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見知らぬ世界で、少女のお目付け役になりました ~異世界召喚失敗!? 少女の中に宿った勇者の冒険譚~  作者: うにかいな
第玖章 ~闇ノ孤島~

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第217話 紅ノ焦熱

長明(ながあき)は、エリアルを羽交い締めにしたまま、不気味な笑みを浮かべていた。

その視線の先には、攻撃をためらうルティーナの姿。

――そして長明(ながあき)は、ある挑発に出る。


「ルナリカ! エリアルを助けてほしくば――今すぐ洞窟の三人をここに呼び出せ!」


「!」


ルティーナは目を細めながら馬琴(まこと)の指示を待つ。


(これは……罠だ)


ルティーナは長明(ながあき)の指示には従わない態度をとる。

しかし、長明(ながあき)はそれを気にする様子もない。


「従いたくないならそれまで……」

「あと十分待つ! 二分経つ度にエリアルの四肢を一つずつ蟹爪で切り落とす!」


――ルティーナの顔色が変わる。


「(そ、そんな!)」


「最後は、こいつの首だ!」

「急いだほうがいいぞぉ~さすがに首が飛んだら、さすがのロザリナでも治せないだろうなぁ」


長明(ながあき)は嫌らしい目つきでルティーナの顔をのぞき込む。

そして容赦なく、時間を数え始める。


「……一……二……三……」


「二分なんかで戻ってこれるわけがないじゃないっ! ふざけないで!」


「俺はかまわんぞ、早くしろ」

「十……十一……」


「僕にかまうな! この好機を逃しちゃいけない!」


エリアルも額から汗を垂らしながらも、ルティーナに無視するように伝える。


「(ど、どうしたらいいの? マコト……わ、私のせいでエルが)」


(ルナっ、弱気になるなっ!)


その瞬間、長明(ながあき)は薄ら笑いを浮かべる。

ルティーナは最悪にも長明(ながあき)に弱みを見せてしまった。

それが、人を洗脳する条件を満たしてしまったのだ。


「『フィルス・ダーク・マニピュレート――強制洗脳――』ぉ」


長明(ながあき)はドス黒い声色で魔法をルティーナに放つ。


「しま――」


するとルティーナは突然、脱力したように瞳孔がひらききったまま呆然としてしまう。


「ルナっ!!」


長明(ながあき)はエリアルをルティーナの前に突き飛ばし、すぐさま地面に潜り身を隠す。

エリアルは呆然とするルティーナの元へ走る。


「大丈夫かルナっ! なにをされ――!」

「る、ルナ……?」


ルティーナはエリアルが近寄ってきた瞬間、短剣でエリアルに襲い掛かってくる。


「な、何をするんだっ! まさか――」


ルティーナの攻撃をかわすエリアルに対して、地中からあざわらうような声がこだまする。


「そうだよエリアル、こいつは俺が洗脳して直接操っているのさ」

「ルナリカの手で全員皆殺しにしてやる」


「くっ! これでは、手出しができない!」


「全員を自分の手で殺してしまったと最大の屈辱を味わいながら、最後は俺に爆散させられるのさ」


「――どこまでもクズなんだっ」


ルティーナは短剣を振り回しエリアルに襲い掛かるが、エリアルは手が出せずに防戦一方となる。

しびれを切らした長明(ながあき)は、ルティーナの短剣を自らの首元へ突き立てさせる。


「な、何を!」


それを見たエリアルは、あわててルティーナに駆け寄り短剣をもつ腕をつかむ。


「ルナっ! しっかりしてくれ!」


エリアルは必死に『ルナ』を連呼し、呼び覚まそうとする。


「(ふふふ、仲間を殺せないのは不憫よの)」

「(まずは、エリアルに消え――)」


その時、突然、長明(ながあき)を通じたルティーナの動きが止まる。


(よぉナガアキさんよ、こんな感じなんだな)

(ドス黒いっつうか……これが洗脳されてるって状態なのかい?)


ルティーナの意識の中に馬琴(まこと)の意識が乱入する。


(さすがに魔法を食らった瞬間、一時的に俺の意識が飛んじまったよ)

(エルの叫びで俺が目を覚ましちまった)


「(! お前は誰だ! ルナリカの意識ではない……だと)」


(残念だったなナガアキ! 俺は里見(さとみ) 馬琴(まこと)……)

(あんたが八年前に妨害した勇者召喚の儀で、導かれた男さ!)


「(そんな馬鹿なっ! それでは、このガキの能力は春斗(はると)の子孫ではなく貴様の力――)」


操られているルティーナの頭の中で、長明(ながあき)は馬琴(まこと)の存在に初めて気づき、エリアルも同様に勇者の意識が存在していることを悟った。


(ルナもこのままじゃ、可哀想だ……)

(悪いが、あんたには出て行ってもらうよ!)


「(!)」


馬琴(まこと)は対長明(ながあき)戦において、勇者の闇魔法を警戒していたのだ。


出港する前に、二センチほどの『マジックシール・ストーン』の欠片をモルデリド王に準備してもらい、【微(かすか)】を二重に描き込む。

そうすることで百分の一の大きさになり、魔法遮断の効果もほとんど及ばない状態にしていた。


「(ま、まさか、貴様も持ち歩いていたのか! しかも、そんな方法で……解呪するとわぁぁ~っ!)」


漢字を解除することで、『マジックシール・ストーン』は元の大きさに戻り、ルティーナの全身に魔法を無力化する効果がおよぶ。


ルティーナの洗脳は一時的に解放され、エリアルへの攻撃をやめ放心状態になっていた。


「ルナ! ルナ! 正気に戻ったんだね! よかった!」


「え、わ、私……そっか、マコトの機転で――」


ルティーナは両手で頬を叩き、正気を取り戻そうとする。


「痛~たたた! 私はもう大丈夫!」

「エル、ごめんね……襲っちゃって」


「気にしなくていいよ」

「今は、地中に逃げたナガアキの対処を……」


ルティーナは早速地面に手をつき、広範囲で【硬(かたい)】を描き広げ、地面を硬化させる。

「地面にヒビが入る場所を見逃さないで! そこを攻撃よ!」


そしてルティーナとエリアルは背中を合わせ地面を注視する。



その頃、長明(ながあき)は地中を移動しながら焦りを隠せずにいた。

彼の切り札――残り一本の魔物化の注射器を握りしめながら。



「ルナ、もう二分経つけど……動きが無いね?」


(まさか、すでにこの場から逃げたのか?)


「(じゃぁどこへ?)」



「ルナーッ!」


長明(ながあき)の次の動きを警戒する中、洞窟で分断されていたサーミャ達が駆けつける。


サーミャは、ロザリナに『ダーク・コンバート――魔法譲渡――』を使い、魔力の半分を受け渡すことにした。

すると、ロザリナは魔力が回復し、自動治癒が再開する。


「ごめんね、動けるようになるまで時間かかっちゃった」


ロザリナは前回は採血されすぎ全く動けなかったが、今回は違った。

二日の間、食事を与えられず拘束されていただけで済んだため、徐々に動けるようになっていた。


「ルナ、あいつは! あの野郎はどこだ!」

「シャルの索敵が使えたら……」


「!」


馬琴(まこと)は、長明(ながあき)が洗脳魔法を使ってきたことで、今は『マジックシール・ストーン』を所持していないことを説明する。


「そうか、それならお礼が出来るってことだな! あんにゃろっ!」


「それじゃぁ、悪意を探してみますぅ」


「シャルっ、こいつを使えっ!」


シャルレシカは『エクソシズム・ケーン』を使い、十キロの広範囲索敵を行う。


「…………うーん」


「どう? 今度は見つかるはずよ?」


しかし、広範囲に広げても長明(ながあき)らしき気配は見つからなかった。

左側の二キロ辺りに、デフルウ――狼の魔物――やデーアベ――熊の魔物――がうろついているぐらいだと言う。


「右側の一キロから向こうは、まったく索敵ができないですぅ……」


シャルレシカは右側に見える火山の方向を見つめる。


(――そうか、もともと設置している『マジックシール・ストーン』の領域まで、地中を潜って逃げきったのか!)


「(でも、そこって)」


(あぁ、魔物が大量に潜んでいる可能性がある……それに日も昇っちゃってるし、デグルーイ――鷹の魔物――がいるとやっかいよね?)


「(これじゃ、ジリ貧だ――)」



そんな中、突然、地面が大きく揺れ、火山が噴火する。



――ドゴゴゴゴーンっ



「今度は、なによっ!」


「見ろ、あの山だ――!」


(まさか、あいつ……火山に……)


火山の頂上からは大量のマグマが噴き出し、溶岩が辺りに降りそそぎ、ルティーナ達を襲い始める。


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