


「ドグルス、直接吐かせてやる!」


その言葉には、怒りだけではない。

過去への決着をつける覚悟が滲んでいた。


パシッ!


サーミャは地図を机の上に広げ一点を叩く。


「アジトは、ミヤシャン共和国西部の山脈地帯だ」


「――行こう」


ルティーナは即決した。


迷いはない。

だが――。


「あのぉ~」


シャルレシカが、おずおずと手を挙げた。


「尾行してた人も分かったんですがぁ~」


空気が変わる。


「……誰?」


「ヘレンさんですぅ」


(!)


シャルレシカが水晶を差し出す。

映し出されたヘレンを見て、ルティーナは静かに頷いた。


「ドグルスの駒として、シェシカさんとミヤを監視していたなら……辻褄は合う」


(……でも)




三人は追跡を避けるため、夜間移動を繰り返した。

宿を転々としながら、二日。

三国をまたぎ、ようやくミヤシャン共和国に日没前に入国する。



そして深夜。

ドルグルが潜んでいると思われる洞窟前へ辿り着いた。


山脈の奥深く。

風の音すら届かない暗闇。

まるで洞窟そのものが、生き物の口に思えた。


「……変ですぅ」


索敵していたシャルレシカが、小さく眉を寄せる。


「何が?」


「悪意の数が、増えたり減ったりしてますぅ」


「増減……?」


ルティーナとサーミャが顔を見合わせた。


意図的な索敵妨害?

奇襲が悟られていることを前提に、気を引き締める。



洞窟に潜入する前に、ルティーナは自分の肩口へ【(あかり)】を描いた。

ぶわり、と淡い光が浮かび上がる。

湿った岩肌が、不気味に揺れた。


「攻撃以外にも使えるんだな」


サーミャが感心する。


松明(たいまつ)が要らないって言った理由はこれか……」


「便利でしょ? ミヤにも描いてあげるね」


ルティーナが少し得意げに笑った――その瞬間だった。


ガコンッ!!


「えっ――!?」


サーミャが何かを踏んでしまう。


直後。

頭上から大量の岩石が崩落した。


「きゃああっ!!」


轟音。

粉塵。

崩れ落ちる岩。

視界が、一瞬で白く染まる。


ルティーナは反射的に前方へ飛び、回避することができた。


だが後方では――。



サーミャはシャルレシカを庇うように抱き寄せる。

二人まとめて、崩れた床の下へ飲み込まれてしまう。


「ミヤ! シャル!!」


ルティーナは崩落地点へ駆け寄った。


(とける)


岩がどろりと溶け、道が開く。


しかし。

その先に残されていたのは、巨大な奈落だけだった。


「……落ちた?」


さらに追い打ちのように、二次崩落。


ゴゴゴゴ……!!


穴が、再び瓦礫で塞がれていく。


「そんな……!」


(落ち着け、ルナ)


馬琴(まこと)の声が響く。


(助けに行きたいのは分かる。でもまた崩れるぞ!)


「でもっ……!」


(シャルにはサーミャがついてる! 今は、信じるんだ!)


ルティーナは唇を噛む。


(お前まで落ちたら、アイツらの思う壺だ)


「……っ」


悔しそうに拳を握る。


だが最後には、ゆっくり頷いた。


「……絶対、生きててよ」


そして。

ルティーナは、一人で先へ進む決意を固めた。




道の罠を警戒し、飛翔で移動する。


静かだった。

響くのは、自分の羽ばたく音だけ。

それが不気味なくらいに。


その時――。


(何か来るっ!!)


「え? 見えないよ!」


(左手で払え!!)


反射的に腕を振る。


キーィッ!!


奇妙な悲鳴。

何かが地面へ叩き落とされた。


ルティーナは天井へ【(あかり)】を描く。


通路が明るく照らされ――そこにいたのは。


「……コウモリ?」


地面で痙攣していたのは、吸血コウモリ型の魔物――デトッバ。


「驚いた……見えるんだ」


闇の奥から、女性の声。


「『職業なし』って話……やっぱり嘘だったのね」


現れたのは――ヘレンだった。

その背後には、無数の赤い瞳。

洞窟中の闇が、こちらを見返しているようだった。


「ヘレン……」


ルティーナが静かに問う。


「あなた、敵なの?」


「そう、私が刺客って知ってたのね?」


ヘレンは淡々と答えた。

感情が薄い。

まるで、自分自身を押し殺しているような声音。


「……語れないわ」


(語れない……?)


馬琴(まこと)は違和感を覚える。

敵意はあるが……『殺意』を感じない。


「『ダーク・マニピュレート――洗脳操作――』」


無数の魔物が、ルティーナに一斉に襲い掛かった。


「うわっ、気持ち悪っ!?」


ドブネズミ。

毒蛇。

吸血コウモリ。


洞窟を埋め尽くす勢いで迫ってくる。


(噛まれたら終わりだぞ!!)



ルティーナ達は分断され。

地の利を生かされた罠と、ヘレンの魔物操作によって追い詰められていくのだった――。


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