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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
最終章 ~黒竜《ブラック・デンゴラド》~

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224/225

第224話 伝授

ルティーナ達は春斗(はると)に呼び出され、対黒竜(ブラック・デンゴラド)に関する知識を伝えようとしていた。


しかしルティーナ達は、圧倒的な黒竜(ブラック・デンゴラド)の巨大さに勝てる気がしなかった。


「――君たち三人、私達から教えられることがある」


「どういうことですか? ハルトさん」


「君たちは、その竜(デンゴラド)には勝利できたのだろ?」


「はい……ミヤの時間停止魔法があったからですが」


サーミャの『クロノ・モラトリス――時間停止――』は『エクソシズム・ケーン』を使うことで十秒間、完全に相手の動きを止めていた。


「でも、本当に通用するかは疑問ですが……」


「そうだな、それに一回撃つと数秒間使えないから連発はできねぇ」

「連続でしかけるとなると、意識を読まれていない不意打ちの一発目で勝負を――」


春斗(はると)は自分達がどのように黒竜《ブラック・デンゴラド》を封印したかを語る。


「結局は私たちの能力でも致命傷は与えられず、弱りきった所を長明(ながあき)の闇魔法で封印する方法しかなかったんだ」


「その詠唱ってのは? 闇魔法が使えりゃできるのかい?」


「いいや、あれはおそらく召喚された勇者だけに使える魔法だと思われる」

「長明(ながあき)がいたら、サーミャさんにも教えられたかもしれません」


サーミャは少し不満そうな顔をする。


(……勇者の闇魔法使いか)


「(マコト?)」


(いや、なんでもない)


一つだけ、春斗(はると)はルティーナ達との情報の食い違いが気になっていた。


「だが奴は、そこまで強靭な体ではなかったぞ?」

「それなりに攻撃は通った――」


(! どういうことだ?)

(じゃぁリュウガのあの強靭さは……一体なんだったんだ?)

(それとも、俺の漢字の能力はハルトさんに劣るということなのか?)


春斗(はると)は、途中になっていた二つ目の話に戻す。


「先ほどの話と、何か関係あるのですか?」


「……気休めかもしれないが」


そうしてルティーナとエリアルは春斗(はると)から漢字を使う『能力(ちから)』の本質を、ロザリナは尼帆(まほ)から勇者が使える光攻撃魔法を伝授されることになる。

「実際、手取り足取りはできないから座学になってしまうが許してくれ」


「いえいえ、お話が聞けるだけでも」


「光攻撃魔法かぁ? リーナ、それを伝授できたら、後であたいと一戦やろうぜ!」


「ぷっ、相変わらずね」

「いいわよ! 怪我させても治してあげるわ」


サーミャとロザリナはうすら笑いを浮かべながら、肩を叩きあう。


(戦闘狂は相変わらずだな~)


「んじゃ、あたいとシャルはもう用なしだな」


そうして二人は部屋を去り、アンハルト達の元へ手伝いに向かう。


「サーミャさん、外に戻るついでで申し訳ありませんが、バルストさんを呼んでもらえますか?」


「あぁいいぜ」


尼帆(まほ)はロザリナに魔法を教えるため、孤児院の広場へ連れていってほしいと依頼する。


「さぁロザリナ、あなたもついてらっしゃい」


「はい、おばあ様」


しばらくするとバルストが部屋にやってくる。

早速、尼帆(まほ)を抱きかかえ、ロザリナを連れて部屋を出て行く。


春斗(はると)はルティーナとエリアルから漢字の力――無属性魔法の『刻印魔法』のことをどれだけ理解しているか確認をした。


(こ、刻印魔法か……そうか、俺がそれを扱える魔法使いだったってわけか)


「(なんか、かっこいいじゃん! 魔法だって! 私、魔法使いで登録できるんじゃない?)」


(ルナ自身、魔力持ってないじゃん!)


「(う、うるさいわねぇ)」

「そういえば、ハルトさんってマコトと同じニホン語じゃなくって、ムルシア語が話せるんですね?」


春斗(はると)は召喚された時、既に知識としてムルシア語を理解できていた。

そして刻印魔法の使い方も全てわかっていたという。


(そうか、俺は……)


馬琴(まこと)は正しく召喚されなかったために情報の欠落が起こっていたのだ。

言語の知識がなかったが、ルティーナの意識の中に居ることで理解ができていた。

そして、偶然に漢字が発現し、能力に気づいたのがきっかけだった。


「じゃぁ、マコトのカンジの力って、他にも出来ることがあるんですね」


ルティーナは、今までに使った漢字や仕様について認識している範囲を伝える。

春斗《はると》は、彼らの漢字の使い方がほぼ自分の認識していた通りで、間違いは無かった。


「……独学で使いこなしていたのか? それはそれで凄いな」


一連の認識を確認したところで、馬琴(まこと)達が使ったことのない漢字や使えない漢字について教えられる。


(なるほど……)

(【死(し)】【殺(ころす)】【滅(ほろぼす)】は使えないのか……)


「(実験してた頃、キドウしないって残念がってたけど)」

「(そんなに都合がいい漢字だったの?)」


(あぁ、漢字の意味どおりに具現化できるなら――瞬殺できる)


春斗(はると)の結論としては、馬琴(まこと)の懸念通り、普通に竜(デンゴラド)に長時間触れることはまず無理である。


だが、当時の春斗たちの戦力に引けを取らないという。


春斗(はると)の代わりは、ルティーナとエリアルの刻印魔法。

尼帆(まほ)の代わりは、ロザリナの高度な光魔法。

しかし、長明(ながあき)の重剣士としての技術と、闇と全攻撃魔法を兼ねた能力は、サーミャとエリアルの二人で補うしかなかった。


「しかし長明(ながあき)の封印魔法だけは代替が利かないがな……」


ルティーナは春斗(はると)の説明に納得しながらも、悩んでいた。


「シャルは……」


(『エクソシズム・ケーン』はミヤが持つのが賢明だな……)


「彼女の索敵能力は優秀と聞くが……戦闘になれば意味はないな」


「(……それで、シャルが席をはずすように遠まわしに)」


「しかし、サーミャさんは長明(ながあき)が使えなかった時間魔法が使える……」


(やはり、ミヤの時間停止が鍵か……)


「でも時間を止めなくても、致命傷近くまで追い詰めたんですよね?」


「あぁ、やつの外皮を弱らせて、尼帆(まほ)や長明(ながあき)の攻撃で……なんとか」

「――持久戦は免れない」


(リュウガと同じ外皮……いや、それ以上だったら実質、俺達は詰みだな)


「だが、有効な漢字もある」


「!」


春斗(はると)の話では、【脆(もろい)】という漢字が一番効果があった。

強固な外皮の複数個所を弱体化させ、そこへ皆の攻撃を集中させることでダメージを与えることができたのだ。


(【溶(とける)】【砕(くだく)】では効果が限定的だったけど、それなら……)


――だが、課題もある。

一瞬だけ手を触れるのが精一杯だったため、実際は子供だましみたいな攻撃にしかならなかった。


「俺達にはできなかったが、サーミャさんのように時間を止め、漢字と組み合わせられれば、大きく弱体化させた部位を作れる」


(そうなると、持久戦対策を考えておかないといけないな)


「(だね!)」


ルティーナは少し光が見えたことで安堵し、春斗(はると)へ深々と頭を下げる。

しかし、エリアルは黙って話を聞いているだけであった。


「あのぉ、話の腰を折るようでもうしわけないんですが……」

「僕は力になれそうな気が全くしないのですが……」


春斗(はると)は慌ててエリアルを宥めようとする。


「すまない、そういうつもりではないんだ」

「確か、トモミさんだったか? 今でも、エリアルと意識が繋がらないんだよね?」


「……はい」


しかし、春斗(はると)の一言でエリアルの目が輝く。


「彼女の意識が繋がれば、君はもっと強くなれるぞ」


「! そ、そんなことができるんですか?」


その理由は単純明解。

春斗(はると)は、エリアルが剣に魔法を伝播する能力を、なんとなくでしか使いこなせていないのではないかと指摘する。


つまり、ルティーナは自分で漢字の意味がわからなくても、馬琴(まこと)が操ってくれるから力を発揮できるのだと。


「そうか……トモミさんの意思がこの剣に乗れば……」


「そう」

「そこで彼女の意識を呼び起こしてみたいのだが――」


(誉美(ともみ)を……)


馬琴(まこと)は誉美(ともみ)の意識が覚醒するかも知れないという言葉に、複雑な気持ちを感じていたのであった。


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