第222話 告白
ルティーナ達は、宿敵――長明を倒し、ロザリナを取り返した。
そして残るは、この先、六度目の満月の夜に復活するという黒竜を倒す。
それが五人と馬琴が導いた答えだった。
ルティーナは、長明の孫だと思い込み落ち込んでいたロザリナを、本当の曾祖父母である春斗達と再会させ、ようやく笑顔を取り戻すことができた。
「さぁ……ロザリナ、おいで」
涙を浮かべるロザリナの背中を押し、ルティーナは三人だけを残して部屋を去るのであった。
部屋を出たルティーナの前には、ヘレンが寂しそうな顔をして待っていた。
「ヘレン……」
ルティーナは戦に赴く前、ヘレンと、姉ロザリナとの再会を約束していた。
しかし、ロザリナが長明の件で酷く落ち込んでいたことと、春斗達と一緒にいられる時間が限られていることを思い、少しでも一緒にいさせてあげたいと伝えるのであった。
「ううん、いいんです」
ヘレンは、少し涙目ではあったが、ルティーナに笑顔で答える。
「お姉ちゃんが喜んでくれるなら……私はこれからも一緒だし」
(ヘレンもハルトさん達の寿命のこと……気付いてたのか)
そうしてルティーナとヘレンは、全員が待つ部屋へ戻る。
サーミャ達が武勇伝を語り、皆、あきれたように聞いていた。
そこには、騒ぎを聞きつけたヘルセラも一緒にいた。
馬琴は今が頃合いと思い、その場をルティーナに仕切らせる。
「皆、聞いてほしいことがあるの」
「「「「「「「!」」」」」」」
「ルナリカ、俺達も聞いていい話なのか?」
「何か隠していることは気づいていたが……」
アンハルトは今までのルティーナの行動に違和感を持っていたが、あえて聞くことはしなかった。
「はい。皆さんに聞いてほしいんです」
馬琴は今まで、秘密を小出しにして説明してきた。
しかし、長明との闘いも終え、残る問題は黒竜との最終決戦のみ。
ここで全てを話すことを決意する。
「すべては八十年前にノモナーガ王国で行われた『勇者召喚』から始まるの――」
ルティーナから語られる、馬琴が理解している八十年前の真実。
それは、皆の想像を遥かに超えるものだった。
「じゃあ、今、病室にいるハルトさん達は……」
「はい。ナガアキと同じく召喚された仲間の勇者なんです」
「しかし、抹殺命令が出ていたなんて……ナガアキに同情しなくもないが」
アンハルト達は、あまりにも壮大な話に理解に苦しみながらも動揺していた。
そして、八年前にも『勇者召喚』が行われ妨害された事実と今までの出来事を伝える。
「ルティーナ……」
話を聞き終えた後、一番動揺していたのは、もちろんルティーナの両親であるバルスト夫婦であった。
「そ、そうなのね、その不思議な力は、ルティーナが七年間眠っていて覚醒した力でなかったのね……」
「あの時は……危険に巻き込みたくなくって――」
「そう言うしかなかったの……ごめんなさい……お母さん」
しかしバルストは、ルティーナの名前を言ったまま硬直していた。
「ルナが無事なら――んっ あなた? どうしたかしたの?」
バルストは突然、ルティーナの両肩を掴み前後に思いっきり揺さぶりながら焦り始める。
「な、何? お父さん……痛い痛いっ」
「る、る、る、ルナ……お前の中にいる、ゆ、勇者は女か? まさかぁ男じゃないよなぁ?」
「えっ、おっさんだよ」
(まだ、三十だって!)
バルストのルティーナへの揺さぶりが激化し、怒りが頂点に達する。
「お、おっさんだとぉ~っ!」
「お前が男勝りになったのは、そいつが原因かぁ~っ!」
「え、えぇ~、ちょ、ちょっと待って待ってぇ~」
(男勝りなのは、子供のころから剣技を学ばせたバルストさんのせいでは?)
「ああ゛ぁぁー、む、娘の貞操がぁ――」
バコーンッ
錯乱するバルストは、アンナから頭に張り手をされる。
「な、何をするアンナ! 一大事だぞ!」
「あなた? ――もう一発、欲しいですか?」
バルストはアンナの狂気の顔を見た瞬間、冷静さを取り戻す。
全員が『親バカ』だと呆れる中、ルティーナは馬琴がその知識と能力がなければ今の自分達はなかったと、必死に説明するのであった。
「――確かに、そうだな」
「あの時、ルティーナが助けに来てくれて、その力で助けてくれなかったら……」
「俺もアンナも、タリスさん夫婦も、全員死んでいたのだからな」
バルストはルティーナに向かって頭を深々と下げる。
「取り乱して悪かった……ありがとう、マコト殿」
(殿ぉ? あはは……ちょ、調子狂うな)
アンハルトは、ルティーナ達の話を聞いて、今まで自分達も救われた理由に納得がいく。
「ということはエリアルの中にも、勇者の魂がいるってことなんだよな?」
「その方は紹介してもらえないかい?」
エリアルは少し複雑な顔をする。
「……あ、僕の中にもいると言えばいます」
「トモミさんという女性の方なのですが……理由はわからないのですが、意思疎通はできていないんです」
「どういうことだ? しかし、その魔剣は」
「でも、力は、願えば貸してくれています……」
バルストはその話に耳が反応する。
「そうなのか……(ルナの方も女勇者だったら良かったのに……)」
(ヘックションッ)
「(何よ、びっくりするじゃない!)」
(なんだろ? 殺意が)
アンハルトは改めてルティーナ達を見つめる。
「しかし不思議な縁だな、こんなに勇者関係者が揃うなんて……」
半年後に復活する黒竜を予言したヘルセラも納得する。
「さしずめ、厄災を倒すために皆が導かれてたのじゃろうな」
全員が頷きながら、すべてではなくても重要な秘密を話してくれたルティーナに感謝した。
ルティーナは今まで抱えていた秘密を皆に吐き出すことができ、自然な笑顔が戻る。
しかしバルストは顔をしかめる。
「なぁルティーナ……お前達しかその厄災のブラックなんたらを止められないのか?」
ルティーナは真剣な顔でバルストとアンナを見つめ頷く。
すると、アンナは口元を塞ぎながらバルストに肩を寄せる。
(さぁ、ここからが本題だぞルナ)
「(うん)」
ルティーナは、話を再開する。
黒竜を討伐する前にやらなければいけないことが残されているのだ。
「厄災との闘いはまだまだ先です」
「その前に、確認しなければならないことが――」
「確認?」
ルティーナはノキア王を全面的に信じているわけではなかった。
もし八年前の『勇者召喚』が成功していたら、ノキア王は馬琴をどうするつもりだったのか――その真意を確かめる必要がある。
「そうか、ナガアキには暗殺部隊が仕向けられたんだよな」
しかしアンハルトは目を細める。
「……そんな話、俺達に話してよかったのか?」
「厄災の討伐は、ノキア王の返答次第って意味だよな?」
ルティーナは小さく頷く。。
「でも、どういう答えが返ってこようと、マコトは倒す気満々ですけどね」
「だから心配しないでください」
そしてルティーナは、いたずらな表情を浮かべアンハルト達を見つめる。
「それに皆さんとは……もう運命共同体ですよ」
「今さら隠し事する仲でもないでしょ?」
「今後もいろいろと力を貸してもらわないといけませんしね」
アンハルト達は、緊張感のなさに呆れてしまう。
「いつも通りか、心配して損をしたよ」
それを見たグルバスはアンハルトの肩を叩きながら、笑い始める。
「しっかしよぉ、おまえら全員でかかれば、たかが厄災の一匹や二匹? 楽勝じゃねぇのか?」
しかしサーミャがグルバスのこめかみを握り締める。
「相変わらず筋肉脳だな? おめぇは」
「あぁ~ん? やんのかサーミャ」
エリアルが二人の喧嘩を止めるように割り込む。
「僕達は、イスガで厄災と同族のデンゴラドと戦ったんです」
「「「「「「!」」」」」」
「皆さんが無事ってことは、勝ったんですよね?」
「……完勝じゃねぇがな」
「あたいの不意打ちで動けなくして、なんとかルナとエルがトドメを刺したんだ……」
ルティーナ達は、その竜は下っ端だということを伝えた。
「――言ってたのか? 魔物が喋るのか?」
「いいえ、彼らは思念のように語り掛けてきます」
「もう何がなんだか……」
バルストは頭が痛くてしょうがなかった。




